2013 Fiscal Year Research-status Report
加齢黄斑変性症における上皮間葉転換のレドックス制御を標的とした創薬への基盤研究
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25462721
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
猪俣 泰也 熊本大学, 生命科学研究部, 助教 (50452884)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川路 隆博 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (30423677)
高橋 枝里 熊本大学, その他の研究科, 助教 (60622602)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 上皮間葉転換 |
Research Abstract |
網膜色素上皮細胞(retinal pigment epithelial cells; RPE)へのストレス負荷による上皮間葉転換(EMT;epithelial mesenchymal transition)を検討するために、より臨床に即した病的状態でのEMTを確認する実験系を作成した。方法は裂孔原性網膜剥離、黄斑前膜、黄斑円孔にて硝子体手術を行った際に採取した硝子体サンプルをヒトRPE細胞株に添加し2D培養を行った。硝子体サンプルの取得については当大学倫理委員会にて受理され、同意を得た患者より術中硝子体サンプルを取得した。サンプルを60分負荷後に機械的ストレスをかけ、細胞誘導能と細胞内シグナル伝達を解析した。また3D培養を行い各病的硝子体負荷にてよる細胞の形態変化も確認した。結果は黄斑上膜、裂孔原性網膜剥離患者より採取した硝子体サンプルを無血清培地へ添加し、シグナルの活性化について検討した。一部の硝子体サンプル刺激によりSmad2, p38MAPKの活性化を認めたが、疾患群における差は認めなかった。NFkappaBのリン酸化はウエスタンブロットでは認めなかったが、免疫染色では一部の細胞に核内移行を認めた。細胞運動能に関しては20%硝子体刺激下にてwound healing assayにて解析を行った。硝子体刺激では細胞運動能の明らかな亢進は認めなかった。機械的刺激によりSmad2のリン酸化の亢進を認めた。さらに、硝子体刺激を行うと、疾患群に関わらず、p38MAPKのリン酸化が亢進することがわかった。3D培養では硝子体負荷にて星状の形態変化が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RPE細胞のEMTモデルを用いて、EMT と酸化ストレスの相互作用による加齢黄斑変性における脈絡膜血管新生機序の関連を明らかにすることを目的としているが、網膜下の線維化だけでなく黄斑上膜などの網膜上の繊維化においてRPE細胞が関与するか検討を行なった。その結果RPE細胞への硝子体刺激のみでEMTの可能性が示唆されるデータが得られた。今後は網膜下疾患への検討を進めていく方針である。
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Strategy for Future Research Activity |
マウスでの脈絡膜新生血管モデルを用いてEMT誘導が脈絡膜血管新生に与える影響を検証する。レーザー障害部位においてRPEは障害され、瘢痕治癒することが知られている。この障害部位における経時的なEMTの時間・空間的発現変化を検討し、ROSの蓄積、またチオレドキシン活性の有無について検討する。さらにEMT阻害剤投与を行い、創傷治癒と新生血管の相関、また、間葉上皮転換(MET)を誘導することにより、障害部位のRPEが従来の単層上皮細胞を再構築に至るかを検討する。動物実験においては、EMTの段階をstage化し評価するとともに、補体関連因子、酸化ストレスマーカー・血管増殖因子や炎症性サイトカインの定量評価等との相互比較を行うことで、病態と主要補体活性値がstage分類のマーカーとなりうるかを検討し、EMT阻害剤投与などの治療導入時期・効果の判定を行いたい。
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