2013 Fiscal Year Research-status Report
眼表面上皮細胞によるTLR3-EP3を介した炎症制御機構の解明
Project/Area Number |
25462762
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
上田 真由美 同志社大学, 生命医科学部, 准教授 (60398386)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 上皮細胞 / 自然免疫 / プロスタグランジン |
Research Abstract |
当該年度は、マウスin vivo結膜上皮細胞の解析を中心におこなった。TLR3リガンドを局所投与した野生型マウスならびにEP3欠損遺伝子改変マウスとTLR3/EP3二重欠損遺伝子改変マウスを用いて、in vivo結膜上皮細胞を対象にマイクロアレイを用いて遺伝子発現解析を行った。また更に、マイクロアレイを用いた遺伝子発現解析にて変化の認められた遺伝子群は、定量RT-PCRを用いてその遺伝子発現を確認した。その結果、マイクロアレイでは、結膜のpolyI:C刺激を行った野生型マウスの結膜上皮で、非刺激状態と比較してpolyI:C刺激後に10倍以上発現が上昇する遺伝子が31遺伝子検出された。さらに、定量PCRで解析したところ、このうちの21遺伝子について3倍以上の遺伝子発現の上昇が確認できた。これらの遺伝子発現制御におけるEP3の役割を解析する目的で、野生型マウスとEP3欠損マウスにおけるこれらの遺伝子発現を比較したところ、これらの21遺伝子すべてが、野生型マウスと比較してEP3欠損マウスのpolyI:Cで刺激した結膜上皮で有意に発現が上昇していた。さらに、EP3欠損マウスとTLR3/EP3二重欠損マウスのpolyI:C刺激結膜上皮を比較したところ、これらの21遺伝子すべてが、TLR3/EP3二重欠損マウスで有意に減少した。このことは、TLR3によって発現が誘導されるこれらの遺伝子が、EP3によって抑制されていることを示している。また、研究代表者は、EP3ならびにTLR3は、眼表面上皮細胞に優位に発現していることから上皮細胞と樹状細胞との双方向的相互作用について解析した。その結果、TLR3は、樹状細胞の動態に影響を及ぼすが、EP3ではその影響は明らかでないことが判明した。 さらに、研究代表者は、ヒト培養結膜上皮細胞を用いてEP3の細胞内シグナルについて解析した。その結果、PGE2の刺激によりGaqが上昇していることを明らかとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究計画は、1)上皮細胞と免疫担当細胞の相互作用の解析の一部として遺伝子改変マウスを用いたマウスin vivo上皮細胞の解析 2)マウス生体4Dイメージングを用いた各種免疫細胞の動態解析の一部として樹状細胞蛍光標識マウスを用いた解析 3)TLR3経路による炎症をEP3が如何なる分子シグナルを介して抑制しているのか検証するためのヒト培養結膜上皮細胞を用いたシグナル解析、であった。 当該年度に、1については、TLR3リガンドを局所投与した野生型マウスならびにEP3欠損遺伝子改変マウスとTLR3/EP3二重欠損遺伝子改変マウスを用いて、in vivo結膜上皮細胞を対象にマイクロアレイを用いて遺伝子発現解析を行っている。また、2についても、TLR3は、樹状細胞の動態に影響を及ぼすが、EP3ではその影響は明らかでないことを解明している。さらに、3についてもヒト培養結膜上皮細胞を用いてEP3の細胞内シグナルについて解析し、PGE2の刺激によりGqが上昇していることを明らかとしている。1については、論文作成にまで至っており、当該年度の目的の達成度は、十分であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度の解析は順調に進んでおり、TLR3によって発現が誘導される遺伝子群が、EP3によって抑制されていることを解明しており、免疫の著名なjournalに掲載されるまで進んでいる。今後はさらに研究を推進するために、下記解析を進めていく。上皮細胞と免疫担当細胞の相互作用の解析については、樹状細胞の解析に引き続いて、マクロファージならびに好中球に着目して各種細胞蛍光標識マウスをもちいて解析を行う。また、in vivo結膜上皮細胞の遺伝子発現解析については、TLR3以外のpolyI:Cの受容体であるRIGIやMDA5に着目して解析を進めていく予定である。結膜上皮の細胞内シグナルについても、TLR3の各種シグナル因子であるTRIF, IRF3, IRF7に着目した解析を進めていく。このように、TLR3-EP3を介した炎症制御機構の解明することにより、眼表面上皮細胞による自然免疫機構を介した炎症制御機構の解明につながるものと考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度の研究費について研究試薬等の消耗品が予定より安価に購入できたため低く抑えることができた。そのため、翌年度に研究費を持越し必要な研究用試薬等の消耗品にあてる予定である。 次年度に繰り越せた研究費については、結膜上皮細胞の遺伝子発現解析やマウスの解析に必要な研究試薬等の消耗品として使用する予定である。
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