2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25462891
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
長谷川 敬展 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (50447273)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉村 弘 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (90288845)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アクアポリン5 / 翻訳後修飾 / リン酸化 / ユビキチン化 / 唾液腺 / 細胞内膜輸送 / 細胞内シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
唾液腺水チャネルアクアポリン5(AQP5)は短鎖ユビキチン(Ub)化およびリン酸化される。これらAQP5翻訳後修飾のそれぞれの機能・役割と修飾相互作用の調節機構を明らかにすることで、唾液分泌過程における生理的意義を探っている。 短鎖Ub化:AQP5短鎖Ub化は微量で、その機能や役割の解析が困難であったことから、本研究では複数の改善策を計画・遂行している。改善策の1つ、ヒト唾液腺HSG細胞を用いたユビキチンリガーゼE3による強制Ub化実験を前年度から引き続き実施した。AQP5短鎖Ub化を亢進する2種類のHECT型E3が同定され、1種類のE3は構成的な短鎖Ub化と共にAQP5量を減少させること、もう1種類のE3はCa2+シグナル惹起で一過的にAQP5短鎖Ub化を増強することを明らかにした。また、細胞膜ビオチン化-脱ビオチン化を用いた解析で、想定通りCa2+シグナル惹起による短鎖Ub化とAQP5細胞内取り込みを実証した。 リン酸化:当初計画していた方法を変更しAQP5結合タンパク質の探索のために、cAMPシグナル惹起時のAQP5安定発現HSG細胞を用い、AQP5免疫沈降産物でショットガン質量分析を行った。細胞骨格タンパク質とその調節タンパク質、脱リン酸化酵素やユビキチンなどが検出された。リン酸化依存的な結合であるかなど今後精査する必要がある。 翻訳後修飾の相互作用:AQP5分子内でリン酸化部位とUb化部位が近接していること、Ca2+シグナル惹起時に脱リン酸化が起こることから、拮抗などの翻訳後修飾間の相互作用を検証した。HSG細胞におけるAQP5変異体の解析や薬剤処理で、両翻訳後修飾が同時に起こり得ることから、AQP5分子内の翻訳後修飾間相互作用のみではなく、上流にある複数の細胞内シグナル間の相互作用によってもAQP5翻訳後修飾が調節されていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
AQP5短鎖Ub化について、計画していた改善策を含む複数の解析を行うことにより、ヒト唾液腺培養細胞において、Ub化によるAQP5の細胞内輸送への関与を実証できた。このことは研究目的である唾液分泌過程におけるAQP5短鎖Ub化の生理的意義の解明へ向けての大きな一歩である。一方で、AQP5リン酸化について、結合タンパク質を複数同定しているものの、これらは未だリン酸化との関連性が明らかでない。また、当初計画していたAQP5リン酸化と水透過能の関連性を調べるに至っていない。翻訳後修飾の相互作用では、想定よりも複雑で巧みな翻訳後修飾の相互作用と調節機構をもつことが示唆され、相互作用の明確な意義は見出せていない。このように本研究の目的としているリン酸化の役割や修飾間相互作用の唾液分泌過程における意義を明らかにできていないことから、達成度をやや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
AQP5翻訳後修飾それぞれの役割は次のように引き続き研究を進めていく。ただし、これまでの知見の多くは培養細胞系から得られたものであるので、生体内唾液腺との比較検証を必要性に応じて可能な限り行う。短鎖Ub化が細胞内への取り込みに関与する事は明らかとなったが、分解系への関与は明確でない。ライソソームやプロテアソーム分解へ導くシグナルとなるのかを詳細に解析する。リン酸化については結合タンパク質の解析よりも水透過能解析に重点を置いて実施し、機能に対する影響を明らかにする。また、研究の過程でAQP5翻訳後修飾が細胞外pH、浸透圧や血清などの細胞の外部環境に大きく依存していることが判明した。それぞれの環境下で働くシグナルを精査し、修飾間相互作用だけでなく、修飾シグナル間相互作用の一般則を見出す。以上のように翻訳後修飾の役割とその総合的なシグナル調節機構を調べ、唾液分泌過程におけるAQP5翻訳後修飾の意義を解明していく。
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Causes of Carryover |
年度末に当該残予算(次年度使用額)をゼロ調整しなかった為。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度物品費として使用する。
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Research Products
(1 results)