2013 Fiscal Year Research-status Report
歯周病増悪因子Cot/Tpl2を分子標的とした治療法を探る
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25462895
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
柿元 協子 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (40274849)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松口 徹也 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (10303629)
大西 智和 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (30244247)
坂東 健二郎 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (50347093)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Cot/Tpl2 / JNK / periodontitis / mouse model / IL-12p40 / MCPIP-1 / 3'-UTR / mRNA stability |
Research Abstract |
我々は、歯周病マウスモデルの作成に成功している。以前、MAPKであるCot/Tpl2のノックアウトマウスでは、野生型マウスと比較して、歯槽骨吸収の減少が生じることを報告した。そこで今回は他のMAPKであるJNKを、脱リン酸化する酵素であるDUSP-16のドミナントネガティブを発現するトランスジェニックマウスでの歯周病モデル作成と歯槽骨吸収を解析した。マウスをケタミン/ドミトールで麻酔した後、上顎第一臼歯を0.2mmのワイヤーで結索し、7日間おき、マイクロCTスキャンで歯槽骨の吸収を評価した。その結果、DUSP-16のトランスジェニックマウスでは歯槽骨吸収が少ないが、野生型のマウスでは臼歯近心および分岐部の著名な歯槽骨の吸収が認められた。このことからJNKのシグナルが歯周病マウスモデルにおける歯槽骨吸収に重要な役割を示すことが示唆された。さらに、ワイヤーを除去して7日間置いたものでは、野生型のマウスで、根分岐部の歯槽骨の骨の再生が認められた。ヒトでは歯周病による骨吸収の再生が難しいことから、マウスの骨のリモデリングの詳細を解析することにより、歯槽骨再生の治療法の開発が期待された。 我々は、Tpl2のノックアウトマウスではLPS刺激時のIL-12およびそのサブユニットp40の発現が多いことを報告している。IL-12は破骨細胞の活性を抑制することから、その発現調節の解明は重要である。IL-12p40のmRNAは、Tpl2のシグナルを介して発現する、MCPIP-1というRNA分解酵素により分解される。そこで、IL-12p40のmRNAの安定性を解析するために、mRNAの3'末端のUTRを持ったルシフェラーゼmRNAを発現するベクターをRaw264.7細胞にトランスフェクトした。この細胞をLPSで刺激した時のルシフェラーゼ活性がTpl2下流のERKのインヒビターで阻害された。このことから、Cot/Tpl2はIL-12p40のmRNAの安定性を高める可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回、MAPKであるJNKを調節するDUSP-16のドミナントネガティブのトランスジェニックマウスで歯周病モデルを作成することにより、様々なマウスで歯周病モデルが作成可能であることを示した。このモデルマウスは当初の計画にはなかったが、今後、Cot/Tpl2のノックアウトマウスとの対照実験が必要となることを考えて行ったものである。 当初の計画では骨標本の作製を予定していたが、本学部にマイクロCTが導入されたことにより、作製が不要になったため、実験のスピードアップにつながった。また、継続した骨量の変化も観察できるようになり、より詳細なデータを得ることが可能となった。 IL-12は、破骨細胞の活性化を抑制するサイトカインである。我々はCot/Tpl2のノックアウトマウスの抗原提示細胞から多量のIL-12が分泌されることを見出しており、このマウスでの歯槽骨の吸収抑制の原因の一つと考えられる。したがって、IL-12のサブユニットp40の発現調節の解析を、マウスモデルの実験と並行して行っている。計画とは多少ずれが生じているが、このような場合も想定して実験計画を立てているため、大きな混乱はない。今後、マウスモデルからの組織の採取やmRNAの発現の解析などを行っていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
我々はCot/Tpl2のノックアウトマウスを保有しているが、他のMAPKであるJNKの脱リン酸化酵素、DUSP-16についてもノックアウトマウス、ドミナントネガティブのトランスジェニックマウスも保有している。今後これらの歯周病マウスモデルを解析することにより、Cot/Tpl2,JNKの歯周病への関与がより明確になると期待される。歯周病モデルの歯槽骨吸収の解析は、前述のように、マイクロCT使った方法に変更する予定である。同じマウスを使った組織標本の作製および免疫染色、mRNAの発現の解析などを行うことが可能となることからより詳細なデータが得られることが期待される。これらの解析によりCot/Tpl2のノックアウトマウスで特異的に発現が変化している分子を同定し、その発現調節にCot/Tpl2が関与しているかどうかを調べる予定である。具体的には、発現調節を解析するルシフェラーゼアッセイや、発現調節部位を調べるChIPアッセイ等を行い、Cot/Tpl2および下流シグナルのインヒビターの与える影響を確認する予定である。また、これらのマウスから採取し、分化させた初代培養破骨細胞、骨細胞、骨芽細胞などを用いた解析を行う予定である。これにより、これらの細胞のCot/Tpl2シグナルが、歯周病モデルにおける歯槽骨吸収にどのように影響するかについて調べる予定である。
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