2014 Fiscal Year Research-status Report
歯周病原性細菌の定着機構の解明:嫌気性環境下での感染実験系の構築と線毛機能の解析
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25462880
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
永野 恵司 愛知学院大学, 歯学部, 講師 (60367620)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 歯周病 / 歯周病原性細菌 / 歯肉上皮細胞 / 嫌気培養 / 付着 / 侵入 / 蛍光顕微鏡 / 電子顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究の第一の目的である、嫌気性条件下での歯周病原性細菌の培養上皮細胞への感染実験系を確立しつつある。すなわち、歯肉上皮細胞を、酸素を受容できるように工夫した培養容器を用いて、嫌気環境下で培養した。そこに、嫌気性の歯周病原性細菌を接種し、上皮細胞への付着および侵入性を、共焦点走査レーザー顕微鏡で観察した。当初は、歯周病原性細菌であるPorphyromonas gingivalisを使用する計画であったが、本菌は小さく顕微鏡観察が困難であった。また、P. gingivalisの線毛構成タンパク質の種々の変異株を作製したが、線毛発現そのものが低下する変異株がみられたりして、単純に構成タンパク質の有無だけでは比較ができないことが判明した。そこで、同じく歯周病原性細菌でかつ嫌気性細菌でもあるTreponema denticolaを用いることにした。本菌は、菌体長が十数マイクロメートルで、光学顕微鏡レベルの拡大率でも容易に観察できる。ところが、本菌は、P. gingivalisと比較すると、上皮細胞への付着性が弱く、これまでの好気性条件下で短時間の感染では、実質的な付着を認められなかった。しかし、本検討で試みている嫌気性条件下では、T. denticolaは長時間生存可能であることがわかり、長時間の感染実験が可能となった。その結果、上皮細胞に付着あるいは侵入するT. denticolaは、接種1時間後ではわずかだが、継時的に増加し、接種3時間以降では、実質的なレベルのT. denticolaを検出することができた。また、共焦点走査レーザー顕微鏡観察に加えて、走査型電子顕微鏡観察を行ったところ、T. denticolaは上皮細胞に付着後すぐに、細胞内に侵入している可能性があることが示された。今後は再現性を確認し、さらに定量的な検討を行っていく予定である。 また、申請時には計画していなかった、T. denticolaの性状解析も行い、2報の論文にまとめオンラインジャーナルに公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
歯肉上皮細胞(Ca9-22)の嫌気性条件下での培養方法をほぼ確立できた。当初の計画より遅れたが、想定範囲内である。一方、当初の計画では供試菌として使用する計画であったP. gingivalisは、共焦点レーザー走査顕微鏡による観察には、菌体が小さすぎて詳細な解析をするのが困難であった。また、線毛構成タンパク質の種々の変異株を作製したが、線毛発現そのものが低下したりして、単純に構成タンパク質の有無だけでは比較ができないことが明らかとなった。そこで、同じく歯周病原性細菌でかつ嫌気性細菌であるTreponema denticolaを用いることにした。T. denticolaは、P. gingivalisに比して、上皮細胞への付着能が低く、これまで報告されてきた好気条件下での検討では、実質的な付着を観察できなかった。しかし、本研究で試みている嫌気性条件下では、長時間培養が可能であるので、実質的なレベルでの付着・侵入を観察でき、本菌の感染機構の解明に向けて有用なモデルとなることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
共焦点レーザー走査顕微鏡観察した蛍光染色像を解析し、付着および侵入したT. denticola菌数を定量する。また、超博切片を作製し、透過型電子顕微鏡観察を行う予定である。さらに、T. denticolaが上皮細胞侵入後に、細胞内で増殖するか否かについても検討する計画である。
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Causes of Carryover |
他の研究や業務に時間を取られていた時期があり、本申請研究がやや停滞した時期があった。そのため、研究試薬等の購入が控えられたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究がおおむね順調に進んでいるので、消耗品の消費が増えると考えている。したがって、昨年度使用できなかった経費は、今年度中に使用することになると考えている。
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