Outline of Annual Research Achievements |
未熟児の嚥下を評価する場合,まず幼児全体の調査が必要となる.幼児の咬合力は年齢とともに増加し, 握力等の全身的な発育との関連が多く報告されているが, 骨格筋量との関連の報告は少ない. 本研究では成人で広く使用されている多周波バイオインピーダンス法(多周波BIA法)を用いて幼児の骨格筋量を測定し, その有用性を検討するとともに, 超音波エコー装置を用いて,咬筋ならびに嚥下関連筋の関連性について調べた. 対象は3歳から6歳の健康幼児79名(平均年齢 5.0±1.1歳)とした. いずれも個性正常咬合であり,咬合に関与する永久歯の萌出は認められなかった. 調査項目は, 性別, 年齢, 身長, 体重, 出生体重,咬合力, 握力, 咬筋(筋厚, 脂肪厚), 下腿後面(筋厚, 脂肪厚), 下腿周囲長, 骨格筋量, 体脂肪量とした. 多周波BIA法の有用性は, 本法により算出された体脂肪量値と, Komiya(2009)が提唱したBMIから導き出す体脂肪量値を比較し検討した. 対象児に未熟児(2500g未満児)は21名いた.多周波BIA法を用いた幼児の体脂肪量は, Komiyaの計算式での算出値と有意に相関していた. 咬合力は, 年齢, 握力,身長と有意に相関していた.また, 舌厚・咬筋厚は増齢での変化は認めなかった. 骨格筋量は年齢, 握力, 下腿後面筋厚と有意に相関していた. 多周波BIA法を用いた幼児の測定方法は有用であることが示唆された. 幼児期において咀嚼筋と四肢筋では骨格筋量との関連に差があることが示唆された. 咬筋と四肢筋では発生由来や神経支配が異なることや, 異なる環境因子が骨格筋量の変化に差をもたらしていると考えられた. また, 咬筋厚は増齢で変化がみられなかったが, 咬合力が増加した要因として, 咬筋の組成の変化が示唆された. また, 先行論文から,咀嚼筋の抗重力制御の役割も咬合力が増加する要因として関連している可能性も示唆された.
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