2015 Fiscal Year Annual Research Report
trkBシグナルを介した炎症制御メカニズムの解明と歯周炎治療への展開
Project/Area Number |
25463218
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
武田 克浩 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 助教 (10452591)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴 秀樹 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 教授 (60260668)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 脳由来神経栄養因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳由来神経栄養因子(BDNF)は歯周組織再生促進能を有することがこれまでの研究で明らかにされている。In vivoの研究でBDNF投与群は歯周組織再生過程において、非投与群より炎症性細胞浸潤が軽度であることが示されている。そこで本研究は、BDNFの炎症制御能を検討して以下の結果を得た。1. BDNFはヒト血管内皮細胞(HMVEC)の炎症性サイトカイン(IL-6, IL-8, MCP-1)のmRNA発現に対し、統計学的な有意差はないが、抑制する傾向を示した。一方、BDNFは抗炎症性サイトカイン(IL-4, IL-10)のmRNA発現を促進した。2. BDNF前処理はIL-1β刺激で誘導されたHMVECのIL-6, IL-8および MCP-1のmRNA発現を抑制した。3. IL-1βはHMVECのICAM-1発現を促進したが、BDNFは影響を及ぼさなかった。4. BDNFはIL-1βによって誘導されたHMVECのICAM-1発現を抑制した。5. 好中球様HL-60細胞はBDNF高親和性受容体TrkBを発現していた。6. BDNFは好中球様HL-60細胞のIL-8 mRNA発現を抑制した。さらにBDNF前処理はIL-1βによって誘導された好中球様HL-60細胞のIL-8 mRNA発現を抑制した。7. IL-1β刺激によって促進された好中球様HL-60細胞とHMVECの接着をBDNFは抑制した。 本研究から、BDNFは、IL-1βによって誘導されるHMVECにおける炎症性サイトカイン発現や好中球のHMVECへの接着を制御することが示唆された。近年、再生療法を成功に導く為には、炎症に関係するサイトカインなど多くの分子の制御が必要であることが明らかとなってきた。したがって、BDNFが有する炎症制御能がin vivoにおける速やかな歯周組織再生促進効果の発現に寄与していると推察される。
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