2013 Fiscal Year Research-status Report
限界集落をモデルとした地域在住高齢者の口腔・認知機能・栄養に関する総合的研究
Project/Area Number |
25463277
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Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
内藤 徹 福岡歯科大学, 歯学部, 教授 (10244782)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内藤 真理子 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10378010)
牧野 路子 福岡歯科大学, 歯学部, 助教 (50550729)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 限界集落 / 口腔保健 / 認知機能 / 低栄養 / ADL / 老年医学 |
Research Abstract |
栄養不良は免疫能低下,骨脆弱性などを招く。その結果,易感染性,転倒・骨折などを引き起こすため,日常生活動作(ADL)やQOLが低下する。高齢者はさまざま要因により低栄養状態に陥りやすい。低栄養のスクリーニングとして血中アルブミン濃度は一般に使用されている。血中アルブミン濃度は口腔関連指標との関係についてほとんど報告されていない。そこで,地域在住の高齢者を対象に栄養状況と口腔関連指標を評価することを目的に,福岡市早良区I地区で調査を行った。I地区は人口の約65%を高齢者が占める。集落に商店はなく,公共交通機関も通っておらず、限界集落に分類される。この地区の高齢者に対する支援策を検討することを目的として,福岡市早良区保健福祉センターと協働で健康実態調査を行ってきた。 I地区の全住民31名に対して,口腔内所見(現在歯数,アイヒナー分類,義歯の使用状況),口腔関連QOL(General Oral Health Assessment Index :GOHAI),特定健診項目(血中アルブミン濃度),食物摂取頻度調査,既往歴聴取の5項目について調査を行った。 平成24年度の調査参加者は12名(男性6名,女性6名),平均年齢は74.6±10.9歳であった。全身所見は比較的良好であった。う歯や欠損歯などの問題はしばしば見られ、口腔所見はほぼ全員に歯科的介入を要する状況であった。GOHAI得点の平均は54.3±5.45,血中アルブミン濃度は4.03±0.25(g/dl)であった。1日平均推定カロリーは理想カロリーを満たしていたが、主食以外の平均推定充足率は理想充足率をいずれも下回っていた。現在歯数は平均10.0±11.3本であった。 高齢者にとって栄養はADLやQOLの維持に大きく関与するので支援が必要である。今後健康状態の見守りを継続し,行政と協働で支援策の検討を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
限界集落であるI地区および高齢者居住施設においては、月1回の健康相談および1年に1回の住民健康診断による調査を計画している。健康相談と調査には、福岡市早良区保健福祉センターの保健師と医師、福岡市内在住の歯科衛生士の協力が得られることとなっている。 住民健診の際には、地域の公民館を利用した高齢者教室などの社会教育事業を通じてまずは地域のキーパーソンと調査員が信頼関係を築いた後、調査を開始する。調査内容は、口腔内の所見採取、嚥下機能のスクリーニング検査、認知機能スコア採取(MMSE)、低栄養スクリーニング(MNA)、抑うつのスクリーニング(GHQおよびBeck)、健康状況について保健師による身体所見や血圧測定、食物摂取頻度調査に加え、医療サービスのニーズの聴き取りなどとする。高齢世帯や施設の有する健康に関連した問題、生活や医療に関して地域が含有する問題点について、とくに歯科医療の面から問題点の抽出を行う。また質問紙には、SF-36による包括的QOL測定、GOHAIによる口腔関連QOLの測定を含め、限界集落の住民および施設居住の高齢者のQOLと全国標準値との比較を行うこととする。
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Strategy for Future Research Activity |
調査研究は、健康に対する介入の一部ともなりえる。健康教室や介護予防教室を通じて、地域の高齢者に対する口腔ケアの推進を実施することが可能であり、調査の前後での健康状態や健康に関連する意識の変化にも留意したい。地域がコミュニティとしての力をつけることができるようなサポートを行う必要もあると思われ、最終的には地域へのフィードバックが欠かせないものと考え、地域医療への貢献として、 ・どのような訪問歯科の診療形態が適切か ・どのような形での口腔ケアの啓発活動が効率的か ・地域の健康全体を向上させるために歯科医療がどのように関わっていけるか ・歯科医療体制そのものが地域の健康度を測定するためのアンテナにならないか といったことを中心として、行政の支援を得つつ、地域へのサービスを継続していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定していた学会発表を控えたため、関連する諸費用の支出に関する使用額に残額が発生した。 学会発表、論文作成を本年度に実施し、適切に支出する予定である。
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