2013 Fiscal Year Research-status Report
Thバランス制御を介したビオチンによるアレルギー性疾患治療効果
Project/Area Number |
25462913
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
黒石 智誠 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (30400261)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅原 俊二 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (10241639)
田中 志典 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (60637958)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ビオチン / アトピー性皮膚炎 / Thバランス |
Research Abstract |
アトピー性皮膚炎自然発症マウスに対するビオチン摂取量の解析 NC/Ngaマウスは通常環境下(非SPF環境下)で飼育することにより7-8週齢でアトピー性皮膚炎様症状を自然発症し、17週齢頃にその症状がプラトーに達することが報告されている。そこで、本マウスを3週齢よりビオチン含有(0.8 mg/kg)もしくはビオチン除去AIN-76標準飼料を用いて飼育し、アトピー性皮膚炎自然発症に対するビオチン摂取量の影響を解析した。 その結果、ビオチン含有飼料飼育(ビオチン充足、biotin sufficient: BS)およびビオチン欠乏飼料飼育(ビオチン欠乏、biotin deficient: BD)マウスともに、10週齢(BS/BD条件 7週)からアトピー性皮膚炎様症状(引っ掻き行動)が認められ、耳介部からの出血を伴う重度の皮膚炎症状を呈する個体も認められた。しかしながら、BSおよびBDいずれの群においてもその症状に個体差が大きく、BSおよびBDマウスの両群間に有意な差は認められなかった。 また、本マウスでは、アトピー性皮膚炎様症状発症に伴い、血清IgG1およびIgE濃度が上昇し、2型ヘルパーT細胞に依存した免疫反応が増強されることが報告されている。そこで、BSおよびBDマウスについて経時的に血清IgG1およびIgE濃度を測定した。その結果、いずれの群においても、特に17週齢(BS/BD条件 14週)で血清IgG1およびIgE濃度の上昇が認められたが、アトピー性皮膚炎症状と同様に個体差が大きく、2群間に有意な差は認められなかった。さらに、フローサイトメトリーにより、耳介炎症局所への浸潤細胞の解析も行ったが、BSおよびBDマウス間に顕著な差は認められなかった。 以上の結果は、ビオチン欠乏に伴いアトピー性皮膚炎様症状が悪化するという、当初の予想とは異なるものであった。このため、次年度以降は、ビオチン欠乏条件やアトピー性皮膚炎誘導条件を再検討し、研究を推進する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予想とは異なる結果が得られたことから、現在までの達成度は「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究では、当初の予想と異なり、ビオチン充足(BS)およびビオチン欠乏(BD)マウスでアトピー性皮膚炎様症状に有意な差が認められなかった。そこで、以下の様に研究計画を修正して、さらに研究を推進する。 本研究で用いたBDマウスは比較的軽度のビオチン欠乏であり、ヒトのビオチン欠乏症で認められる脱毛や皮膚炎症状などを示さないことを報告している(Kuroishi, T., et al. J. Leukoc.Biol. 2008; 83: 912-920.)。一方、飼料のタンパク源に乾燥卵白(ビオチンに対して高親和性のアビジンを多く含み、ビオチンの吸収を阻害する)を用いることにより、重度のビオチン欠乏状態を誘導できることが報告されている(Watanabe, T., et al. Nutrition 2009; 25: 78-84.)。そこで、この乾燥卵白飼料を用いて重度のビオチン欠乏状態を作製し、アトピー性皮膚炎発症への影響を検討する。 本研究で認められたNC/Ngaマウスのアトピー性皮膚炎様症状は、その発症率および程度ともに、これまでの報告よりも軽度であった。NC/Ngaマウスのアトピー性皮膚炎自然発症は環境の清浄度に依存することから、本研究での飼育環境が自然発症の実験系に最適ではなかった可能性が考えられる。一方、本マウスは化学物質(ハプテン)連続塗布によりアトピー性皮膚炎様症状を発症することも報告されている(Shiohara, T., et al. J. Dermatol. Sci. 2004; 36: 1-9.)。そこで、ハプテン誘導性皮膚炎に対するビオチン摂取量の影響を解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の予想と異なる結果が得られたことから研究計画に若干の遅れが生じたため次年度使用額が生じた。 次年度は当初計画に加えて、化学物質(ハプテン)誘導性皮膚炎の解析を予定しており、その試薬購入に使用する。
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