2013 Fiscal Year Research-status Report
iPS細胞由来網膜色素上皮細胞の移植用デバイスの開発
Project/Area Number |
25462765
|
Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
桐生 純一 川崎医科大学, 医学部, 教授 (80281096)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 医療用器具 / iPS細胞 / 網膜色素上皮細胞 |
Research Abstract |
iPS細胞樹立の報告以降、再生医療の分野においてiPS細胞を用いた基礎研究と臨床応用への動きが様々な分野で加速している。眼科分野においては、2014年度にもヒトiPS細胞から作製した網膜色素上皮細胞(Retinal Pigment Epithelium:RPE)を細胞シートとして移植する臨床試験が開始される予定である。 ヒトiPS細胞由来RPEシート移植の際に行われる硝子体手術は、眼球内に手術器具を挿入するための創口を作製するが、1970年代の開発された当初は術中・術後合併症の頻度が非常に高く、一旦合併症を引き起こすと失明に至ることが多かったため、対象は一部の重症な疾患に限られていた。この合併症の頻度が高い理由の一つに手術器具の大きさがある。手術器具が大きくなることで創口が大きくなり、眼球を一定に保つことが困難となるため様々な合併症が引き起こされた。しかし手術器具の大きさ(口径)も年々小型化しており、開発当初は1.5㎜あった口径は、80年代に入ると0.9mm、現在は0.5㎜までなっている。この手術器具の小型化に伴い手術の安全性が高まり、現在では個人医院で日帰り手術として行えるほど広く普及しており、創口の大きさの重要性を示している。 一方で、臨床試験の対象疾患である加齢黄斑変性症は、病変部である黄斑部が約3mmの範囲であるため、病変部を覆う事が出来る3.0mm×3.0mmの細胞シートを移植することが理想である。しかし現在、我々が作製した臨床試験で用いられる予定の手術器具では、1.3×3.0mmの細胞シートの移植が限界であり、また手術手技の観点から複数の細胞シートを移植することは非常に困難である。 そこで上記の点を克服するため、『小切開で3.0×3.0mmの細胞シートを移植可能な手術器具』を開発することが本研究の目的である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究計画は、『移植器具の開発』と『ヒトiPS細胞由来RPEシートの作製』で構成されている。 『移植器具の開発』は、リアクトシステム社の協力の下、当初計画したカニューラを作製することに成功している。 『ヒトiPS細胞由来RPEシートの作製』は、川崎医科大学においてRIKEN CELL BANKより提供されたヒトiPS細胞からRPEへの分化誘導に成功し、これを報告している。1)Kamao H., Kiryu J. et al. Kawasaki medical journal, 36: 155-162 (2013)2)Kamao H., Kiryu J. et al. Stem Cell Reports, 2: 205-218 (2014)。以上より、2項目とも当初の研究計画の通りに進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究計画は、『移植器具の開発』と『ヒトiPS細胞由来RPEシートの機能評価』で構成されている。 『移植器具の開発』は、引き続きリアクトシステム社の協力の下、計画したカニューラを作製する。 『ヒトiPS細胞由来RPEシートの機能評価』は、作製したヒトiPS細胞由来RPEシートの機能を以下の項目で評価する。 ・サイトカイン分泌:血管内皮増殖因子(VEGF)と色素上皮由来因子(PEDF)の分泌をELISA法にて測定する。 ・バリア機能:経上皮電気抵抗(TER)を測定する。 ・RCSラット(RPE変性モデル動物)にヒトiPS細胞由来RPEシートを移植し、視細胞の保護効果を組織学的および電気生理学的に評価する。
|