2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25462873
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
滝戸 次郎 昭和大学, 歯学部, 助教 (00197237)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 破骨細胞 / 細胞融合 / 情報交換 / 細胞骨格 |
Research Abstract |
我々が発見したアクチン超構造体(zipper-like structure)の破骨細胞融合における関与を検討するため、その構造と機能を解析した。実験系として、マウスマクロファージ様培養株細胞RAW264.7細胞をRNAKL(Receptor activator of nuclear factor-kB ligand)で刺激して、破骨細胞を分化誘導した。予備実験から、Cx43(コネクシン43)が細胞接触部に蓄積することが分かっていた。Real-time PCRの結果から、Cx43のmRNA量はRAW264.7細胞を用いた破骨細胞分化に伴って、変化しなかった。同細胞へEGFP-Cx43プラスミドの導入を試みたが、相関電子顕微鏡解析に供するには充分な導入効率が得られなかった。 破骨細胞のアクチン細胞骨格は、ネットワークを形成する情報伝達シグナルにより制御されることが知られている。そこで、同ネットワークを撹乱する各種薬剤を用いて、破骨細胞の多核化に対するアクチン細胞骨格の役割を検討した。RANKLでRAW264.7細胞を刺激し、3日目(単核細胞の状態)に各種薬剤を添加し、4日目に形成される多核細胞を評価した。アクチン繊維の安定化剤であるJasplakinolideは、小さい破骨細胞を生じさせた。Src阻害剤SU6656とダイナミン阻害剤Dynasoreは、Zipper-like structureの形成を阻害し、小さい破骨細胞を生じさせた。Small GTPase Rhoの阻害剤Y27632は大きな破骨細胞を生じさせたのに対し、Rhoの活性化剤Rho activator IIは小さな破骨細胞を生じさせた。また、Rac1とRhoはZipper-like structureの中心部、すなわち2個の破骨細胞の接触部に局在することが判明した。M-CSFによる刺激は、癌遺伝子c-Srcを介してRac1の活性化とRhoの不活性化を引き起こし、Podosome belt およびzipper-like structureの形成を調節していると考えられた。これらの結果より、アクチン細胞骨格の変化は破骨細胞の融合に必須の因子ではないものの、大きな破骨細胞の融合の際に促進的に働くことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
破骨細胞の多核化に対するアクチン細胞骨格ネットワークの関与を検討した。インプット刺激であるM-CSFに始まり、ネットワークの最重要ハブであるc-Src、effectorであるsmall GTPaseの活性を調節する薬物を用いた解析から、破骨細胞の多核化およびzipper-like structure形成に関する充分なデータが得られた。導かれた結論も妥当と思われたので、論文にまとめ投稿中である。この小課題に関しては、達成度は高いと考えられる。破骨細胞における同ネットワークは、ポドゾーム形成、zipper-like structure, endocytosis, 細胞の遊走等多くの細胞機能に関与すると考えられるので、それらの機能を適宜分離して評価することが重要である。それらの内、アクチン細胞骨格とendocytosisの破骨細胞多核化に対する寄与の分離を現在検討中である。 破骨細胞形成におけるCx43の役割の解明に関しては、RAW264.7細胞へのEGFP-Cx43プラスミドおよびCx43 siRNAの細胞導入に問題がある。従来使用して来た細胞導入試薬Fugene HDおよびlipofectamine siRNAmaxを用いて、細胞導入の条件検討をしたが良好な結果は得られなかった。今後、他社製の細胞導入試薬あるいはelectroporation法を試してみる予定である。また、RAW264.7細胞は、プラスミド導入が困難な細胞として知られているので、マウス脛骨から採取した初代骨髄細胞を実験材料として用いることも考えている。 我々は、Zipper-like structureを、細胞間を動的に接着させるための装置と想定しているので、同構造内に細胞接着分子が存在すると仮定している。次年度につながる予備実験として、破骨細胞形成における各種細胞接着因子の発現および局在を検討した結果、細胞融合に関与する有力な候補分子を絞りつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
Zipper-like structureは、ポドゾームからの派生物である。近年、癌細胞研究領域で注目を浴びているInvadopodiaもまたポドゾーム由来のアクチン超構造体である。Invadopodiaは、癌細胞浸潤に重要な役割を果たすと目されており、その突起部分の動的構造の形成機構および方向性を持った張力の発生が研究の焦点となっている。ポドゾームおよびinvadopodiaにおける張力発生の原動力は、アクチン分子の重合反応に伴う細胞膜とアクチン繊維間の応力と考えられる。この応力は、細胞膜の外側への変形として、細胞の移動、糸状仮足の形成、細胞膜からの膜小胞の離脱あるいは融合に関与すると想定されている。 ポドゾームおよびinvadopodiaにおけるアクチンの動的重合反応は、EGFP-actinでラベルした構造体中の蛍光を強いレーザー光照射により消失させ、その復帰速度を測定することにより評価できる(光褪色後蛍光回復法: FRAP)。実際、筆者もzipper-like structureにおけるFRAP測定により、同構造中のアクチン重合の動的性質を確認している。今後の課題として、zipper-like structureで発生する張力の方向性を決定することは、細胞融合時の細胞接着を理解する上で必須の情報となる。幸いアクチン繊維の方向性を決定する手法として、ミオシンサブフラグメント1のアクチン繊維への結合により観察される鏃構造の方向から、アクチン繊維の方向性を推測できる。同手法により推定されるアクチン重合の方向が判明すれば、zipper-like structure中に含まれる2細胞の細胞膜間に働く応力ベクトルを決定できる。次年度は、電子顕微鏡レベルでのアクチン繊維の静的構造と、FRAP法を用いたアクチン繊維の動的構造解析を組み合わせ、zipper-like structureの機能を詳細に解明する。想定通りの結果が得られれば、ポドゾーム、invadopodia, zipper-like structure等のアクチン超構造体の相違に関して格段の理解が進むと期待される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度3月分支出額が確定しておらず、次年度使用額が発生した。 次年度使用額は203,826円であり、物品費で支出される。
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Research Products
(2 results)