2013 Fiscal Year Research-status Report
嘔吐誘発と摂食調節に関わる延髄最後野ニューロンの機能分化とその分子基盤の解明
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25462883
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
舩橋 誠 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (80221555)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平井 喜幸 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (40344519)
前澤 仁志 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (80567727)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 最後野 / 悪心 / 嘔吐 / 摂食抑制 / 脳スライス / パッチクランプ / Hチャネル |
Research Abstract |
最後野(Area Postrema)の化学受容性ニューロン群が悪心誘発と摂食調節に関わっていることはよく知られているが,従来より同部のニューロン群の全てがこれらの機能に関与していると思われてきたが,最近の我々の研究によって機能分化がありそれぞれの機能を担当する細胞群が存在する可能性が示唆された。そこで,本研究では,同部のニューロン活動の変調を決定づけるいくつかの特徴的な分子基盤と機能分化との関連に着目し,最後野ニューロンの機能分化様式とその分子基盤の詳細を調べた。摂食抑制ペプチドホルモンのアミリン(膵ホルモン)とコレシストキニン(CCK-8,消化管ホルモン)に応答するニューロンは,摂食調節に積極的に関与するニューロンと考えられるため,これららに対する応答を調べたところ,アミリンに対する応答は全て過分極作動性カチオン電流(Ih)を示さないIh(-)ニューロンに検出され,CCK-8に対する応答は42例のうち38例がIh(-)ニューロンであるという結果を得た。このことは,摂食調節に関与するニューロン群の膜の分子基盤としてHチャネルの発現が見られないことを示すものであった。さらに,これらのペプチドホルモンの受容体はシナプス前膜に存在する事も明らかとなり,迷走神経の求心路が最後野へ投射する際に,Ih(-)ニューロンとIh(+)ニューロンを別々に認識してシナプス接続していることが示唆された。これらは,最後野ニューロンが悪心・嘔吐誘発と摂食調節の中枢神経機構を担う上で,気持ち悪くなったので食べないという調節と,気持ち悪く無くても食べないという調節が存在し,ニューロンの分子基盤とシナプス接続のレベルで区別されて合目的に機能分化している可能性を示すものであった。これらを更に詳しく調べて行くことにより,悪心・嘔吐と摂食調節の神経基盤に新たな概念を樹立できる可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究実施計画として,「悪心・嘔吐誘発と摂食・飲水調節に関わる最後野ニューロン群の同定」を目指して実験を行った。具体的には,最後野の非Ihニューロンが摂食行動調節に特化して機能分化しているか否かを明らかにする。 アミリンに応答するニューロンは全て非Ih ニューロンであり,アミリンは非Ih ニューロンに接続しているニュ ーロンのシナプス前部に作用してグルタミン酸の放出を増強するという作用機序を示唆するデータについて確定して,論文発表を行った。さらに,CCK-8応答ニューロンの解析も行い,アミリンと同様に主としてシナプス前受容体を介して応答が生じていることを明らかにした。当初予定していた,Hチャネル阻害薬の標的部位を明らかにするために,両側迷走神経切除の影響,最後野切除を行 った場合のサッカリン嗜好性の変化を調べること,および,両側迷走神経切除群については,新鮮脳スライス標本を作製し,最後野ニューロンのパッチクランプ記録を行い,Ihニューロンと非Ihニューロンの存在比率を調べ,これにより迷走神経軸索からの入力を受けている最後野ニューロンのサブタイプを同定することは,現在パイロットスタディを行っているところである。以上のことから,予定していた研究計画について概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究実施計画とて,1)平成25年度にパイロットスタディを行った実験について本格的に確定実験を行う。2)最後野グルコース応答性ニューロンの化学感受性と形態的特徴の解明するために,グルコース応答生を同定したニューロ ンに対して,従来の方法(Funahashi et al., 2001~2012)であるスライスパッチクランプ法により電気生理学的特性( 静止電位,活動電位,膜時定数,膜容量,膜抵抗,イオンチャネル活性)を調べる。続いてグルコース感受性お よび用量依存性を調べる。同時に,アポモルヒネ等の催吐物質や摂食抑制物質であるアミリン、CCK,ニコチンなどに対する応答性を調べる。細胞形態観察のためニューロバイオチントレーサーを電極内液に入れて用いる。3)Ih(-)ニューロンとIh(+)ニューロンの神経伝達物質については,グルタミン酸,ドパミン,ノルアドレナリン,セロトニンなどが想定されるが,これらの詳細を免疫染色法を用いて明らかにする。4)悪心・嘔吐誘発と摂食・飲水調節に関わるニューロンネットワークの解明 催吐剤投与群とアミリン投与群について,各薬剤投与の2 時間後に麻酔下にて4%パラホルムアルデヒドを用いて灌流固定を行う。脳を摘出しミクロトームを用いて厚さ50 ミクロンの凍結切片を作成し,cFos 抗体を用いた 免疫染色を行い脳幹部,視床下部,視床背内側核,背内側前頭連合野の各部におけるcFos 陽性細胞を同定し細 胞数を定量して解析を行い,機能的ニューロンネットワークを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
申請した備品等のうち,電動3次元マイクロマニピュレーターの機種選定を行ったところより高精度で耐久性の高いものが,予算額よりも廉価にて購入できたため,次年度使用額が発生した。 実験動物および消耗品,試薬等の購入費として追加して充てる予定である。
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Research Products
(9 results)