2013 Fiscal Year Research-status Report
口腔癌細胞のマウス同所移植モデルにおける腫瘍リンパ管新生と前転移ニッチ形成
Project/Area Number |
25462935
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Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
添野 雄一 日本歯科大学, 生命歯学部, 講師 (70350139)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 和也 日本歯科大学, 生命歯学部, 助教 (70549055)
田谷 雄二 日本歯科大学, 生命歯学部, 准教授 (30197587)
佐藤 かおり 日本歯科大学, 生命歯学部, 講師 (90287772)
島津 徳人 日本歯科大学, 生命歯学部, 講師 (10297947)
青葉 孝昭 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (30028807)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 歯学 / 病理学 / 腫瘍 / 扁平上皮癌 / 血管新生 / リンパ管新生 / リンパ節転移 / 同所移植モデル |
Research Abstract |
近年、癌細胞の増殖・浸潤・転移などの悪性形質に影響を与える“癌微小環境”として癌実質・間質要素間の相互作用が注目されている。本研究では、口腔癌の早期リンパ節転移メカニズムの解明を長期目標として、ヒト口腔癌細胞株のヌードマウス同所移植モデルを用いて、癌細胞によるリンパ管新生誘導と脈管侵襲・リンパ節転移の促進に働く癌細胞―間質間相互作用の解明を目指す。初年度の今回、腫瘍脈管間質の構造特性を知る目的で、ヒト口腔癌細胞株(リンパ節転移病巣由来OSC19, HSC2, OSC20、原発巣由来KOSC2, HO-1u1)を移植したマウス舌試料を対象として、最大組織割面(直径2 mm超の腫瘍胞巣)に相当するパラフィン包埋試料から薄切切片を作成し、サイトケラチン(CK)等の癌形質マーカーとPECAM/Lyve1等の血管・リンパ管内皮マーカーの多重免疫染色を施して組織観察・形態計測を行った。使用癌細胞株の特徴として、移植個体でのリンパ節転移巣形成率に基づくと、転移巣由来株3種はすべて形成率100%であったため高転移性株、原発巣由来株2種は形成率が50%に満たないため低転移性株として区別できた。移植による担癌状態の舌組織について、腫瘍内外間質のリンパ管密度(間質領域におけるLyve1陽性内皮の面積率)の計測結果では、高転移性株で有意に上昇していることがわかった。血管密度では、癌細胞移植により上昇傾向を示し、腫瘍分化度と相関が高いことも判明した。さらに、連続切片の多重免疫標識データに基づいて組織立体構築し、2次元画像で得られなかった腫瘍周囲および内部間質空間での脈管走行を確認した。この解析では胞巣周囲でのリンパ管腔の拡張および腫瘍増殖圧による圧平形状を捉えるとともに、舌下部の拡張したリンパ管腔でCK陽性癌細胞が栓塞する様子も確認できた。今回、脈管間質の病理形態観察と定量解析により、癌胞巣環境における脈管間質形成パターンと癌細胞株の形質との関連を評価できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
癌細胞の浸潤・転移の悪性形質とリンパ管新生機序を実証するうえでは、癌微小環境を構成する多くの分子・細胞相互の位置情報を明らかにすることが鍵となるが、癌細胞形質と間質環境(組織構成要素)の数量・局在を同時観察(計測)できるかが課題であった。この目的に向けて、複数の特異抗体(サイトケラチン、E-カドヘリン、ビメンチン、Ki67、PECAM、Lyve-1)を組み合わせた多重免疫標識条件を検討し、研究代表者らがこれまでに確立した画像処理法(バーチャルスライドデジタル画像記録→NIH ImageJとRATOC TRI-SRF2ソフトウェアによる画像統合処理)を用いて異なる免疫表現型を示す腫瘍実質、血管内皮、リンパ管内皮、間葉系細胞、増殖細胞核を分画することができた。当初計画に加えて、ニューロフィラメント(NFP)抗体による神経線維の同時検出条件も確定でき、舌組織における癌細胞の神経浸潤が追跡できるようになった。このほか、癌細胞株間での差異は認めていないが癌実質におけるリンパ管誘導因子VEGFCやその受容体VEGFR3の微弱な発現、また、腫瘍内間質のリンパ管内皮では増殖活性の指標となるKi67(TEC3)陽性細胞核や新生誘導されたリンパ管内皮の指標として転写因子Prox1, COUP-TFII核内共局在の検出も実現できている。形態計測においては、CK陽性情報の画像演算に基づいて腫瘍内間質領域と周囲間質領域とを分画することができた。同様の領域設定によって、さらに複数の組織要素(例えば低酸素領域の設定など)を組み込んだ癌微小環境の定義ができると考えている。本年度ではさらに、連続薄切標本(4μm厚、200枚)の多重標識・3次元組織構築により癌胞巣とその内外間質空間を走行する脈管を捉えることも達成した。特に、腫瘍―間質境界を解析するうえでは、従来の試料作製(割断位置と方向)を工夫することにより、組織領域を規格化したうえでの要素定量や試料比較が可能と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の舌癌構造解析所見から、癌細胞株毎のリンパ管内皮誘導機序の相違が想定された。この仮説を検証する目的で、本年度に得られた組織切片を使用して腫瘍分泌シグナルについて検索する。候補分子として、癌細胞のリンパ管浸潤(向リンパ走化性)に働くケモカイン回路(乳癌転移で主軸として働くCXCR4/CXCL12回路、頭頸部癌細胞の浸潤能を高めるCCR4/CCL22回路など)に注目して癌微小環境における局在、特にリンパ管との位置関係を明らかにする。また、新生誘導されたリンパ管内皮の性質は、相互作用する癌細胞により異なることが指摘されている。この事象の検証に向けては、担癌マウスの腫瘍塊(移植後約2週間)からのリンパ管内皮細胞の抽出(摘出腫瘍を酵素処理にて細胞剥離・懸濁し、抗Lyve1抗体および抗体結合磁性ビーズと磁気カラムで結合細胞を回収)、得られた細胞試料は分化マーカー発現の定量PCRおよび免疫組織化学で解析する。詳細な分子ネットワークを知る目的で、分離した腫瘍リンパ管内皮細胞および健常舌組織由来のリンパ管内皮細胞を対象としてマイクロアレイ解析も計画する。また、癌原発病巣が転移シグナルを発信している可能性(前転移ニッチの成立)に着目し、移植部位の脈管内に侵襲した癌細胞(および上皮形質を示さない細胞の免疫表現型)を組織観察するとともに、循環系に放出されたシグナル分子の輸送担体として担癌マウスの血清・エクソソーム画分の分子群(タンパク、ノンコーディングRNA分子)を分析する。この目的では、癌移植マウス心部からシリンジで循環血液を採取し、遠心分離(1,600xg)で血球成分を除去したのち、血清用精製カラムでRNA抽出する。エクソソームの分画では、血清試料を超遠心(100,000xg)した沈殿を回収し、酸性フェノール試薬でRNA抽出する。実施に際して、癌細胞株の同所移植試料とともに健常舌組織を比較対象として準備する。
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Research Products
(11 results)
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[Journal Article] Generation of a mouse model with down-regulated U50 snoRNA (SNORD50) expression and its organ-specific phenotypic modulation2013
Author(s)
Soeno Y, Fujita K, Kudo T, Asagiri M, Kakuta S, Taya Y, Shimazu Y, Sato K, Tanaka-Fujita R, Kubo S, Iwakura Y, Nakamura Y, Mori S, and Aoba T
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Journal Title
PLoS ONE
Volume: 8
Pages: e72105
DOI
Peer Reviewed
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