2014 Fiscal Year Research-status Report
硫化水素産生能に着目したアンギノーサスグループレンサ球菌による膿瘍形成機構の解明
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25463257
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Research Institution | Matsumoto Dental University |
Principal Investigator |
吉田 明弘 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (20364151)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福島 秀文 福岡歯科大学, 歯学部, 准教授 (70412624)
自見 英治郎 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (40276598)
藤原 卓 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (00228975)
邵 仁浩 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (10285463)
粟野 秀慈 九州歯科大学, 歯学部, 講師 (20301442)
安細 敏弘 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (80244789)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Streptococcus anginosus / 硫化水素 / L-システイン / 膿瘍 |
Outline of Annual Research Achievements |
Streptococcus anginosusのもつ硫化水素産生酵素はL-システインを基質として硫化水素を産生するが、D-システインでは産生しない。また、本酵素のL-システインを基質とした生成物は硫化水素、ピルビン酸、アンモニアであり、これらの生成物を別々に等モルずつ線維芽細胞に添加したところ、硫化水素を産生する物質を添加したときにのみ用量依存的に細胞死が認められたことから、これまで我々は同細菌の硫化水素による炎症誘発の可能性について解析を行ってきた。今年度はS. anginosusが産生する硫化水素の炎症誘発作用を解析する目的で、①S. anginosus菌液にL-システインを添加したもの、コントロールとして②S. anginosus菌液+D-システイン、③S. anginosus菌液のみの3群を用いてマウス膿瘍形成能を解析したところ、①L-システイン、②D-システインを添加した場合には炎症が起こり、③非添加群では炎症が起こらなかった。①、②の間の炎症誘発能は①L-システインを添加したほうがやや早く炎症が誘発される傾向にあったが、①、②間ではほとんど差異がみられなかった。また、同様の実験をマクロファージの貪食能で解析したところ、マウス膿瘍と同様に①L-システイン、②D-システインを添加した場合には非添加の場合と比べマクロファージ内での生存率が上昇しており、①、②間においてシステインの構造の違いによる生存率の差異は認められなかった。これらのことから、S. anginosusの炎症誘発機構に硫化水素が直接関与しているのではなく、L-システインあるいはD-システインにより誘発される別の起炎物質があることが示唆された。 これまで、S. anginosusの起炎物質の1つとして硫化水素が疑われていたが、それ以外の起炎物質の存在が考えられることから、システインによって発現が誘導されるタンパク質について現在SDS-PAGEおよび二次元電気泳動法にて解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予備実験を行い硫化水素がS. anginosusの最も有力な起炎物質の候補として挙がったため、硫化水素による炎症誘発についての解析を行ってきたが、さらに研究を進めていくとS. anginosusの硫化水素産生酵素の基質でない、D-システインでも炎症が誘発されることが明らかになってきた。これまで、その確認実験を行っていたことと、硫化水素以外の物質に起炎物質があることを結論づけるための実験を行っていたため、当初の計画より遅れている。しかし、これまで本細菌の炎症誘発機構について新たな事実が明らかになったことから、実験系を変更しS. anginosusの新規起炎物質の解明を進めており、その中で炎症の補助的因子としての硫化水素の役割を解明する方向で研究を進めている。このように研究計画を修正しながら、硫化水素の炎症での役割を解明する方向で研究は進んでいる。S. anginosusの産生する硫化水素の役割は当初の仮説とは違うものであることが明らかになっているが、この程度の相違は想定されていたものであり、むしろ本結果は新規起炎物質を探す上で非常に重要なデータとなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
1. グラム陽性菌と陰性菌における硫化水素を介した炎症誘発機構の違い. 今回我々が解析してきたS. anginosusはグラム陽性細菌であり、LPSなどの強力な起炎物質を有しない。これまでの研究から硫化水素がLPSの存在により誘発された炎症の増悪に関与している可能性がある。このことを検証するため、グラム陰性細菌であるEscherichia coliやPorphyromonas gingivalisの硫化水素産生株および非産生株を用いて①マクロファージ貪食能および②マウスにおける炎症誘発能を解析する予定である。その前にこれらの細菌の硫化水素が炎症を惹起することについて、培養細胞の生存率および炎症性サイトカインの量を解析しておく。 2. L-システイン、D-システインを基質としたS. anginosusによる炎症誘発機構の解明. これまでの研究から、S. anginosusから硫化水素を産生しない基質であるD-システインからも炎症が誘発され、起炎物質の関与が疑われている。そこで、このような起炎物質をSDS-PAGEおよび二次元電気泳動法を用いてこれらのアミノ酸を添加時に特異的に発現するタンパク質スポットを解析することにより探索していく。このことから、膿瘍形成細菌として重要視されている同細菌の炎症誘発機構を解明していくことにより、本細菌の病原性を明らかにしていく。
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Research Products
(2 results)