2015 Fiscal Year Annual Research Report
胆道閉鎖症の病因・病態におけるSox9遺伝子の関与に関する検討
Project/Area Number |
25462776
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
猪股 裕紀洋 熊本大学, その他の研究科, 教授 (50193628)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
須田 博子 熊本大学, 医学部附属病院, その他 (40632659)
横内 裕二 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (60252227)
阪本 靖介 熊本大学, 医学部附属病院, その他 (00378689)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 胆道閉鎖症 / SOX9遺伝子 / 細胆管反応 / 胆汁うったい / Notch Signal |
Outline of Annual Research Achievements |
細胆管反応は、肝疾患でみられる、胆管の性質を示す細胞の異常増殖をさすが、その機構や病的意義はまだ明らかでない。閉塞性黄疸を呈する小児の代表疾患である胆道閉鎖症で、胆管細胞マーカーのひとつとなるSOX9が、肝細胞に異所性発現をしていることを先行研究で見いだしており、また、他の基礎的研究の過程で、SOX9の肝細胞強制発現が胆管細胞への化生を促しうる所見を確認した。よって、H27年度には、胆道閉鎖症の臨床検体を多数用いて、患者年齢や病態による胆道閉鎖症の細胆管反応とSOX9発現の相関を詳細に検討し、細胆管反応形成へのSOX9の役割や、病態との相関、さらには、SOX9より上流で機能するNotch signal の解析から、SOX9の機能制御へのNotch signalの影響を解析した。その結果、胆汁うったいが著明な葛西術時にはSOX9陽性肝細胞が増加しており、さらにそれが葛西術無効で黄疸が増強すると減少に転じ、増生細胆管に一致するCK19陽性領域が増加した。すなわち、SOX9陽性を示す肝細胞は、胆管細胞の多さと反比例していた。また、Notch Signalの伝達異常を示すアラジール症候群では、重度な胆汁うったいが存在しても細胆管反応は軽度で、SOX9陽性肝細胞の著明な増加を認めた。以上の結果から、SOX9陽性肝細胞は細胆管反応への進展を仲介、すなわち、細胆管への細胞の変化を仲介していると考えられ、この機能には、Notch Signal の関与が必要であることも示唆された。細胆管の増生が胆道閉鎖症の最終予後、すなわち胆汁うったいの改善のどう機能するのか、あるいは胆汁うったいを原因とした単なる現象に過ぎないのかはなお今後の検討を要するが、SOX9の機能解析は、肝障害時、特に胆汁うったい時における細胞の修復や補完機転の解析に重要と思われる結果を得ることができた。
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