2015 Fiscal Year Research-status Report
神経麻痺の発症機構解明と新規治療法開発に関する研究
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25462885
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
豊田 博紀 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (00432451)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 運動ニューロン / 入力抵抗 / TASKチャネル / 膜興奮性 / 一酸化窒素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、神経細胞の膜興奮性制御に重要な役割を果たしているTASKチャネルに着目し、神経麻痺の発症機構解明を目指している。これまでの研究結果から、運動ニューロンの細胞径に応じてTASKチャネルの発現様式が異なり、電気生理学的特徴を決定付ける要因となっていることが明らかとなった。神経麻痺発症の際、一酸化窒素が関与することが知られているため、一酸化窒素によりTASKチャネルが制御を受け、運動ニューロンの膜興奮性変化の結果、神経麻痺発症が生じている可能性が示唆される。これまでの報告により、TASK1チャネルはNO-cGMP経路により活性化されることが知られているが、TASK3チャネルがどのような制御を受けるかは知られていない。そこで本年度は、クローニングされたTASK3チャネルを卵母細胞に発現させ、NO-cGMP経路によりどのような制御を受けるかを検討した。その結果、8-Br-cGMP投与によりTASK3チャネルが下方制御を受けることが明らかとなった。また、小型及び大型運動ニューロン群において、入力抵抗及びスパイク潜時に対する8-Br-cGMPの効果を検討したところ、小型運動ニューロン群では入力抵抗の減少が認められ、スパイク潜時が遅延していた。この結果は、小型運動ニューロンでは細胞体にTASK1チャネルが豊富に発現していることに起因している可能性が示唆された。その一方、大型運動ニューロン群では、入力抵抗及びスパイク潜時はほとんど変化していなかった。この結果は、大型運動ニューロンでは、細胞体にTASK1チャネルが豊富に発現し、樹状突起にTASK3チャネルが豊富に発現していることに起因している可能性が示唆された。これらの結果から、神経麻痺発症の際、一酸化窒素により運動ニューロンに発現するTASKチャネルが制御を受け、ニューロンの膜興奮性が変化している可能性が示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
神経損傷後に増加する一酸化窒素がTASK チャネルの調節因子として作用する可能性が高いため、運動ニューロンにおける一酸化窒素の作用を明らかにする必要がある。小型運動ニューロン群および大型運動ニューロン群において、一酸化窒素の作用が異なる可能性が示唆されたが、例数が十分でなく、結論するには至っていない。また、神経損傷後の神経細胞においても一酸化窒素の作用を検討し、コントロール群と比較する予定であったが、十分な結果が得られていない。
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Strategy for Future Research Activity |
運動ニューロンにおける一酸化窒素の作用を明らかにするため、本実験を引き続き行い、結論を得る。小型運動ニューロン群および大型運動ニューロン群において、一酸化窒素の作用が異なる可能性が示唆されているが、2つの群の細胞径の境界が不明瞭であることから、それを明らかにする。また、神経損傷後の神経細胞においても一酸化窒素の作用を検討し、小型運動ニューロン群および大型運動ニューロン群における一酸化窒素の作用を明らかにする。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、まず、消耗品の購入が予定より若干少なかったことがあげられる。また、研究成果が学会発表の水準にまでは達していなかったたため、学会への出張回数が予定よりも少なくなった。そのため、旅費が予定額よりも少なかったことがあげられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ホールセルパッチクランプ記録や組織化学実験を行うための試薬の費用、実験動物の経費、国外・国内旅費および論文印刷費として使用予定である。
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