2013 Fiscal Year Research-status Report
Toll様受容体とケモカインに着目した歯槽骨代謝機構の解明
Project/Area Number |
25463232
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中村 公也 北海道大学, 大学病院, 助教 (00261313)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
出山 義昭 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (80271667)
兼平 孝 北海道大学, 大学病院, 講師 (90194935)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 辺縁性歯周炎 / 骨芽細胞 / Toll-like receptor 5 / CX3CL1 |
Research Abstract |
わが国では成人の多くが辺縁性歯周炎に罹患している。辺縁性歯周炎は進行すると歯槽骨の吸収を伴う疾患であり,それゆえ発生予防および進行抑制が重要となる。ケモカインは白血球遊走・活性化作用を有するサイトカインである。歯周疾患は慢性の経過をたどり,歯周組織には白血球の浸潤が認められる。それゆえ,ケモカインが歯周疾患の進行に関与していることが推測される。本研究では,これまではあまり注目されなかったものの歯周疾患の進行とともに増加する細菌であるTreponema denticolaが有するToll-like receptor5(TLR5)リガンドであるFlagellinに着目し,それらが誘導する種々のケモカインと骨芽細胞様MC3T3-E1(E1)細胞との関連を中心に据えた研究計画を設定した。 今年度はこれまでの研究でFlagellinにより誘導することが示されたCCL2(MCP-1),CCL5(RANTES)以外にさらに他のケモカインの誘導が認められるか否かについて検討した。種々のケモカインmRNAのE1細胞における発現をreal-time PCR法にて確認したところ,CXCL12(SDF-1)およびCX3CL1(Fractalkine)mRNAの発現が認められた。さらにFlagellin(100 ng/ml)でE1細胞を1~24時間処理し,これらケモカインの発現に変化がみられるか確認した。その結果,CXCL12mRNAの発現については変化がみられなかったものの,CX3CL1mRNAは,処理後3時間をピークにその発現レベルが誘導され,その濃度依存性も確認された。また,E1細胞におけるCX3CL1の受容体であるCX3CR1mRNAの発現も確認できた。 以上よりCX3CL1が歯周組織破壊を引き起こすサイトカインネットワークにおいて重要な役割を果たしていることが推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究の主目的は,次年度以降の研究において核となりうる未知のケモカインの同定であったが,概要に記載したようにCX3CL1がMC3T3-E1細胞において誘導されることがreal-time PCR法にて示すことが出来た。さらにその受容体もE1細胞に存在することが明らかとなった。 よって,次年度以降はCCL2,CCL5に加えて,このCX3CL1をリガンドとして用いる各種実験が可能となり,今年度の終了時点として本研究はおおむね順調に進展しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,まずTLR5リガンドによるCX3CL1mRNAの発現誘導に関するメカニズムについてToll様受容体リガンドで処理した際に発現・誘導されることが多いNF-kB,MAP kinase等に着目し,western blottingあるいは専用kit等を用いて確認する。また,種々の炎症性サイトカインによりTLR5リガンドによるCX3CL1の発現・誘導に変化がみられるか否かを確認する。 さらに,MC3T3-E1細胞にCX3CL1を作用させて破骨細胞分化因子(RANKL)および破骨細胞形成抑制因子(OPG)の発現をreal-time PCR法あるいはELISA法により検討する。またRANKLあるいはOPGの発現動態に変化が認められた場合,その動態に影響を及ぼす物質が何かを炎症性サイトカイン等に着目して明らかにする。 最終的には上述した研究の結果をまとめ、各種ケモカインが歯周組織で展開されるサイトカインネットワークにおいていかに作用するのかを解析し,歯周疾患の進行を抑制するための具体的な方策を導き出す予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
目的となるケモカインの同定が当初の想定よりスムーズに進行したために,それに伴い物品費(特にreal-time PCR用プライマー)が最初の想定より少額で済んだため。 本年度はTLR5リガンドによるCX3CL1mRNAの発現誘導に関するメカニズムについてNF-kB,MAP kinase等に着目し,その発現動態を確認する予定である。当初はwestern blotting法により検討する予定であったが,予算に余裕が生じたため,これに加えて専用kitを用いる計画に変更した。 さらに,MC3T3-E1細胞にCX3CL1を作用させて破骨細胞分化因子(RANKL)および破骨細胞形成抑制因子(OPG)の発現について検討する予定であるが,それに用いるELISA kitにも充当する予定である。
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