2015 Fiscal Year Research-status Report
看護師の共感的援助能力養成に関する教育プログラムの開発と効果検証
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25463441
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
上野 恭子 順天堂大学, 医療看護学部, 教授 (50159349)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
熊谷 たまき 順天堂大学, 医療看護学部, 准教授 (10195836)
小竹 久実子 順天堂大学, 医療看護学部, 准教授 (90320639)
阿部 美香 順天堂大学, 医療看護学部, 助教 (90708992)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 共感援助 / 教育プログラム開発 / 緩和ケア / 若手看護師 / M-GTA / 尺度開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、若手看護師の緩和ケア患者への共感的援助能力を養成するための教育プログラム案とプログラムの評価研究に使用する共感援助尺度(仮)の作成を目的とした。 前年度までに実施した緩和ケアの専門および認定看護師と、訪問看護師を対象とした質的研究結果において、看護師の“共感援助”の概念構造とプロセスが特定された。平成27年度では、22歳から35歳までの看護師23名を対象に面接調査を行い、先の熟練看護師らの分析結果と比較し、教育プログラムの基盤とした。 分析の結果、臨床経験5年未満の看護師は、患者の顕在化した問題に焦点をあてようとする傾向があり、共感援助を行うという意識をもつことは少なかった。一方、臨床経験5年以上の看護師では、緩和ケア患者のスピリチュアル的な苦悩を認知しているものの、患者を安心安楽にさせるための方法がわからず、看護師自身も苦痛を感じ、コーピングとして患者のこの問題に直面することから逃避し、親密な関係の構築が妨げられる傾向にあった。逆に過剰に同情的になる場合があり、患者と共に揺れ動き追い詰められることもあった。これらのことは、共感援助を語った専門看護師らや訪問看護師の分析結果と異なっていた。 さらに、看護師の経験年数によって関わり方への考えや行動に相違があることも判明した。そこで共感援助の必要性を感じつつ苦悩している臨床経験5年以上の看護師を対象としたプログラムの開発が優先的であると示唆された。 プログラム介入の評価を行うために、新たに看護師の共感援助尺度(仮)の開発を試みており、質的データの分析から得られた共感援助の構成概念とそのプロセスに関する概念毎に項目を策定し、200項目余りがプールされた。内容的妥当性とパイロットスタディにより尺度として適した項目を選定し、2種類の外的基準尺度を用いた各種妥当性と信頼性の検証を実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
若手看護師の緩和ケア対象の患者との関わりについて質的研究を行ったが、20歳代前半の看護師は患者との関係性が深まっておらず、看護師の共感援助を学ぶモチベーションは、まだ充分な状態には至っていないと考えられた。そのため、当初の予定である若手看護師の年齢幅を20歳前半から35歳未満にまで拡大し、対象人数を増やしてインタビューを行い、共感援助プロセスの内容を分析した。この分析には研究代表者と分担者1名とで実施する予定であったが、分担者の産休および育児休暇のため分析作業が遅延した。加えて前年度までの熟練看護師の質的分析との比較分析は本研究の教育プログラム作成するにあたり、中核となる重要な部分となるため、分析のために新たに協力者を要請し、複数の研究者で厳密性を確保しながら分析をしたが、この過程でも分析作業に時間を要した。 さらに共感援助尺度(仮)の開発は、当初すでに開発していた共感援助測定尺度(ESB14 ver.2)を修正して使用する予定であったが、修正の際、再度この尺度を分析したところ、共感援助概念というより同情に近い概念を主に測定している可能性が生じた。そのため、ESB14 ver.2の修正ではなく、新たに共感援助概念を測定する尺度を作成することにした。この決定が今年度半ばであったことと、平成26、27年度にかけて実施した質的研究のデータを基に丁寧に質問項目を策定していることにより、本研究の達成度としては遅れていると考えざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、共感的援助能力を養成するための教育プログラムの作成とその効果検証を行うものである。しかし、残り1年で効果検証を完了させることは厳しい状況であると判断された。そこで、教育プログラムを作成し、その介入については対象者数を減らしてパイロットスタディに止め、プログラムの一部の妥当性について分析するところまでを到達目標として変更する。 プログラムの効果検証に用いる尺度の開発では、今年度秋までに本調査を終え、尺度を完成させる予定である。外部基準尺との選定とパイロットスタディのフィールドはすでに決定しており、倫理審査を受ける準備をしている。 教育プログラムの作成にあたり、研究協力者を含め人数を増員して取り組む予定である。新たに作成した尺度を用いて、教育プログラムの介入を12月から平成29年2月上旬を目処に実施し、プログラムの改善点を明らかにした段階で本研究を一旦終了し、今後に継続する予定である。
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Causes of Carryover |
新たな尺度開発のための調査が遅れたことにより、平成27年度に使用予定であったパイロットスタディと本調査のための調査票の印刷代や郵送代が未使用となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新たな共感援助尺度(仮)のパイロットスタディと本調査にかかる費用として、調査票の印刷代を始めとする作成費用に約600,000円、調査票の返信にかかる郵送代100,000円程度を見込んでいる。さらに本調査データの入力を業者に委託する予定であり、その委託費も必要である。 成果報告は、平成29年春のEAFONS(国際学会)で発表する予定であり、その参加登録および交通費の使用も見込んでいる。
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