2013 Fiscal Year Research-status Report
PKRはインフラマソームを介して歯周病の進行を制御するか?
Project/Area Number |
25462918
|
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
吉田 賀弥 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 講師 (60363157)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡村 裕彦 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (20380024)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | PKRリン酸化 / 炎症性サイトカイン / 骨代謝調節因子 |
Research Abstract |
培養骨芽細胞実験系: 実験計画1(PKRはP.g.菌により誘導されるか?)について。 ①SNAPタグした100 MOIの濃度のP.g.菌(SNAP-P.g.)をマウス骨芽細胞MC3T3-E1に、24時間まで感染させた。ウエスタンブロット法にて、抗SNAP抗体を用いて解析した結果、SNAP-P.g.が感染1時間後より時間依存的にMC3T3-E1細胞内に侵入することがわかった。②抗リン酸化PKR抗体を用いたウエスタンブロット法により、SNAP-P.g.がMC3T3-E1細胞に侵入して6時間後をピークに、PKRリン酸化の亢進が認められた。 実験計画2(誘導されたPKRがインフラマソームを活性化するか?)について。 ①MC3T3-E1細胞において、100 MOI SNAP-P.g.感染が引き起こすNLRP3発現の変化を、リアルタイムPCR法及びウエスタンブロット法にて解析した。その結果SNAP-P.g.感染後24時間でNLRP3 mRNA及びNLRP3案タンパク質の発現が有意に亢進していた。②①と同様にSNAP-P.g.を感染させたMC3T3-E1細胞において、インフラマソームにより発現が制御される各種炎症性サイトカインや、骨代謝調節因子のmRNA発現の変化を、リアルタイムPCR法で定量した。その結果、 SNAP-P.g.が炎症性サイトカインや骨代謝調節因子のmRNA発現を亢進させることが判明した。③shRNAによりPKR発現が抑制されたMC3T3-E1細胞株を作成した。このような細胞株においてPKR mRNA発現が有意に抑制されていることを、リアルタイムPCRで確認した。PKR抑制細胞株では、②により亢進していた各因子のmRNA発現の動態は解除された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①SNAPタグを付けることで、Porphyromonas gingivalisの骨芽細胞への侵入を効率的に判定する手法を確立できた。骨芽細胞への細菌の侵入を論じた報告は少なく、この結果は新規性がある。また、これまでは歯周病原菌は細胞表面のレセプターを介して病原性を発揮すると言われてきた。SNAP-P.g.の細胞内への侵入が歯周病の病態を制御するという研究仮説の新規性を追求できる実験環境が整った。 ②SNAP-P.g.の感染が、PKRを活性化するという新たな知見が得られた。PKRのリン酸化を検出する抗体は抗体価が低いので、当初は免疫沈降法を併用した系を予定していたが、最適な条件を設定することに成功した。これにより、PKRの酵素活性を短時間で検出できる系が確立され、今後の実験が迅速に進むと思われる。 ③SNAP-P.g.の感染によりPKRが活性化された場合に、実際に炎症性のサイトカインや、骨代謝調節因子の発現が変化する現象が確認された。この結果により、当初の研究仮説の妥当性が証明されたので、以降の実験計画を変更せずに遂行できる可能性が示された。 ④shRNAにより効率的にPKRの発現を抑制できた。mRNAレベルとタンパク質レベルの両面で抑制効果を検討した。その結果、両者において十分な抑制効果が認められた。以上のPKR発現抑制株を野生型株と比較することにより、PKRと炎症性サイトカイン・骨代謝因子との関連性を検討できる実験系が整った。
|
Strategy for Future Research Activity |
培養骨芽細胞実験系について: PKRがインフラマソームを活性化する分子機構を、当初の実験計画に沿いさらに詳細に検討する。具体的には ①NLRP3の局在変化を抗NLRP3抗体を用いた免疫染色法により検出する。刺激により活性化したNLRP3は小胞体からミトコンドリアへと移行するので、ミトコンドリアマーカーのMitotrackerと二重染色することで、インフラマソームの活性化状態を判定する。 ②PKRはNLRP3と直接結合し、インフラマソームを活性化する可能性があるので、SNAP-P.g.を感染させたMC3T3-E1細胞内におけるPKRはNLRP3の結合状態を検討する。まず、両抗体を用いた免疫沈降法による検出を試みる。うまくいかない場合は、MycまたはFlagタグしたPKRやNLRP3を大腸菌を用いて作成し、MC3T3-E1細胞に導入・発現させた後に、抗MycおよびFlag抗体を用いた免疫沈降法を行う。 ③本年度の実験の結果、SNAP-P.g.の感染により発現が変化する因子として、炎症性サイトカインが3種類、骨代謝調節因子が3種類同定された。その中でも発現変化の程度が大きく、PKRの関与が明らかなものに着目し、重点的に解析を進める。併せて、ELISAやウエスタンブロット法を用いて、各因子のタンパク質レベルでの発現変化について検討する。特にウエスタンブロット法の解析には、培養上清をサンプルとして用いるために、細かな実験条件の設定が必要となる。うまくいかない場合は、複数のタンパク質調整の方法を試みるなどの対応をする予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の使用計画には、実験が計画どおり進まない場合を想定しクローニングに要する費用を計上していたが、抗体価が良好でクローニングの必要がなくなったため予算を繰り越した。 次年度は、免疫沈降法や免疫染色法などを頻回に実施するので、必要な抗体や試薬を購入するために予算を用いる予定である。また、免疫沈降法がうまくいかない場合には、MycやFlagタグをしたタンパク質を大腸菌で作成する遺伝子導入実験を行う必要があるので、それに必要な試薬を購入する。
|