2014 Fiscal Year Research-status Report
診断早期に緩和ケアを導入する「がん看護面談」の開発に関する研究
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25463404
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
安藤 詳子 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60212669)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
光行 多佳子 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10581332)
大川 明子 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20290546)
阿部 まゆみ 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80467323)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 早期緩和ケア / 看護面談 / 乳がん / 肺がん / がん患者カウンセリング |
Outline of Annual Research Achievements |
がんの罹患率・死亡率が高まり、多死時代を迎える我が国において、がんと折り合い自分らしく生きる態度をもって、社会を安寧に保つことは重要な課題である。日進月歩に進歩する医療、しかし、情報は氾濫し、がん告知を受けたとき、正しく理解して対処することは難しく、支援が必要である。緩和ケアの全人的アプローチの実践が期待される。本研究は、最初に診断結果を告知する外来の診療場面に看護師が同席し、緩和ケアを導入する「がん看護面談」を開発することを目的としている。 面談方法として文献「がんになったら手にとるガイド」を採用した。このガイドは、患者・家族が参画して患者の立場に立って作成され、診断の早期から患者が手にとることで、辛くともがんと折り合うことができるように導くものである。平成25年度、まずガイドを発刊している国立がん研究センターがん対策情報センターに伺い、方法について理解と協力を得た。面談の構造化を進め、最初に乳がん患者を対象に愛知県内の総合病院に協力を得て10例実施し、後半、肺がん患者を対象に名古屋市内の総合病院に協力を得て2例実施することができた。 平成26年度は、外来がん看護面談事例を重ね、前年度と合わせて、乳がん患者20例、肺がん患者10例を超えて実施できた。外来職員等の協力を得て、患者・家族の切実なニーズに応え具体的に支援でき、各々事例ごとに検討して効果を確認し、例えば、患者・家族の緩和ケアに対する理解を促す場面が見られた。面談後患者調査も一部回収できた。また、面談内容の分析から看護師のコミュニケーション技術に関する傾向を分析し、技術の活用方法に関する示唆を得た。また、外来がん看護面談の方法について、実際に面談を経験しているがん看護専門看護師を対象に調査を追加して実施できた。今後、患者調査結果と併せて分析を進め、現実的な面談方法について吟味を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、平成25年度に肺がん患者、平成26年度に乳がん患者に「がん看護面談」を実施し調査する予定であったが、調査協力を依頼する病院の状況により、平成25年度、最初に乳がん患者に開始し、平成25年度の後半、肺がん患者に実施した。平成26年度、事例を重ね、乳がん患者と肺がん患者に対するに看護面談について、概略、本「がんになったら手にとるガイド」を活用して計画した通りの内容で構造化を進めることができた。したがって、1年目と2年目の目的はほぼ達成した。 診断早期の「がん看護面談」が患者にもたらした意味について、面談事例の検討を重ね、“混迷からの救い”の要素を捉えた。また、看護師によるコミュニケーション技術の分析から、面談を担当する看護師によって“保証:安心メッセージ”が提供されていること、その時に患者と家族は不安が軽減し気持ちを一歩前に踏み出せること、話が具体的になっていく場合、看護師が“適切に質問”できると、患者や家族の求めに応じた“説明”に繋げることができ、患者と家族は診断早期に陥りやすい混迷から抜け出て、自ら対処していくことができるという見通しをもてることを見出した。また、本「がんになったら手にとるガイド」を面談で紹介した結果、患者・家族に信頼できる有意義な情報を診断早期に伝達できる利点を捉えることができた。 面談後の患者調査については、協力が得られた一部の患者から回収できたが、数量的な比較検討は困難で、事例別に質的に検討することに変更せざるを得ない。しかし、当初は予定していなかった看護面談を経験しているがん看護専門看護師向けの面談方法に関する調査を追加して実施できたことから、その結果を分析し、平成27年度、3年目の目的「より広く、がん患者に活用できる、診断早期に緩和ケアを導入する『がん看護面談』の進め方を完成する。」を達成する見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度、これまでに蓄積した乳がん患者と肺がん患者に対する「がん看護面談」の実際の内容について、面談後の患者調査結果も含めて総合的に検討し、がん看護面談が患者にもたらす意味について、質的な分析をまとめる。また、乳がん患者と肺がん患者の場合の面談における類似点と相違点については、観察を意図していなかったが、実際に取り組んだ事例の比較から考察し、その特徴を探求したい。加えて、その他のがん腫において、外来がん看護面談を実現していくための方策を検討する。 さらに、がん対策情報センターによる文献「がんになったら手にとるガイド」を活用することの効果について、その結果をがん対策情報センターへ報告すると同時に、意見や感想を得て総合的に吟味する。 研究途中で見出した課題である「面談に対応する看護師のコミュニケーション技術」について、面談記録から看護師の言動を取り出して分析し、保証・傾聴・受容・共感・質問などの技術の使い方を再考し効果的な活用を提言したい。 平成26年度に追加した「がん看護面談」を経験しているがん看護専門看護師に対する調査結果をまとめ、できれば、がん看護専門看護師らのフォーカス・グループ・インタビューを実施し、構造化した「がん看護面談」の進め方について、再度、検討を重ね、最終年度3年目の目標を達成する。 なお、本研究は、筆者らが先に探求してきた「がんサバイバーを支える緩和デイケア・サロンのあり方」に関する研究と繋げ、多面的にがんサバイバーを支える仕組みについて提言できるように議論を展開していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
平成26年度内の学会出張予定1名分について執行されなかったことにより、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度、これまでの活動や調査の結果を報告する機会を充実し、出張経費に使用する計画である。
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Research Products
(7 results)