2014 Fiscal Year Research-status Report
STD-NMR法による接着性モノマーとコラーゲンとの相互作用の分子レベル解析
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25462951
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
平石 典子 東京医科歯科大学, 国際交流センター, 助教 (20567747)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 歯科接着性モノマー / NMR / 疎水性結合 / コラーゲン / 象牙質 / HEMA |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで、リン酸エステル系またはカルボン酸系の接着性機能性モノマーについて、STD 測定し比較検討した結果、リン酸エステル系モノマーのみアテロコラーゲンとの相互作用が現れた。研究ではリン酸エステル系の代表としてMDP(10-Methacryloyloxydecyl dihydrogen phosphate)と使用したが、MDPの疎水基の脂肪族に相互作用が帰属していたため、疎水結合がMDPとアテロコラーゲンに働いているものと推測した。機能性モノマーは、歯科接着剤としては、より親水性の高い溶媒様モノマーのHEMA (2‐hydroxyethyl methacrylate)が数十%配合されており、MDPの疎水性が HEMA存在下ではマスキングされることについて、再検討、精査を行った。 1D 1H NMR spectrumに注目し、MDP及びHEMA単独、そして、HEMA が共存した場合のMDPについて比較した。結果、HEMA共存下ではMDPの1D 1H NMR spectrumに変化がみられ、これはMDPの周りにHEMAが会合しているものと考えられた。これらの結果は、Influence of HEMA on Monomer-collagen Interaction Studied by NMRとして3月に行われた国際歯科研究学会IADR/AADR/CADR General Session & Exhibition - Boston, Massachusettsにて、口頭発表を行った。HEMAに関する論文発表は査読後、追加実験を行い、HEMAは機能性モノマーの歯質への浸透性を促進するものではないとの考察を発表した。NMR溶液試料のpH条件を中性に調整を試みたが、アテロコラーゲンの溶解度が低下する為か、均一なNMR試料が作れず再度プロトコールを見直す必要があった。これまでの、海外学会発表、論文発表後、たくさんの反響があったが、総合すると、やはりアテロコラーゲンが本来の歯質コラーゲン”線維“とは形態が違うため、考察に注意が必要との意見であった。そこで、液体NMRでは限界があるため、不溶性の象牙質コラーゲンを用いて、試験的に固体NMRによるコラーゲンのスペクトラムを測定する予備実験まで行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本来は、基礎実験で示唆された疎水性相互作用を確認するため、STDスペクトルが確認された疎水性MDPモノマーを、アセトン(極性非プロトン性溶媒)、エタノール(極性プロトン性溶媒)にて配合し、リガンド試料とし、アテロコラーゲン溶液で、前述同様STD NMR測定を実施し、STDスペクトルへの溶媒の影響を比較検討する予定であった。これに関し、溶媒を変えたことにより、溶液のpH条件を変化させた場合にアテロコラーゲンの溶解性に変化が現れた事象と同様の問題点が生じ、単純にこれまでに行った分析結果と比較検討できない恐れが出た。今年度は、国際学会、論文発表に対する反響をいただき、国内外の研究者から意見を頂くことが出来、アテロコラーゲンを使用することへの問題点、またその改善点に重心を置くことになった。これまで、液体NMRに代わり 固体NMRで、歯質コラーゲンのスペクトラムを得るところまで予備実験が終了した。これら分析した結果、すでに論文発表されている、ヒト骨由来のコラーゲンのスペクトラムとほぼ一致し、測定条件の確立を進めている。今後はより確立された実験系また考察が期待されるため、おおむね順調とを評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の実験系は液体NMRから、固体NMRに分析方法の移行が大きな課題になってくる。試料回転速度を極限まで高めることにより、高磁場装置における固体NMR測定や微量試料の高感度測定、1Hの固体高分解能測定、そして1Hの定量測定、1H観測二次元測定も可能なら試みたい。これまでの歯質コラーゲンのスペクトラムを得た予備実験を元に、更に分析条件の、最適化を試みたい。固体NMRの試料準備としては、ウシ、ヒト歯質象牙質を粉砕し、脱灰後、コラーゲンを取り出す予定である。凍結乾燥は行わず、MDP溶液, HEMA溶液、その他エタノールなどの溶媒を37度で作用させ、固体試料とする。固体NMRでも試料中は水分が含まれているため、STD NMR測定の結果と比較し、接着性モノマーとコラーゲンの疎水性相互作用を再考察することは大変興味深い。実際、象牙質接着界面のコラーゲン周囲には水が存在するため、更に接着レジンの溶媒として含まれている水、揮発性溶媒のエタノールの、接着性モノマーとコラーゲンの疎水性相互作用への影響を検討する。研究成果の統括発表は国際論文、国内外学術大会にて行う予定である。
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Causes of Carryover |
溶媒状態のコラーゲンの特徴的な三重らせん構造への影響を分析する目的で、三重らせん構造が壊れ、ランダムコイル状に変性する状態を円二色性測定法にて行う予定であったが、不溶性のコラーゲンの状態を分析する方針になり、円二色性測定法の受託予定料金が発生しなくなったため。また3月に発表参加した、国際学会の旅費が、カート決済の明細提出が4月以降になり、全費用が26年度に未支払いのため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後は固体状の不溶性のコラーゲン線維を試料として、固体NMRの分析を予定している。高性能固体NMRの分析は、外部施設で行う予定で、これに関する受託料金として確保したい。また3月に発表参加した、国際学会の旅費が、カート決済の明細提出が4月以降になり、全費用が27年度に支払われる予定である。
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