2014 Fiscal Year Research-status Report
硫化水素産生酵素の立体構造と反応機構を基盤とした新規口臭予防薬候補化合物の探索
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25462897
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
毛塚 雄一郎 岩手医科大学, 薬学部, 助教 (50397163)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 康夫 愛知学院大学, 歯学部, 准教授 (10315096)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 硫化水素産生 / 酵素 / 歯周病 / 口臭 / 化合物スクリーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
口腔細菌により産生される硫化水素は口臭の主要な原因物質であり、歯周病を進行させる一因となる。歯周病原細菌の中でもFusobacterium nucleatumは特に高い硫化水素産生能を示すことが知られている。今年度は、この細菌の持つ硫化水素産生酵素のうち、硫化水素産生への寄与が最も高いと考えられている酵素(Fn1220)を対象とし、阻害剤候補化合物の探索を実施した。 化合物によるFn1220の酵素阻害活性を評価するためのin vitroアッセイ系を構築した。この系では、酵素反応により生成した硫化水素を出発物質としてメチレンブルーを形成させ(Lawrence et al., Electroanalysis 2000)、それが示す670 nmの極大吸収をマイクロプレートリーダーにより測定する。したがって、反応溶液に化合物を添加しておき、それが阻害活性を持つ場合、670 nmにおける吸光度は、ポジティブコントロールと比較して低い値を示す。この系では、96ウェルプレートとマルチチャンネルピペット(マニュアル分注)を用い、Z’ = 0.8、S/B = 4といった良好な評価値を得た。理化学研究所の天然化合物バンクより標準化合物(80種類)の提供を受け、実際にアッセイを実施したところ、阻害率35%を示す化合物を見出すことができた。これが、アッセイの原理に依存する擬陽性であることを排除するために、Differential Scanning Fluorimetry(Niesen et al., Nature protocols 2007)を用いた二次アッセイ系を構築し、化合物の評価を行った。これにより、先に示した化合物は酵素と結合することが示唆された。今後は、さらなるアッセイにより、化合物により酵素阻害が生じていることを検証して行くとともに、新たな化合物ライブラリーに対してアッセイを進める必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
酵素学的解析および立体構造解析については、現時点で概ね終了したと考えている。Fn1220に対する化合物スクリーニングに関しては計画変更があったものの、今年度中に系を構築し、アッセイを開始することができた。改善が必要な点もあるが、化合物を評価するのに十分な精度を有している。もう一方の酵素(Fn1055)に対するスクリーニングは未実施のままである。しかし、Fn1220と同様のアッセイ系の利用が可能であり、酵素や基質濃度などの一部条件を改変して速やかに対応できるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
Fn1220に対する化合物スクリーニングを中心に進める。今年度構築した系は、マルチチャンネルピペットを用いたマニュアル分注を基本としているため、スループットの改善が望まれる。ディスペンサー(試薬分注装置)を利用したアッセイ系の検討についても並行して進める。本学には、この設備がないため、東北大学(星陵キャンパス)の設備を利用する。すでに設備の利用経験があり、設備の管理者とも打ち合わせが済んでいるため、円滑に対応することが可能である。化合物サンプルは、富山大学より提供を受けられることが決まっている(同大学和漢医薬学総合研究所の探索研究プロジェクトに課題が採択済み)。必要に応じてさらに公的化合物ライブラリーへの提供申請を行う計画である。ヒット化合物が得られた場合、二次アッセイにより擬陽性の排除を進めるとともに、酵素との複合体の結晶構造解析に向け、結晶化を進める。 並行して行っている関連研究の進展により、当初から対象試料としてきたFn1055よりも口臭に対して寄与の高いと考えられる酵素の存在が分かってきた。したがって、計画を変更してそちらの酵素に対するスクリーニングを優先させる可能性もある。
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Causes of Carryover |
実験補助者の雇用を見込んでいたが適任者を雇用できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
大規模な化合物スクリーニングを行うためには、試料調製に必要な器具や試薬、マイクロプレートなどの消耗品に加え、化合物サンプルの提供にかかる実費および東北大学までの旅費が必要となる。また、平成27年度は、経験のある実験補助者の協力を得られることになり、謝金が必要である。その他、消耗品、一般実験器具、学会および論文での成果発表などに使用する。
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