2014 Fiscal Year Research-status Report
限界集落をモデルとした地域在住高齢者の口腔・認知機能・栄養に関する総合的研究
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25463277
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Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
内藤 徹 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 教授 (10244782)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内藤 真理子 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10378010)
牧野 路子 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 助教 (50550729)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 要介護高齢者 / 訪問診療 / 多剤服用 / 老年医学 / 糖尿病 / 要介護 |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢者の多くは疾患を有しており、それに伴ってさまざまな服薬を行っている。しかしながら、我が国における在宅医療を受けている高齢者の疾患数、服薬数についての報告はほとんど認められない。以前に我々は歯学部付属病院高齢者歯科外来において、外来を受診している高齢者の疾患と服用薬剤の実態調査を行った。今回は、訪問診療において診察を行った地域在住の高齢者を対象として同様の調査を行い、外来患者と訪問診療患者における疾患と服用薬剤の実態を比較・検討した。 対象者は九州地方のある一般歯科医院で2014年1月から45日間に訪問診療をした患者とした。診療録の診療情報を参考に、年齢・性別・疾患と服用薬剤の実態調査を行った。本研究は福岡歯科大学倫理委員会の承認を得て実施した。疾患はICD-10分類を、薬剤は薬効分類を用いた。調査対象者は216名(男性63名、女性153名)であった。平均年齢は83.5±7.7歳(外来 74.9±6.5歳)であった。疾患数は平均3.9±2.2(外来 2.0±1.2)であった。認知症、高血圧性疾患、脳血管疾患の順に多かった。服用薬剤数は平均6.6±3.2剤であり(外来 3.3±3.5剤)、最大17種類を処方された患者もいた。最も多かったのは下剤、浣腸を含む消化器官用薬であり、血圧降下剤を含む循環器官用剤、中枢神経用薬の順に多かった。 訪問診療対象者において7剤以上の多剤服用は48.6%の患者にみられ、糖尿病服用者の多剤服用オッズ比が9.43であったことから、糖尿病患者は合併症のために多剤服用につながりやすいことが推察された。地域で介護を受ける高齢者は、外来を受診する高齢者よりも疾患、服用薬剤ともに多く、リスクマネジメントを十分に行う必要があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究の初年度である平成25年度においては、いわゆる限界集落である福岡市内のI地区および高齢者居住施設においては、月1回の健康相談および1年に1回の住民健康診断による調査を実施し、その後も追跡調査を継続している。また、福岡県内の他の過疎地区においても、自治体との連携を行い、地域の公民館を利用した高齢者教室などの社会教育事業を通じて地域のキーパーソンとの信頼関係を構築し、調査を予定している。調査内容は、口腔内の所見採取、嚥下機能のスクリーニング検査、認知機能スコア採取(MMSE)、低栄養スクリーニング(MNA)、抑うつのスクリーニング(GHQおよびBeck)、健康状況について保健師による身体所見や血圧測定、食物摂取頻度調査に加え、医療サービスのニーズの聴き取りなどと想定している。 平成26年度からは、熊本県内の一般歯科医院において、要介護高齢者の訪問診療について実態調査を開始し、現在も継続調査を行っている。 さらに平成27年度には、要介護高齢者の口腔内環境や歯科医療介入の有無、口腔ケアの有無が介護負担感にどのような影響を与えるかを明らかにし、それらが要介護高齢者の全身健康や生命予後にどのように影響するかを明らかにするために、要介護高齢者およびその主たる介護者を対象として前向きコホート研究を計画し、ベースライン調査を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
要介護高齢者においては、歯科受診が困難なこともあり、未治療歯や不良補綴物が装着された歯、要抜歯と判断される歯が放置される症例もしばしば見られる。それらは咀嚼機能に関与していないばかりか、前述のように感染のリスクを高め、誤嚥性肺炎の発症に寄与する可能性が高い。そのため、実際の介護現場でも、積極的に抜歯を行うことにより、容易に口腔ケアを行うことができる環境づくりを推奨する動きも出てきている。しかし、これまでに要介護者の口腔ケアの難しさを決定づける口腔内環境、すなわち残存歯数の多寡や残根の有無、義歯の有無などや、歯科医療介入の有無が介護負担感にどのような影響を与えるのか検討は行われていない。 介護現場における歯科医療介入や口腔ケアの重要性が高まる中、要介護高齢者の口腔内環境や歯科医療介入の有無、口腔ケアの有無が介護負担感にどのような影響を与えるかを明らかにすること、さらには、それらが要介護高齢者の全身健康や生命予後にどのように影響するかを明らかにすることは、今後、歯科が介護現場にどのようなアプローチをするべきかを考える上で非常に重要である。 そこで最終年度には、今後の研究の発展に期するテーマとして、要介護高齢者およびその主たる介護者を対象として前向きコホート研究を行い、以下の項目について検討することとしている。 1.介護負担感に影響する因子を明らかにすること、および介護負担感の多寡が要介護高齢者・介護者の健康状態やQOLに与える影響を明らかにすること、2.要介護高齢者の口腔内環境や歯科医療の介入の有無、口腔ケアの有無を加え、介護負担感への影響、および要介護高齢者・介護者の健康状態やQOLへの影響を明らかにすること。
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Causes of Carryover |
最終年度に大型のコホート研究の立ち上げが可能になる見込みが立ったため、予定していた学会発表を控えるなどして、関連する諸費用の支出に備えて研究費の支出をセーブした。今年度のコホート研究の立ち上げ、学会発表、論文作成のために、適切に支出する予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度のコホート研究の立ち上げ、学会発表、論文作成のために、適切に支出する予定である。
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