2015 Fiscal Year Research-status Report
限界集落をモデルとした地域在住高齢者の口腔・認知機能・栄養に関する総合的研究
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25463277
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Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
内藤 徹 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 教授 (10244782)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内藤 真理子 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10378010)
牧野 路子 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 助教 (50550729)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 要介護高齢者 / 口腔機能 / アセスメント / 地域連携 / ADL / FIM / OHAT |
Outline of Annual Research Achievements |
要介護高齢者への口腔ケアを中心とした口腔機能の管理とQOLの維持との関連が注目されているが、地域医療と歯科をつなぐ簡便な評価手法が少ないのが現状である。近年、歯科医療従事者と他職種との共通の評価指標となり得る口腔アセスメントツールとしてOral Health Assessment Tool(OHAT)日本語版が発表された。今年度においては、地域医療と歯科との連携強化の方法を検討するために、看護師に病棟患者の口腔状態をOHATで評価してもらい、その推移を調査し、さらにOHATを用いた評価を行うことで、医療者が口腔の健康に留意をするようになることにより、患者の口腔状態に変化が生じるかどうか、影響を与える因子を検討した。対象としたのは、研究連携施設である回復期リハビリテーション病棟で、院内に歯科が併設されている。対象者は回復期リハに平成27年9月以降に入院し平成28年1月24日までに退院した患者27名(男性10名、女性17名)である。調査項目は年齢、入院時FIMなどとし、さらに入院時と退院時にOHATで口腔状態を評価した。対象の平均年齢は77.3±15.6歳であった。FIMは平均67.3±23.1であった。入院時のOHAT合計得点割合は平均29.0±15.8%で、退院時は17.5±12.2%であった。入院時と退院時のOHAT合計得点割合に有意差を認めた(p<0.05)。年齢はFIMと相関を認めたが、OHAT合計得点割合とは相関を認めなかった。また、FIMとOHAT合計得点割合(入院時と退院時)に相関を認めた。口腔状態は年齢ではなく、入院時FIMと関連があることが分かった。このことから、口腔状態の悪化を招くのは加齢ではなくADLの低下、ひいてはフレイルが要因になることが示唆された。さらに病棟と歯科との連携を強化し、多職種でフレイルを予防していくことが今後の課題であると考えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究対象として予定していた介護老人居住施設の一部に財政的な問題が生じ、研究協力が不能になったため、十分な研究対象者数を得るために研究計画の見直しが必要となった。新たな施設を研究対象に加えたため、倫理審査に時間を要すこととなり、調査開始が大幅に遅れることになった。 研究の初年度である平成25年度においては、いわゆる限界集落である福岡市内のI地区および高齢者居住施設においては、月1回の健康相談および1年に1回の住民健康診断による調査を実施し、その後も追跡調査を継続している。調査内容は、口腔内の所見採取、嚥下機能のスクリーニング検査、認知機能スコア採取(MMSE)、低栄養スクリーニング(MNA)、抑うつのスクリーニング(GHQおよびBeck)、健康状況について保健師による身体所見や血圧測定、食物摂取頻度調査に加え、医療サービスのニーズの聴き取りなどである。平成26年度からは、熊本県内の一般歯科医院において、要介護高齢者の訪問診療について実態調査を開始し、現在も継続調査を行っている。 平成27年度には、研究協力施設において、要介護高齢者への口腔ケアを中心とした口腔機能の管理とQOLの維持との関連を調べるため、歯科医療従事者と他職種との共通の評価指標となり得る口腔アセスメントツールとしてOral Health Assessment Toolを用いた要介護高齢者の口腔の状態の評価とその推移を調査した。その結果、口腔状態の悪化を招くのは加齢ではなくADLの低下が重要な因子であり、ひいてはフレイルにつながっていくことが示唆された。このために、歯科だけではなく、地域の医療・介護と歯科との連携を強化し、多職種でフレイルを予防していくことが今後の課題であると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
介護現場における歯科医療介入や口腔ケアの重要性が高まる中、要介護高齢者の口腔内環境や歯科医療介入の有無、口腔ケアの有無が介護負担感にどのような影響を与えるかを明らかにすること、さらには、それらが要介護高齢者の全身健康や生命予後にどのように影響するかを明らかにすることは、今後、歯科が介護現場にどのようなアプローチをするべきかを考える上で非常に重要である。 今後の研究の発展に期するテーマとして、要介護高齢者およびその主たる介護者を対象として前向きコホート研究を行い、以下の項目について検討することとしている。 1.介護負担感に影響する因子を明らかにすること、および介護負担感の多寡が要介護高齢者・介護者の健康状態やQOLに与える影響を明らかにすること、2.要介護高齢者の口腔内環境や歯科医療の介入の有無、口腔ケアの有無を加え、介護負担感への影響、および要介護高齢者・介護者の健康状態やQOLへの影響を明らかにすること。
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Causes of Carryover |
研究対象として予定していた介護老人居住施設の一部に財政的な問題が生じ、研究協力が不能になったため、十分な研究対象者数を得るために研究計画の見直しが必要となった。新たな施設を研究対象に加えたため、倫理審査に時間を要すこととなり、調査開始が大幅に遅れることになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度に大型のコホート研究の立ち上げが可能になる見込みが立ったため、予定していた学会発表を控えるなどして、関連する諸費用の支出に備えて研究費の支出をセーブした。今年度のコホート研究の立ち上げ、学会発表、論文作成のために、適切に支出する予定である。
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