2014 Fiscal Year Research-status Report
IL-10応答を中心とした歯周病原細菌感染に対する慢性炎症成立機構の基盤解明
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25463216
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
中島 貴子 新潟大学, 医歯学系, 講師 (40303143)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
多部田 康一 新潟大学, 医歯学系, 助教 (20401763)
伊藤 晴江 新潟大学, 医歯学系, 助教 (30397145)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | IL-10 / 歯周炎 / マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
平成25年度後半に、当初計画したP.gingivalis口腔感染によるマウス歯周炎モデルよりもより強い歯肉の炎症を惹起することのできるリガチャーモデルを確立した。リガチャーモデルとは、歯の周囲に絹糸を結紮して細菌性プラークの蓄積と糸による機械的傷害刺激によって歯肉の炎症と炎症性歯槽骨吸収を惹起させるマウスモデルである。平成26年度は、このモデルにおいて歯肉中のIL-10産生は炎症の増悪とともに上昇し、リガチャー撤去後の炎症消退期にもそのレベルが維持されること、炎症性歯槽骨吸収が観察されるまでには最短3日間のリガチャー期間が必要であることを決定した。 IL-10が炎症性骨吸収の進行期に抑制作用を発揮するかを調べる目的で、リガチャーと平行してIL-10の歯肉局所投与ならびに腹腔から全身投与を行った。歯肉投与群ではマウス第二臼歯口蓋側歯肉に、腹腔投与群では腹腔から、IL-10をリガチャー開始時(0日目)と2日目に注入した。3日目にマウスを安楽死させ、歯肉の炎症性サイトカイン発現および歯槽骨吸収量を解析した。その結果、歯肉投与群では炎症性サイトカインIL-6とTNF-αのmRNA発現ならびに歯槽骨吸収量のいずれも、コントロールのPBS歯肉注入群と有意差を認めなかった。局所投与自体の効果がないのか、マウス歯肉へのIL-10の注入(注射)がうまくいっていない可能性が考えられた。一方、腹腔投与群では歯槽骨吸収はPBS注入群に比較して抑制される傾向を認めた。しかしながら、歯肉におけるIL-6とTNF-αのmRNA発現はIL-10腹腔投与群でPBS投与群よりも高い傾向にあった。このことは、全身循環性のIL-10は歯肉局所の炎症には有効ではないが、歯槽骨吸収は抑制することを示唆し、歯槽骨吸収が起きる機序は歯肉局所の炎症由来と全身性の炎症由来の2つの経路がある可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒトの系では、ヒト歯周炎歯肉でのIL-10とE4BP4の発現解析は平成25年度に実施済みである。ヒト細胞レベルでのIL-10産生経路の解析は平成25年度に単球細胞株でのIL-10産生を確認したところで中断している。単球以外の細胞、転写因子(E4BP4, STAT3, STAT4)の発現、刺激受容体レセプター(TLR)の遮断、IL-10R発現と炎症性サイトカインの発現抑制の関連についての解析は未実施である。 マウスの系では、P. gingivalis口腔感染による歯肉でのIL-10および炎症性サイトカインの発現は解析済みである。この系では歯肉の炎症が強くないにもかかわらず歯槽骨吸収が起きることから、P. gingivalisを飲み込むことにより全身に軽微な炎症が惹起されてその結果歯槽骨吸収に至る可能性が考えられるため、脾臓、肝臓、腸管、血清での炎症性サイトカインとIL-10発現を現在解析中である。すでに感染実験を終了し、各臓器から抽出したmRNAをcDNAに調整済みである。 P. gingivalis感染によらない歯肉の炎症時すなわちリガチャーモデル(機械的傷害刺激とP. gingivalisではない口腔細菌の感染)における歯肉の炎症性サイトカインとIL-10の発現と歯槽骨吸収の関連は解析済みである。このモデルにおけるIL-10の局所および腹腔投与による歯肉の炎症の抑制、骨吸収の抑制については26年度におおむね解析を終了した。以上より、IL-10には歯槽骨吸収を抑制する効果があること、IL-10の産生源は歯肉局所の細胞ではなく全身性のものであること、全身性に循環するIL-10は歯肉局所の炎症の抑制力が低いこと、歯槽骨吸収の抑制効果は歯肉局所の炎症よりも全身の炎症を抑えることによる可能性が高いということを明らかにできた。計画変更はあるが、順調な進展である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果から、全身循環性のIL-10が歯槽骨吸収の抑制に働く可能性が示唆された。最近、我々の研究グループではP. gingivalis口腔感染マウスにおいて腸内細菌叢が変化し、腸管の透過性が増して全身性に軽微な炎症がおきることを強く示唆する報告を行った。腸管の炎症では、腸炎発症と制御性T細胞(Treg)、IL-10との関係が注目されている。そこで、P. gingivalis口腔感染マウスの系にもどり、腸管と肝臓、脾臓でのIL-10を含む炎症性サイトカインの発現バランスの変化と、Treg浸潤の増減を解析する。 全身性のIL-10が歯肉の炎症には影響を及ぼさず、歯槽骨吸収にのみ影響を及ぼすメカニズムを明らかにするために、歯周組織構成細胞のIL-10に対する感受性をIL-6、TNF-α産生、IL-10発現を指標に解析する。
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Causes of Carryover |
2015年3月の海外出張費が2015年4月になってから精算された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年3月の研究成果発表のための外国出張費。
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Research Products
(16 results)
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[Presentation] P.gingivalis induces systemic diseases via dysbiosis of gut microbiota.2014
Author(s)
Arimatsu K, Domon H, Yamada H, Nakajima M, Miyazawa H, Miyauchi S, Nakajima T, Tabeta K, Yamazaki K
Organizer
92nd General session of the IADR
Place of Presentation
ケープタウンインターナショナルコンベンションセンター、Cape Town, South Africa,
Year and Date
2014-06-25 – 2014-06-28
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