2013 Fiscal Year Research-status Report
歯内関連疾患の適切な診断および治療法の確立を目指した疼痛異常の発症機構解明
Project/Area Number |
25462968
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
清水 康平 日本大学, 歯学部, 助教 (10508609)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
篠田 雅路 日本大学, 歯学部, 准教授 (20362238)
本田 訓也 日本大学, 歯学部, ポスト・ドクトラル・フェロー (20548945)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 関連痛 / 異所性疼痛 / 歯原性歯痛 / 非歯原性歯痛 / 異常疼痛 / 痛覚過敏 / pERK / TLR4 |
Research Abstract |
平成25年度は以下の研究計画に基づき良好な研究結果を得た。①ラット歯髄炎あるいは慢性根尖性歯周炎モデルの作製:これまでの報告に従う。②歯髄炎あるいは根尖性歯周炎を発症したラットにおいて、三叉神経脊髄路核内でpERK陽性細胞およびFos陽性細胞の異なった発現様式が確認された。また、歯髄炎を発症したラットにおいて、三叉神経節内でのTLR4の合成促進、および歯髄から三叉神経節へ軸索輸送されたHsp70が確認された。③歯髄炎あるいは根尖性歯周炎を発症したラットにおいて、MEK阻害薬であるPD98059を髄腔内投与すると、三叉神経脊髄路核内でのpERK陽性細胞発現数の有意な減少が確認された。④歯髄炎あるい根尖性歯周炎発症後、咬筋カプサイシン投与後の顎二腹筋における筋放電量は有意に増加した。また同モデルラットにおける筋放電量は、PD98059髄腔内投与にて有意に減少した。⑤歯髄炎を発症したラットにおいて、三叉神経節内へのTLR4拮抗薬投与は、機械あるいは熱刺激により誘発される逃避行動閾値減少を有意に抑制した。 上記①から⑤で得られた結果は申請書に記した仮説に基づいており、歯内関連疾患発症時に認められる異所性異常疼痛の発症機構には、MAP kinaseの一つであるpERKの発現増加が強く関与していることが示された。また、とくに歯髄炎発症時には、三叉神経節内にてHsp70-TLR4シグナリングを介し、舌痛覚過敏が誘導されていることが示された。 これら一連の研究活動から、平成25年度において海外学術論文1本の研究業績を報告することができた。今後はこれまでに得られた研究成果をもとに、さらなる研究計画を遂行し、日常の歯科臨床の場でしばしば歯科医を悩ませ、また「誤診」「誤治療」の原因となる可能性の強い「異所性疼痛発症機構」について解明を続ける。現在、これらの研究成果をもとに、臨床診断に関与した教科書を執筆中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究分担者との共同実験により平成25年度予定分のみならず、平成26年度分の一部まで研究計画を遂行することができたため、上記区分とした。この達成理由として綿密な研究計画立案、定期的なグループディスカッションおよび過去の文献等を参考にし、十分に構築された仮説に基づいて研究が遂行できたためと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、歯髄炎あるいは根尖性歯周炎発症時における三叉神経節および三叉神経脊髄路核の細胞内シグナル伝達の検索をおこなう。具体的には、炎症した歯髄組織あるいは根尖歯周組織内にていかなる分子あるいは受容体が関与し、痛覚過敏発症メカニズムに関与しているか検索する。本研究計画では、Toll-like Receptor, Heat shock protein, 炎症性サイトカイン,P2X受容体,ATP,および MAP kinase間で、いかなるシグナル伝達が痛覚過敏発症に関与しているか検索をおこなう。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度に使用予定であったラットや、抗体および試薬等、実験の遂行上必要と考えていたものの量が予想より少ない量で結果を出すことができ、購入予定であったものを購入せずに済んだためと考えられる。また予定していた海外研究発表も都合により当該年度は行かなかったためと考えられる。 更なる研究計画遂行、即ち当該年度に結果を得たさらに別のシグナル伝達経路を検索するため、同じくラットや、抗体および試薬等に用いる予定である。
|