既存脈管構築の特徴からみた舌癌深達度とリンパ節転移との関連性についての研究

2013 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 25463122
• Research Institution: Tsurumi University
• Principal Investigator: 佐藤 徹 鶴見大学, 歯学部, 講師 (30170765)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 神谷 洋子 鶴見大学, 歯学部, 助教 (10460213) ; 寺田 知加 鶴見大学, 歯学部, 学部助手 (40460216) ; 里村 一人 鶴見大学, 歯学部, 教授 (80243715) ; 片岡 志基 鶴見大学, 歯学部, 臨床助手 (80624676)
• Project Period (FY): 2013-04-01 – 2016-03-31
• Keywords: 舌癌 / リンパ節転移 / 癌深達度 / リンパ管 / 血管 / D2-40 / CD34 / VEGF

Research Abstract

口腔癌のTNM分類におけるTカテゴリーは腫瘍の最大径を基準に定められているが、口腔と連続する消化管である食道、胃、大腸においては癌の深達度を基準に分類されており、予後との明瞭な相関を示している。口腔領域でもこれらと同様の基準の下に診断することで、より予後と結びついた評価ができる可能性がある。口腔は部位により深部構造が異なり、一律に深達度をＴカテゴリーの基準にすることには様々な課題があるが、舌は筋の塊からなる比較的均質な構造であり、深達度分類の適応が妥当であるかを検討するにはふさわしい臓器である。そこで本研究では予後を左右する転移と関係すると思われる舌のリンパ管と血管構築に着目して、脈管構築からみた深達度分類の妥当性とその意義を探ることを目的とし、血管およびリンパ管の分布状態について免疫組織化学的検討を行っている。現在まで非担癌正常舌の①上皮下表層1/2、②上皮下深層1/2、③筋層表層（上皮直下から約2mmの深さ）、④筋層深層（上皮直下から約10mmの深さ）の４層において、リンパ管同定のため抗D2-40マウスモノクローナル抗体、血管同定のため抗CD31マウスモノクローナル抗体を一次抗体として免疫組織化学的染色を行い、画像解析ソフトを用いて計測している。今後は舌扁平上皮癌の手術切除標本を用いて免疫組織化学的染色を行い、非担癌正常舌と同様にリンパ管と血管の分布状態を検討し、異同を検討する。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

本研究では非担癌正常舌として解剖実習用遺体舌を用いているが、舌深部までのホルマリン固定の状態が個体差が強く、免疫組織化学的染色のために適切な標本をそろえるために時間を有した。さらに、現在、D2-40抗体を用いたリンパ管分布の検討は完了しているが、血管分布の検討は免疫組織化学的染色に使用する抗体をCD31からより一般性の高いCD34に変更したため、安定した染色結果の得られる市販抗体の選択およびその至適濃度の検討に時間を有した。また、抗VEGFR-1抗体とVEGFR-3抗体の選択入手に手間取っているために、予定していた達成度からはやや遅れている。

Strategy for Future Research Activity

現在計測中の非担癌正常舌の血管およびリンパ管分布状態の画像解析を進めるとともに、舌扁平上皮癌 T1 及び T2 症例をリンパ節転移陽性群と転移陰性群に分け、それらの手術切除標本から、腫瘍最深達部を通る割面と腫瘍から最も離れた切除断端割面を選択し、切除断端部においては、D2-40、CD34、 VEGFR-1,3の、腫瘍最深達部においてはこれらに加えてVEGF-A,B,C,Dの免疫組織化学的染色を行う。これらの分布状態の画像解析結果と前年度に検討した非担癌正常舌での分布状態との異同を検討し、腫瘍がそれから離れた断端部（正常部）のリンパ管や血管分布、及びそれらに対する増殖因子レセプターに影響を及ぼしているのか否か、及ぼしているのならそれは表面からの深さの違いやリンパ節転移陽性群と陰性群で差があるかを検討する。
さらに、舌扁平上皮癌T1及びT2症例の厚切りパラフィン包埋切片から、レーザーマイクロダイセクション法を用いて腫瘍胞巣を切り出し、VEGF-A,B,C,D のm-RNA過剰発現の有無を定量的RT-PCRにて検討する。この結果と非担癌正常舌の免疫組織化学的検討との比較検討により、腫瘍によるVEGF-A,B,C,D の過剰発現があれば、部位や深さの違いによる形態計測での特徴との整合性を検討し、どの様な部位にリンパ管や血管増殖をおこさせるのか、舌癌の深達度とリンパ節転移との関連性を明らかにしていく。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

前年度の大量使用予定のCD34抗体の使用量が未だ少なく、適切な抗VEGFR-1抗体及び抗VEGFR-3抗体が未入手のため、前年度からの繰越金が生じた。
次年度には、前記理由により未施行となった脈管増殖因子受容体関連の抗体購入に繰越金を充当する。また、研究計画に基づき、舌扁平上皮癌の手術切除標本ついて、前年度に非担癌正常舌について行ったのと同様の免疫組織化学的染色を行っていく予定で、さらに大量の抗体と試薬類が必要でその購入に物品費を使用し、成果発表のために旅費を使用する予定である。さらに免疫組織化学的染色結果の画像解析を行うにあたり、これらの繰越金の一部を人件費としても有効活用し、遅れている画像解析を押し進めることにより、先行している結果とともに、本研究を順調に進展させていく予定である。