2014 Fiscal Year Research-status Report
光音響顕微鏡を利用した非侵襲型in vivo硬組織イメージング装置の開発
Project/Area Number |
25462982
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
羽鳥 弘毅 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (40372320)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西條 芳文 東北大学, 医工学研究科, 教授 (00292277)
佐々木 啓一 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (30178644)
萩原 嘉廣 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90436139)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 光音響顕微鏡 / 光音響効果 / 硬組織イメージング / 片側咬合支持 / 下顎頭軟骨 / 線維層 / 軟骨下骨 / ラット |
Outline of Annual Research Achievements |
歯科臨床において,欠損部に補綴装置を装着せず長期間わたって生活を営む患者に遭遇することがある.いわゆる”片咬み”の状態であるが,この”片咬み”即ち片側性咬合支持が下顎頭軟骨に与える影響について,光音響顕微鏡を用いて検討を加えた. 本実験には生後16週齢Wistar系雄性および雌性ラット48匹を用いた.生後16週齢時に上顎右側第1・2・3臼歯を抜歯し,片側咬合支持モデルとした.抜歯より1,2および4週後にラットより下顎骨を摘出し,固定後に光音響顕微鏡にて下顎頭軟骨を観察した.光音響顕微鏡の撮影条件は,出力283μJ,波長532nm,パルス幅1nsとした. 光音響顕微鏡により,抜歯後4週の群において,両側下顎頭の軟骨下骨下層から海綿骨に至るまでの領域を可視化した.光音響強度は咬合側に比べ抜歯側で高かった.超音波顕微鏡観察により,抜歯後4週の群において,両側下顎頭の線維層および軟骨下骨の領域のみを可視化した.超音波強度は線維層において咬合側に比べ抜歯側で弱かった.また,軟骨下骨からの超音波強度は同程度であった.雄および雌において同様の傾向が観察された. 抜歯後4週間の片側咬合支持により抜歯側下顎頭表層に過重負担がかかり,線維層の変性・菲薄化をきたすことにより下顎頭軟骨の炎症性病変を誘発したと考えられる.さらに,この炎症性変化が軟骨下骨内での血管新生・形成を導き,咬合側に比べ高い光音響信号が検出されたと考えられる.以上より,光音響顕微鏡は片側咬合支持の下顎頭において,線維層および軟骨下骨の病理変化を正確に可視化することにより,顎関節症をはじめ関節疾患を診査・診断しうるイメージング装置となり得ることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究実施計画では,正常ラットを用いたin vivoでの光音響イメージング撮像であった.ラットに吸入麻酔により全身麻酔を施したのち,in vivoでの硬組織撮像に臨んだが,撮像時間が長時間となりラットへ与える精神的・肉体的苦痛を考慮し,安楽死後に観察対象臓器を摘出しex vivoでの光音響イメージング撮像へと研究実施計画を変更した.また,正常ラットおよび片側性咬合支持ラットの2群を設定することにより,顎骨の変化を多面的に観察した. 光音響イメージングでは,下顎頭軟骨下骨および海綿骨の血管もしくは血球分布を可視化することに成功した.このことは下顎頭軟骨は咬合支持を喪失することによって,抜歯側に炎症性病変由来の血管新生・形成を引き起こしたことが推察される.関節リウマチにおいても同様の変化が観察されることから,光音響イメージング装置は顎関節症のみならず関節リウマチの診査・診断装置となり得ることが示唆された. またこれまでの研究により,超音波顕微鏡では心筋梗塞における心筋組織内のコラーゲン線維の変性を描出することが明らかにされている.本実験では,併せて撮影された超音波イメージングより,抜歯側下顎頭軟骨線維層の菲薄化が可視化された.線維層は1型コラーゲンが主成分であることより,超音波イメージングはコラーゲン線維の変性を反映させることにより,線維層での低い超音波信号強度が検出されたと考えられる. 以上の研究結果より,光音響イメージングは「血管分布(赤血球分布)」,「組織弾性(組織硬度)」および「コラーゲン代謝」を可視化しうる有用な画像診断装置となることが示唆された.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は疾患モデルラットを用いることによりex vivoでの光音響イメージング撮像について様々な観点から検討を加える予定である. 1.光音響イメージング撮像では,被験動物として,1型糖尿病ラット(雄性15匹)および骨粗鬆症モデルラット(雌性15匹)を用いる.これら被験動物より対象組織として,上下顎骨,椎骨,股関節(大腿骨を含む),膝関節(脛骨を含む),咬筋,心筋を摘出し各組織に対して光音響イメージングをex vivoにて撮像する.次に超音波イメージング撮像を行う. 2.光音響イメージング像とX線マイクロCT画像ならびに組織像との比較では,被験動物および観察対象組織は上述の実験1と同様である.観察対象組織に対して,本学既設の実験小動物用X線マイクロCT器材を用いて画像撮影を行う.得られたX線マイクロCT画像と実験1.で得られた光音響イメージング像とを比較し,光音響イメージング装置の臨床応用について多角的に検討を加える.また,組織像との比較においては,観察対象組織をホルマリン固定後,パラフィンブロックを作製し薄切を行う.ヘマトキシリン・エオジン染色,エラスチカ・マッソン染色・サフラニンO染色などの一般染色を行い組織学的検討を加える.また,I, II, IIIおよびXII型コラーゲンに対する免疫染色を施し,免疫組織化学的検討を加える.以上より光音響イメージング像と各種染色像とを比較することにより,、光音響イメージング装置の機能的画像診断装置としての可能性を検討する.
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として,「人件費・謝金」の執行不足および「その他」の執行不足が挙げられる.来年度は,研究人員の増加により,効率よく本研究課題の遂行に邁進する所存です.この具体的な方法として,人員を増加することにより,動物実験と画像撮影・画像評価を同時進行で実施していくことを想定している.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
動物実験には常に1名の大学院生を同行させる.また画像撮影・画像評価に対しても各1名ずつの大学院生の協力を得ることにより効率的に実験遂行していく. また研究期間の最終年度を迎えることに際し,論文発表を予定している.その際の投稿料などの支出も想定されることから,効率的かつ適切な研究費の使用が生ずるものと見込んでいる.
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Research Products
(3 results)