2013 Fiscal Year Research-status Report
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25463358
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
樋野 恵子 順天堂大学, 公私立大学の部局等, 助教 (30550892)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 看護学史 / 近代看護 / 翻訳看護書 |
Research Abstract |
本研究は日本の医療史の中に近代看護の源流を探ることを目的とする。平成25年度は、江戸後期に出版された日本古来の看護法をまとめた最初の書『病家須知』(1832年)と、明治期最初に出版された翻訳看護書『看病心得草』(1874年)との比較を行い、近代看護の定着過程におけるこれらの看護書の意義を検討した。 江戸後期『病家須知』の特徴としては以下の通りであった。町医(漢方医)による執筆であった。読者対象は一家の主人であり、実際に看病にあたる使用人への読み聞かせによるものも想定していた。内容は江戸後期の文化に基づきアレンジされた、漢方医学や在宅医療から生じた日本的看護法であった。従来の自己のためだけではなく、他者への援助のための養生法、看護法として記述されていた。 明治初期『看病心得草』の特徴としては以下の通りであった。原著は1850年代のアメリカのベストセラーである解剖生理衛生学書の一部であった。蘭方医による翻訳、校閲であった。医療の成功には医術、良薬と合わせて適切な看護が不可欠であるとしていた。読者対象である婦女子に向け、女性の教養としての看護法を教授することを刊行目的としていた。西洋式の具体的な看護手順と留意点を、一部日本文化に合わせて簡潔に記述していた。方法は現在にも通じる点があるが、この時点では科学的根拠の提示はなかった。 漢方医による往診が行われていた江戸後期には、既に医療者・有識者の中には看護領域の重要性への気付きがあった。そのような背景が、明治の大転換期に輸入された近代的な西洋式看護のスムーズな受容と定着、発展に繋がったと考える。また、2書籍とも平易な表現かつ実践的な内容であり、看護に必要な知識を普及させることで日本の医療全体の質の向上を図り、国民生活の利益に結び付けたいという、時代は違えども医療者や有識者の共通する思いがあることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究はおおむね順調に進展している。平成25年度は、江戸後期に出版された日本独自の看護書と、近代翻訳看護書との比較を行った。しかし、2冊間のみの検討であったため、他の養生書や原著が出版された欧米の看護書も視野に入れて、さらに検討を重ねる必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度はオランダを訪問し、日本における近代看護成立に関する新たな知見を得る。研究計画に沿って原著・翻訳書の比較検討、周辺領域の更なる検討をふまえ、これまでの研究成果を集約して論文を作成し、学術集会・学術誌において研究成果を報告したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は歴史関連の書籍の探索が滞り、購入できなかったため、次年度使用額が生じた。 平成26年度は、日本の医療の近代化との関係が深いオランダを訪問、関連史料の収集を行うための旅費、歴史関連の書籍購入費、国内における学術集会参加費、論文投稿のための英文校正費として使用する計画である。
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