2014 Fiscal Year Research-status Report
空間的ドラッグデリバリーシステムによる成長因子複合移植法の開発
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25463211
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
齋藤 恵美子 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (80374528)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 茂 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (70241338)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 温度感応性ポリマー / コラーゲン / ハニカム構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯周組織の再生に有効な成長因子は、一般に再生反応の特定の時期に作用するので、もし組織形成に合わせて最も有効な成長因子を次々と作用させることが出来れば、従来の方法よりもより強力に再生反応を促進できるのではないかと発案し、先ず有効な作用期間を過ぎた成長因子を除去する方法を考案した。次に一般に成長因子は標的細胞が多いほど大きな効果を期待できるので、再生に適した細胞を再生スペースにできるだけ多く誘導する方法を考案した。今年度は成長因子を配合する以下の2種類の新規バイオマテリアルの検証を行った。 1.温度感応性ポリマーの有効性の検証:温度感応性ポリマーは温度によってゾル・ゲル化する。この温度感応性ポリマーは室温ではゲル状で操作性が良いが、もし生体内でゾル化してスペースを確保し、任意にゲル化し体外へ取り出すことができれば、成長因子の作用期間を調節できる有効性の高い担体に成り得るのではないかと考え、ラットの背部皮下へBMP-2を配合して移植を行った。組織学的観察の結果、移植材周辺に硬組織を形成し、担体としての有効性を示した。さらに摘出した組織からわずかな流水でゲル化した温度感応性ポリマーを取り除くことが可能なことを確認した。 2.ハニカム構造の細胞誘導性の検証:内径が300μmと一定なトンネル構造は、内腔で細胞増殖を促進する。このハニカム構造が、ハニカムの入口付近の組織由来の細胞を、選択的にハニカムの内部あるいは出口まで遊走増殖させることが可能であれば、成長因子の標的細胞を選択的に供給する新規バイオマテリアルになるのではないかと考え、ビーグル犬に水平性骨欠損を作成して、ハニカム構造のコラーゲンを移植した。組織学的観察および計測の結果、成長因子を使っていないにも関わらず、本来再生しないはずの新生セメント質の形成量、新生骨形成量が有意に多く認められたことから、ハニカム構造の組織誘導性を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、BMPとFGFあるいは EMDとを組み合わせて移植する治療法の開発に取り組む研究を行っている。申請期間では1.成長因子の組み合わせ、2.組み合わせる方法、3.成長因子を配合するバイオマテリアルの検証を予定している。 1.成長因子の組み合わせ、2. 組み合わせる方法については、昨年度までに、BMPとFGF、BMPとEMDの組み合わせはいずれも有効であること、各成長因子は混合せずに層状に移植する方法として考案したdouble layer constitute method(DL法)が有効であることを解明した。3.バイオマテリアルについては、内径300μmのトンネル構造は、そのトンネルの入口付近の組織が内部へ増殖するとともに、それ以外の周囲組織がトンネルの外壁に阻まれ内部へ侵入しないことを昨年度までに解明した。この結果をもとに、本年度は歯周組織再生に有効な歯根膜と骨組織近傍にトンネルの入口を配列して、歯肉の侵入を外壁で排除すれば、欠損部(再生スペース)に有効な細胞を集積できるのではないかと考え、ハニカム構造に着目し検証を行った。欠損底部の既存骨、歯根膜からハニカム構造に沿って細胞と血管が歯冠側方向へ増殖して新生セメント質および新生骨の形成が促進される可能性が示唆された。またFGF,EMDは細胞増殖と分化に、BMPは主に細胞分化に作用することを考慮すると、各成長因子の作用期間をコントロールする方法を構築することが出来れば、組織修復再生反応を現在の方法よりも強力に促進できるのではないかと発案した。本年度は先ず有効な作用期間を過ぎた成長因子を除去する方法を考案し、温度感応性ポリマーに着目した。温度感応性ポリマーは室温ではゲル状で操作性が良く、生体内でゾル化してスペースを確保するとともに成長因子の担体としても有効であり、さらに、任意にゲル化し体外へ取り出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究結果をもとに、今後は歯周組織の再生に有用な複数の成長因子を用いて、それぞれが有効な作用空間と作用期間を解明する予定とする。次年度は、①成長因子を配合するバイオマテリアルについて、組織再生に有効な構造の探求と組織形成のメカニズムを解明する、さらに②ビーグル犬に水平性骨欠損モデルを作製して、考案した歯周組織再生療法の有効性を検索する。 実験① ラットの背部皮下を用いた検索:長いトンネル構造を付与したハニカムコラーゲンおよび、スポンジ状コラーゲンを、ラットの背部皮下に移植を行う。さらに成長因子をコラーゲンに配合して移植を行う。その後、治癒初期(1、3、5、7日)におけるコラーゲン内への血管侵入と組織形成について病理組織学的に検索し、トンネル構造による治癒のメカニズムについて解明を行う。 実験② ビーグル犬の水平性骨欠損部での検索:前臼歯部に4mmの水平性骨欠損を作成して、ハニカム型コラーゲン、スポンジ状コラーゲンにBMPとFGFを配合して申請者らが考案したdouble layer constitute method(DL法)を用いて移植する。観察期間を12週として、考案し再生療法の有効性について、病理組織学的に検索する。 実験は本年度と同様に大学院生らと伴に行い、進行状況などについては共同研究者らと十分に協議しながら行う。上記の実験から得られた研究結果は、学会発表および学術雑誌などへ発表を行う予定。
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Causes of Carryover |
論文投稿等に使用する予定であったが、投稿が遅れているために未使用額が生じた
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
未使用額は、遅れている論文の投稿の支払いに充てる。
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