2014 Fiscal Year Research-status Report
声帯瘢痕に対する細胞移植による再生医療に関する研究
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25462680
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
平野 滋 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10303827)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金丸 眞一 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), その他 (00271510)
楯谷 一郎 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (20526363)
北村 守正 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60543262)
中村 達雄 京都大学, 再生医科学研究所, 准教授 (70227908)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 再生医療 / 声帯 / 幹細胞 / 増殖因子 / 再生土台 |
Outline of Annual Research Achievements |
声帯の再生に関する研究を初年度より引き続き継続中である。 1.再生に必要な細胞ソースの検討:ラットを用いて、脂肪由来間葉系幹細胞(ASC)、骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSC)についての検討を行った結果、ASCはBM-MSCに比較して肝細胞増殖因子(HGF)などの増殖因子やサイトカインの産生能力が高いことが確認された。 2.細胞移植による声帯再生の効果についての検討: ASC, BM-MSCを用いて、ラットおよびイヌの声帯瘢痕モデルを用いて細胞移植による再生効果の検討を行った。いずれの細胞も移植後1か月まで声帯内に留まること、3か月目には消失することを確認し、その残存効果については優位な差を認めなかった。ラットの声帯瘢痕に細胞移植後1,3か月目に喉頭を摘出し組織学的検討を行ったところ、いずれもヒアルロン酸の回復、コラーゲンの正規化が認められ再生効果が確認された。これらの効果に有意な群間差を認めなかった。一方、遺伝子発現をみると、ASCでヒアルロン酸合成酵素(HAS)1-3の発現亢進、FGF, HGFの発現亢進を認めた。BM-MSCにおいてはHAS3, procollagen type III, FGF, HGFの発現亢進を認めた。HAS、HGFにおいてはASCの発現亢進のほうが強い傾向があった。イヌについては同様にASC, BM-MSCにGFPラベルして移植し、再生効果を組織および吹鳴実験による機能評価を行っているところである。 3.再生と増殖因子の相乗効果についての検討: Collagen-gelatin scaffold (CGS)を用い、声帯線維芽細胞を播種し、細胞親和性、活動性を検討した結果、CGS上で細胞の増殖は良好である、FGFやHGFの遺伝子発現が認められた。次にイヌ声帯瘢痕モデルを用い、CGSのみの移植、CGS+FGF移植による再生効果の検討を行った。その結果、CGSの移植のみでもある程度の声帯再生効果が認められたが、FGFを添加することにより声帯振動機能に有意な効果が認められ、両社の相乗効果が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞ソースについては、当初計画していたiPS細胞については、他施設において直接声帯への投与により腫瘍形成を認めたことが判明し、中断している。iPSをまず分化導入する必要があり、実際、iPSから間葉系幹細胞(MSC)へ分化する技術は京大再生研において確立しているが、このMSCを用いるのであれば、自家脂肪あるいは骨髄由来のMSCを用いるほうがより簡便かつ安全と考えられ、現在ASCとBM-MSCを主体に研究をすすめている。単核球については分離方法は確立しており、次の段階への準備中である。 また、今年度は、ASC, BM-MSCを用いてラット声帯瘢痕の再生効果を検討してきた。いずれも声帯瘢痕の組織学的再生効果(ヒアルロン酸の回復、コラーゲン線維の吸収など)を認めたが、各治療群における声帯内の遺伝子発現をみると、ASCのほうがヒアルロン酸合成酵素や肝細胞増殖因子(HGF)などの声帯再生に重要な遺伝子の発現をより効果的に認めた。また、ASCはin vitroにおいてもHGF産生が強力であり、採取のしやすな、抽出効率の高さなどからBM-MSCより優れた点が多く、声帯再生への応用もしやすいものと考えられた。 また、再生土台、細胞ソース、増殖因子を組み合わせた至適再生手法の確立をめざし、まず再生土台であるCollagen-gelatin scaffold (CGS)と線維芽細胞増殖因子(FGF)との相乗効果を検討した。CGSはFGFを補足する効率に優れ、生体内での徐放効果に優れることがin vitro, in vivoの検討で確認された。今後ASCを細胞ソースとして、再生土台、増殖因子との相乗効果を検討していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.ASCの声帯再生効果をイヌ声帯瘢痕モデルを用いて引き続き検討する。 2.再生土台+ASC、さらにこれにFGFあるいはHGFの増殖因子を導入することによる再生効率の検討をすすめる。
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Research Products
(10 results)