2013 Fiscal Year Research-status Report
歯周病とメタボリックシンドロームの発症・増悪との関連性を解明する総合的研究
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25462942
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Research Institution | The Lion Foundation for Dental Health |
Principal Investigator |
森田 十誉子 公益財団法人ライオン歯科衛生研究所(研究部研究開発室), その他部局等, 主任研究員 (00597247)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 孝典 公益財団法人ライオン歯科衛生研究所(研究部研究開発室), その他部局等, その他 (40597291)
川戸 貴行 日本大学, 歯学部, 准教授 (50386075)
前野 正夫 日本大学, 歯学部, 教授 (60147618)
山崎 洋治 公益財団法人ライオン歯科衛生研究所(研究部研究開発室), その他部局等, 研究員 (60597235)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | メタボリックシンドローム / 歯周病 / 歯周病菌 / 脂肪細胞 / 炎症性サイトカイン |
Research Abstract |
歯周病とメタボ発症・増悪との因果関係を明確にするために、疫学研究、動物モデル研究、細胞生物学研究からなる総合的研究を企図し、初年度は下記の成果を得た。 ①疫学研究:歯周病と肝機能マーカーとの関連性を職域成人(1,510名)を対象に横断的に解析したところ、飲酒習慣のない人でも歯周病とγ-グルタミルトランスフェラーゼとの関連性が認められ、歯周病と非アルコール性肝疾患との関連性が示唆された。また、2003~2012年に健康診断 (医科、歯科) を毎年受診した1,119名の中でメタボ指標が全て陰性の592名を対象にした9年間のコホート研究で、歯周病とメタボリックシンドローム指標の陽性化との間には、有意な関連性が認められた。介入研究では、メタボまたはその予備群に該当し、かつ慢性歯周炎に罹患している成人を対象にして、積極的な歯科保健の介入試験を2年間の計画で開始し、最初の1年間で、23名が終了した。 ②動物モデル研究:メタボ自然発症ラットを歯周病発症群と対照群に分け、歯周病発症群に対して上顎第1大臼歯への絹糸の結紮と、Porphyromonas gingivalis の口腔内への接種を行った。その結果、歯周病発症群に歯槽骨吸収が確認された。一方、内臓脂肪の蓄積レベルと収縮期血圧は、歯周病発症群において高い傾向が認められたが、有意差は認められなかった。 ③細胞生物学研究:マウス由来脂肪細胞前駆細胞である3T3-L1細胞を、歯周病罹患者の血清中において高レベルに認められるC反応性タンパク (CRP) で刺激して、脂肪組織の拡大形成因子であるmatrix metalloproteinases (MMPs)とその内因性阻害剤であるtissue inhibitor of metalloproteinase (TIMPs) の遺伝子発現を調べた。その結果、3T3-L1細胞のMMP-1,-2,-3,-9,-13および-14,ならびにTIMP-1の遺伝子発現の増加が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の疫学研究の目的であった2003年から2012年の医科と歯科の健診結果を連結させたデータベースを作成し、横断研究およびコホート研究による解析を実施できた。横断研究では、2012年の医科歯科健診受診者1,510名を用いて、メタボ研究の一環として、歯周病と肝機能マーカーとの関連性を解析した。コホート研究では、2003年から2012年に毎年、医科と歯科の健診を継続的に受診した者1,119名のデータベースを作成し、歯周ポケット保有とメタボ発症との関連性を多重ロジスティック回帰分析で解析した。長期の観察研究では、ベースラインでの曝露要因(歯周病の状態、健康行動)が継続する確証はないという課題が発生したが、期間中の曝露の変化を考慮した累積の考え方を取り入れることにより、歯周病の累積状態とメタボリックシンドローム指標の陽性化との関連性の解析を可能なものとした。介入研究では、1年目として、23名の介入試験を終了した。2年目としては、9名について実施中である。 動物モデル研究では、メタボリックシンドローム自然発症ラットへの実験的歯周病の発症法が確立できた。一方で、内臓脂肪の蓄積と血圧には、歯周病の発症の影響が認められなかったが、2年目の研究で血清サンプルを分析するなど、今後の方向性に関して検討をすでに行っている。また、細胞生物学研究では、CRP刺激が成熟脂肪細胞の複数のMMP遺伝子発現を誘導した結果が得られている。脂肪組織の拡大・増殖には、脂肪組織中の細胞外マトリックスタンパクの分解が重要であると考えられている。すなわち、本研究結果は、CRPが脂肪組織の複数のMMPの発現を誘導して、脂肪組織の拡大を誘引する可能性を示しており、歯周病がメタボリックシンドローム発症に影響するメカニズムの解明の一助となるデータが得られたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
疫学研究としては、歯周病と非アルコール性肝疾患との関連性を更に明確にするために、歯周病と脂肪肝(腹部超音波検査による判定)との関連性を横断研究として解析する。コホート研究としては、歯周ポケットとメタボ発症との関連性についてさらに詳細に解析を進めると共に、歯周病予防に効果的である口腔清掃習慣とメタボ発症との関連性をコホート研究として解析する。これらの結果を踏まえて、口腔清掃習慣、歯周病とメタボ発症および脂肪肝発症との関連性についてのデータをまとめる。介入研究としては、メタボリックシンドロームに該当し、かつ慢性歯周炎に罹患している者に対して、引き続き介入試験を継続し、本年度末までに33名(プロケア8名、セルフケア支援25名)の介入を終了する。更に、介入後の医科歯科データを結合し、介入群、非介入群の比較を行い、積極的な歯科保健の介入による歯周病改善がメタボリックシンドロームの改善に繋がるか否かを検証する。 動物モデル研究においては、本研究における実験的な歯周病の発症が、全身に影響し得るレベルの炎症であったかを血清サンプルで分析し、動物試験の各種条件を再検討した上で、2年目の動物試験を実施する。細胞生物学研究では、CRP刺激による脂肪細胞のMMPとTIMPの発現増加に関与する細胞内シグナル伝達機構を検討する。また,各種炎症性サイトカインが脂肪細胞のMMPとTIMP 発現に及ぼす影響についても検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
疫学研究では、コホート研究、介入研究を継続して行い、研究成果の情報発信としては、海外の国際歯科研究学会での発表、論文の投稿を予定しているため、旅費、論文投稿費用が必要である。動物モデル研究においては、自然発症ラットの血清成分分析および正常ラットでのメタボ発症への影響について各種条件で検討するための物品費用、細胞生物学研究では、脂肪細胞の培養およびシグナル検索を行うための試薬購入費用が必要である。 疫学研究、動物モデル研究、細胞生物学研究を継続して行う。そのための費用として、交付内定額と残額をあわせた180万円のうち、旅費60万円、物品費100万円、その他20万円を予定している。
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Research Products
(2 results)