2013 Fiscal Year Research-status Report
高次脳機能障害患者に対する看護援助技術の神経生理学的研究
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25463290
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
田中 裕二 千葉大学, 大学院看護学研究科, 准教授 (40179792)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 神経科学 / 神経生理学 / 看護技術 / 高次脳機能 / 意識レベル / 意識障害 / 感覚刺激 / 科学的根拠 |
Research Abstract |
本研究は,意識障害患者に対して意識レベルを改善する目的で行われている種々の看護援助技術を国内および海外の施設において実態調査を行い,そのエビデンスを明らかにするとともに,そのエビデンスに基づいて健常者を対象に意識レベルを改善する看護援助技術を科学的に検討することで看護ケアの科学的根拠を解明することを目的としている。 平成25年度は,臨床現場における意識レベルを高める看護援助技術の実態調査(国内)として,札幌麻生脳神経外科病院(北海道札幌市)を訪問し,生体の機能に対してどのような影響を及ぼすことを目的に,意識障害の患者に対して意識レベルを高める看護援助技術を実施しているのかについて看護部長より直接話を伺うとともに,実際の看護ケアを観察した。その結果,意識障害患者でもベッド上で行える生活に基づいた看護援助を行うことで,寝たきりにならないようにすることを伺った。このことを参考に今後の実験研究の指針を得ることができた。 また,臨床から得られたエビデンスに基づいて,健常者を対象に意識レベルを改善するための看護ケアの科学的根拠を解明するための実験計画を作成した。具体的には,姿勢(背面開放座位)や種々の感覚刺激(痛覚刺激,聴覚刺激,芳香刺激,温浴刺激など)が意識レベルにどのように影響しているかを生理学的指標(脳波,覚醒レベル,自律神経活動,バイタルサイン,筋電図など)および心理学的指標から検討することである。生理学的指標である脳波,覚醒レベル,自律神経活動,バイタルサインは既存の機器で計測することができるが,筋電図に関しては申請した研究費によりポリグラフシステム(日本光電;RMT-1000)を購入し,実験システムのセットアップを行った。また,学内の倫理審査委員会に倫理審査申請書を提出し,承認を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験室のある建物が当該年度に改修工事を実施することになり,研究室の移転準備や移転作業,また,脳波を記録するためのシールドルームが確保できず,十分な実験時間や施設を確保することができなかったために研究の達成度が遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
1.意識障害患者に対する看護援助技術の実態調査(国内および海外) 意識障害患者に対して意識レベルを改善する目的で行われている種々の看護援助技術を国内だけではなく,海外の施設においても実態調査を行い,そのエビデンスを明らかにする。欧米諸国における意識障害患者に対する看護援助について,どのような生理的メカニズムに作用することを目的に実施されているのかについて実態調査を行う。また,看護ケアの文化的な相違についても検討するために,アジア地域として大韓民国(韓国)での看護援助技術について調査することで,欧米およびアジア諸外国における意識障害患者に対する考え方や看護技術について文化的な背景を視点に検討する。 2.実験研究の実施 健康な成人(20~30歳代)を被験者として覚醒レベルと刺激の種類(痛覚刺激,聴覚刺激,芳香刺激,温浴刺激など)および刺激強度との関係を生理学的指標(覚醒レベル,脳波,自律神経活動,体性感覚誘発電位,バイタルサインなど)および心理学的指標から検討する。具体的には,感覚刺激(当該年度は痛覚刺激,聴覚刺激を予定)による影響を生理学的指標である覚醒レベル(BIS値),脳波の周波数解析(4帯域(δ波帯域~β波帯域)の含有率の変化),体性感覚誘発電位(SEP)による中枢神経活動および心拍変動の周波数解析による自律神経活動と心理学的指標である主観的感覚尺度(VAS)を用いて定量的に解析する。
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