2014 Fiscal Year Research-status Report
単離肝血管の収縮メカニズムから見たアナフィラキシーショック時の肝臓の役割の解明
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25462827
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
高野 博充 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70410313)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 循環 / ショック / 肝静脈 |
Outline of Annual Research Achievements |
モルモット肝静脈平滑筋細胞内カルシウム濃度の測定方法を確立した。前年度確立したFluo-8 AMと倒立顕微鏡によるカルシウム濃度測定装置ではカルシウム指示薬の蛍光強度を長時間維持できず、10分を超える実験・測定ができなかった。実験漕の改良、アニオントランスポーター阻害薬(probenecid)併用、蛍光指示薬の細胞内ロード条件の変更を試行したが、最適なロード条件による蛍光指示薬Cal-520 AM (AAT Bioquest inc., CA)の使用により30分以上の肝静脈平滑筋細胞内カルシウム濃度測定を可能にした。 無刺激状態において、モルモット肝臓平滑筋細胞内カルシウムはTetrodotoxin(3 μM)非感受性のわずかな自発的一過性カルシウム濃度上昇反応(頻度0.1 Hz)を繰り返していたが、この反応の細胞間同期は見られなかった。収縮実験において準最大収縮反応を起こした強度(頻度30 Hz、持続時間50 μs、1 s)で経壁的神経刺激を行うと、一過性カルシウム濃度上昇反応を起こした。この反応はα受容体拮抗薬のPhentolamine(3 μM)でほとんど抑制され、Tetrodotoxin(3 μM)で消失した。一方、Phenylephrine(10 μM)やAcetylcholine(10 μM)は持続的なカルシウム濃度上昇反応を起こした。 以上の結果より、モルモット肝静脈の神経性収縮は主にα受容体を介した細胞内カルシウム濃度上昇を伴っていることが確認された。また、同平滑筋細胞にはムスカリン様受容体も存在し、その刺激により同じく細胞内カルシウム濃度上昇を伴って収縮に寄与することも確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度確立したFluo-8 AMカルシウム蛍光指示薬による方法では、カルシウム濃度上昇をとらえることはできたが、蛍光反応の退色が速いので阻害剤、抑制剤を用いた比較実験を行えなかった。アニオン輸送阻害剤(Probenecid)の併用が有効であったり、分子量の大きいFluo-4 AMのほうが蛍光強度は弱くても退色が遅かったりしたことから、退色の原因が蛍光指示薬の細胞内からの排出にあると考えられた。そこで、アニオン輸送系による排出が少なくなるようデザインされた新しい蛍光指示薬であるCal -520 AM (AAT Bioquest inc., CA)を試用したところ、適切なロード条件下では有効な蛍光強度と30分を超える測定が可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はまず、モルモット肝静脈平滑筋細胞内カルシウム濃度測定実験の続きを行って、肝静脈平滑筋の特徴的な収縮機構を明らかにする。神経刺激による一過性収縮には外液カルシウムの寄与がほとんどないという結果を確認し、収縮に必要な細胞内カルシウムの動員先を明らかにするため、以下の実験を行う。nifedipineによる電位依存性カルシウムチャネルの阻害剤によって刺激による細胞内カルシウムイオン濃度上昇が阻害されるかどうかや、細胞外カリウム濃度増加による細胞膜脱分極状態によって細胞内カルシウムイオン濃度上昇が起こるかどうか、さらにCyclopiazonic acidによる細胞内カルシウム貯蔵部位からのカルシウム放出阻害によって細胞内カルシウムイオン濃度上昇が阻害されるかどうかを明らかにする。 次にこれらの収縮メカニズムに対するアナフィラキシーショックの影響を明らかにするため、モルモット肝静脈の張力と細胞内カルシウム濃度に対するアナフィラキシーのメディエーターである血小板活性化因子とヒスタミンの影響を調べる。
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