2013 Fiscal Year Research-status Report
自己細胞由来人工皮膚グラフトを用いた重症熱傷治療法の開発
Project/Area Number |
25462823
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
小網 博之 佐賀大学, 医学部, 助教 (10465354)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阪本 雄一郎 佐賀大学, 医学部, 教授 (20366678)
野口 亮 佐賀大学, 医学部, 助教 (70530187)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 3次元皮膚培養 / 熱傷 / スフェロイド / ラット / 線維芽細胞 / ケラチノサイト / 血管内皮細胞 |
Research Abstract |
広範囲熱傷に対する植皮術は、繰り返し皮膚移植を行う必要があるにもかかわらず、移植皮膚が不足する症例が少なからず存在し、なおかつ生着率の悪さや治療期間の延長に伴う全身状態の悪化そして不良な転帰など問題点が多いのが現状である。近年自己培養表皮の臨床応用が始まっているが、まだまだ使用する頻度が少なく、様々な問題点もあることから、スタンダードな治療とはなっていない。我々の研究の目的は、生着率の高い3次元自己培養皮膚を作成することである。 当初の予定通り、現在3種類の細胞の培養実験を繰り返している。線維芽細胞は比較的培養も容易であり、継代を重ねながらスフェロイドの作成や皮膚パッチの作成も行った。一方、表皮を構成するケラチノサイトは、継代を重ねスフェロイドを作成し、皮膚パッチを作成したものの、線維芽細胞に比べると組織的に弱いものだった。血管内皮細胞に関しては、継代自体が他の2種類の細胞よりも難渋し、スフェロイド作成や皮膚パッチの作成はまだまだ不十分な状態である。また、線維芽細胞と少量の血管内皮細胞を混合させたスフェロイドやパッチを作成したところ、線維芽細胞に比べるとやや強度のあるものが作成できた。現在、血管内皮細胞のみで作成するスフェロイドや皮膚パッチを作成している。それぞれのパッチが作成できれば、組織学的な評価を行い、それぞれの特徴を確認したうえで、まずは2種類の細胞を混合した状態でスフェロイド作成ならびに皮膚パッチ作成を試みる。目標は3次元培養であり、それが可能となる組み合わせを検討する。また、個々の細胞の培養液は、成分が異なり、こうした培養液の調整も必須と考える。 皮膚パッチが完成すれば、次は、移植実験を行う予定である。まずはヌードマウスなどを使って生着可能か評価し、これが確認できれば、最後は熱傷モデルへの応用も検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、様々な正常細胞を培養することによりスフェロイドを作成することが基本技術である。線維芽細胞の培養ならびにスフェロイド作成は完了しており、これをもちいた純粋な線維芽細胞のみの皮膚パッチの作成も成功している。ケラチノサイトも同様に皮膚パッチ作成まで行ったが、血管内皮細胞は、増殖環境を調整するのが困難であり、スフェロイド作成の段階で頓挫している。しかし、線維芽細胞と少量の血管内皮細胞を混合させたスフェロイドやパッチを作成したところ、線維芽細胞に比べるとやや強度のあるものが作成できたことからも、複数の細胞(例えば、血管内皮細胞と線維芽細胞)を混合させた皮膚パッチの作成を進めることも検討している。 細胞の由来なども考慮すると、外胚葉系のケラチノサイトは、培養皮膚の表面に存在する必要があることから、血管内皮細胞と線維芽細胞を混合した皮膚パッチの作成が現在の一番の目標である。ケラチノサイトは別の方法でその培養パッチの上に重ねるようにして培養ができれば3次元培養皮膚としての構造は成り立つと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、血管内皮細胞によるスフェロイド作成ならびにパッチ作成を試みており、これを継続しながら、それぞれのパッチの組織学的構造を通常のHE染色ならびに免疫染色を用いて解明する。次に、これらの細胞を混合することによる細胞間相互作用を解明する。その際には、複数の細胞が共存できるような培養環境の調整も行う必要があると考えており、その調整も必要である。それぞれの細胞の極性なども考慮し、より生着可能で強固な構造をもった皮膚パッチ作成のために必要な細胞の割合を調整し確認することが一番重要なステップと考えている。具体的には、上記にも記したように、血管内皮細胞と線維芽細胞がどちらも継代可能となるような条件をまずは検討し、混合細胞での皮膚パッチ作成を行う。細胞の割合や混合の仕方、培養条件などを調整したうえで、より強固なものを作成する。ケラチノサイトは、できた皮膚パッチの表面に存在しなければならず、培養液も異なることから、別にパッチなどで作成するのが妥当を思われる。パッチ同士を重ね合わせたり、スフェロイドレベルで混合するなど、いくつかの方策を模索しながら、立体型の培養皮膚を作成したい。 パッチの作成が可能となれば、正常ヌードマウスの背側皮膚への皮膚移植実験を行い、生着の評価を行う。組織学的な評価により、ホストの組織との生着が確認できれば、最終的には熱傷動物モデルへの移植実験を検討する予定である。
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