2015 Fiscal Year Research-status Report
安静時fMRIを用いた聴覚異常感脳ネットワークの解明及びその中枢制御
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25462657
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Research Institution | 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター) |
Principal Investigator |
南 修司郎 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), 聴覚・平衡覚研究部, 医師 (00399544)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 機能的結合 / 安静時fMRI / 耳鳴 |
Outline of Annual Research Achievements |
機能的結合とは相互相関解析から有意に同期して活動する神経細胞間の結合をいう。これまで我々は耳鳴患者の安静時fMRI解析により、耳鳴患者では、左右聴覚野間の機能的結合の相関が健聴者より弱くなっていることを明らかにしてきた。更に難聴による影響を調査するため無難聴耳鳴、難聴性耳鳴に分け検討した。健聴コントロール群19人(男性10人、女性9人、年齢34±5歳)、難聴性耳鳴群18人(男12人、女6人、年齢63±9歳、THI 50±21)、無難聴性耳鳴群11人(男性4人、女性7人、年齢41±15歳、THI 39±26)を対象とし、安静時fMRIでの機能的結合解析を行った。3次元解剖学的画像(3D fast gradient echo 法)と安静時機能的画像(gradient echo - echo planar imaging法、TR=2500ms、Matrix size = 3.44×3.44、スライス厚=4mm、スライス数=34)を撮像した。Matlab上の解析ソフトウェアConnを用い、p値0.05以下を有意な機能的結合とし、その相関係数からフィッシャーのZ変換した値をβ値とした。左右Heschl回のβ値はコントロール群0.71、難聴性耳鳴群0.49、無難聴性耳鳴群0.33と耳鳴群では有意に低下していた。さらに無難聴性耳鳴群では、島皮質-聴覚野間の機能的結合がコントロール群より有意に低下していた。島皮質は辺縁系との関連がある皮質であり、無難聴性耳鳴の病態との関わりが推測され、耳鳴患者のオーダメイド治療に、安静時fMRI検査が利用できる。また耳鳴に抗鬱薬の効果が示されているが、抗鬱薬の治療前後6症例での機能的結合も解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで我々は耳鳴患者の安静時fMRI解析により、耳鳴患者では、左右聴覚野間の機能的結合の相関が健聴者より弱くなっていることを明らかにしてきた。現在、耳鳴治療の第一選択は補聴器による音響療法であるが、聴力検査上で軽度以上の難聴を認める耳鳴症例では、補聴器の音響療法は有用な手段となるが、聴力低下を認めない耳鳴症例については、耳鳴苦痛度が改善しても補聴器の継続使用が低いことがわかっている。2015年度の研究目的は、耳鳴のオーダメイド治療に安静時fMRI検査の利用を探ることである。そのため無難聴耳鳴、難聴性耳鳴に分け機能的結合を検討した。健聴コントロール群19人(男性10人、女性9人、年齢34±5歳)、難聴性耳鳴群18人(男12人、女6人、年齢63±9歳、THI 50±21)、無難聴性耳鳴群11人(男性4人、女性7人、年齢41±15歳、THI 39±26)を対象とし、安静時fMRIでの機能的結合解析を行い、難聴性耳鳴と無難聴性耳鳴の機能的結合の違いを明らかにした。また耳鳴に抗鬱薬の効果が示されているが、抗鬱薬の治療前後6症例での機能的結合も解析を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、耳鳴治療の第一選択は補聴器による音響療法であるが、聴力低下を認めない耳鳴症例については、耳鳴苦痛度が改善しても補聴器の継続使用が低いことがわかっている。そのような症例に対し、抗鬱薬の治療が試みられているが、効果を予想する指標が少なく、本研究の安静時fMRIによる機能的結合が治療方針の決定に寄与することが期待されている。今年度は、難聴生耳鳴、無難聴性耳鳴の違いをより明らかにし、補聴器による音響療法前後、または抗鬱薬での薬物治療前後での機能的結合を調査し、十分な症例数で論文報告を行う予定である。
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Causes of Carryover |
耳鳴患者に対して、安静時fMRI検査により左右聴覚野間の機能的結合がコントロールより、有意に弱くなっていることを明らかにしてきた。さらに、治療法また予後の異なる難聴性耳鳴と無難聴性耳鳴に分けて検討を行い、機能的結合が違っていることが明らかになってきた。安静時fMRIの解析にはMAtlab上の機能的結合解析ソフトConnを用いて解析を行っている。解析に人件費を予定していたが、適切な人材がいなかったため、研究代表者が全ての解析を行い、人件費が浮いて、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
これまで健聴コントロール群19人(男性10人、女性9人、年齢34±5歳)、難聴性耳鳴群18人(男12人、女6人、年齢63±9歳、THI 50±21)、無難聴性耳鳴群11人(男性4人、女性7人、年齢41±15歳、THI 39±26)を対象とし、安静時fMRIでの機能的結合解析を行っている。各群20例程度までの症例数増加を計画しており、安静時fMRI検査費用、及び解析費用を予定している。。また追加の論文執筆及び投稿を今年度中に計画しており、その費用が見込まれる。
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