2014 Fiscal Year Research-status Report
歯周病増悪因子Cot/Tpl2を分子標的とした治療法を探る
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25462895
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
柿元 協子 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (40274849)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松口 徹也 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (10303629)
大西 智和 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (30244247)
坂東 健二郎 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (50347093)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Cot/Tpl2 / LPS / expression / MAP3K / NF-kB |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は以前、Cot/Tpl2のノックアウトマウスで歯周病マウスモデルを作製した結果、野生型のマウスでは歯槽骨が高度に吸収されるが、それと比較して、Cot/Tpl2のノックアウトマウスでは歯槽骨の吸収が有意に低下していることを報告した。このことは今まで報告された、骨芽細胞のRANKL発現と破骨細胞のRANKを介した分化の双方でCot/Tpl2シグナルが重要であることと一致した結果である。ところが、Cot/Tpl2はリン酸化により活性化された後、プロテアソームで分解されるユニークなMAP3Kである。さらに、歯周病原菌の菌体成分LPSはTLR4を介しCot/Tpl2を活性化することが知られている。したがって、歯周病罹患部位に存在する骨芽細胞や破骨細胞前駆細胞がLPSに暴露されると、Cot/Tpl2自身が分解してしまい、その後の骨芽細胞のRANKLの発現や、それによる破骨細胞の分化に働くCot/Tpl2のシグナルが抑制されてしまうことになる。このことは、Cot/Tpl2のノックアウトマウスと野生型のマウスを用いた歯周病マウスモデルにおいて、骨吸収に大きな差が認められることと矛盾している。 そこで我々は、LPS刺激によるCot/Tpl2の分解の後、回復させるシステムが存在するという仮説を立て、LPS刺激後のCot/Tpl2の動態を、破骨細胞と同じ血球系の細胞であるマクロファージを用いて観察を試みた。 LPS刺激後の動態を確認したところ、刺激後1-2時間でCot/Tpl2が分解し減少するものの、6時間後ぐらいから回復していた。リアルタイムRT-PCR法でCot/Tpl2のmRNAの発現を確認したところ、刺激後2時間で約4倍に増加していた。したがってCot/Tpl2がLPSにより活性化されたのち、一過性にそのタンパク量が減少するが、同時にmRNAの発現誘導によりそのタンパク量が回復し、維持される可能性が示唆された。LPS刺激によるCot/Tpl2のmRNAの発現誘導には、遺伝子のプロモーター領域のNF-kB結合部位が重要であることも明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定では骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、抗原提示細胞におけるCot-Tpl2の役割を調べることを目的としている。以前我々は、骨芽細胞が、破骨細胞の分化と活性化に必要なRANKLを発現する際に、Cot/Tpl2シグナルが重要であることを報告した。最近になって骨芽細胞から提示されるRANKLのシグナルが破骨細胞の分化に働く際に、破骨細胞内のCot/Tpl2のシグナルが重要である可能性が報告された。したがってCot/Tpl2は骨芽細胞と破骨細胞の双方で活性化され、破骨細胞の分化促進に働くことが示唆された。そこで、本年度はCot/Tpl2のシグナル経路の詳細を調べることとし、歯周病におけるCot/Tpl2の発現調節にターゲットを絞り、抗原提示細胞であるマクロファージを用いて実験を行った。計画とは多少ずれが生じているが、このような場合も想定して実験計画を立てているため、大きな混乱はない。 我々は、歯周病原菌の菌体成分であるLPSの刺激によりCot/Tpl2が活性化された後、分解されるのにもかかわらず、RANKL刺激によりCot/Tpl2シグナルを介して破骨細胞の分化や骨吸収が生じることに疑問を抱いた。そこでCot/Tpl2が活性化されて分解されても、回復させるシステムが存在するという仮説を立て、実験を行ってきた。しかし、Cot/Tpl2のタンパクを検出するための抗体の質が悪く、Cot/Tpl2の定常時での発現量やLPS刺激後の動態のほか、今後の研究に必要なCot/Tpl2発現ベクターが機能しているかどうかが判定できず、苦労していた。しかし、最近になって感度の高い抗体が手に入り、培養細胞を用いたCot/Tpl2の動態の確認を行うことが可能となった。今後研究をスピードアップさせ、報告にまでもっていきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
Cot/Tpl2を高感度に検出できる抗体が手に入ったので、培養細胞や初代培養細胞におけるCot/Tpl2タンパクの発現の動態の観察、歯周病マウスモデルでの組織切片の染色が容易になった。さらに当講座の所属する研究施設にフローサイトメトリーが導入されたため、細胞の純度の測定や、特定の細胞におけるタンパク発現の確認などが容易にできるようになった。 今後は当講座が所有するCot/Tpl2マウス、DUSP16ノックアウトマウスおよびトランスジェニックマウスを用いた歯周病マウスモデルを作成し、組織切片の作成や染色を行いたい。また、免疫提示細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞などの初代培養細胞おけるRANKLの発現や分化マーカーのタンパク発現量の違いなどをフローサイトメトリーで確認していきたい。さらにCot/Tpl2の歯周病治療の分子標的としての可能性を探るため、歯周病モデルマウスの治療を行う実験を行いたい。
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Research Products
(4 results)