2014 Fiscal Year Research-status Report
多職種連携による機能維持や機能改善のための音楽運動療法プログラム教材の開発と評価
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25463590
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
小口 江美子 昭和大学, 保健医療学部, 教授 (50102380)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塩田 清二 昭和大学, 医学部, 教授 (80102375)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 音楽運動療法 / リハビリ体操 / 機能維持 / 機能改善 / 視聴覚教材 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者および分担研究者は、申請書の研究計画に基づき、以下の研究項目を実施し、一定の結果を得た。 ①多職種で構成される高齢者施設の介護スタッフに、機能改善や機能維持の運動指導時に遭遇する問題点などについてアンケート調査を実施した結果、運動への非集中力、非継続性、安全性への不安、集中力持続のために音楽を使用したいがどのような曲を使用すればよいか選曲が難しいとなどの回答が寄せられた。②音楽の持つ様々なリズム、メロディー、テンポ、ハーモニーを駆使して、部分運動、全身運動を万遍なく起用し、高齢者が楽しみながら無理なく実施できるよう工夫した音楽運動療法プログラムの視聴覚教材作成のための現場での収録、モデルを指導してのスタジオでの収録を共に終え、それらを編集中である。音楽運動療法プログラムの視聴覚教材としてのDVDは、音楽運動療法の紹介、プログラムの進め方、曲目と体操の展開方法、実施上の注意点等を網羅しており、介護スタッフが現場で実施しやすい教材であることを目指す。③本音楽運動療法プログラム参加者にプログラム単回実施前後での気分変化をアンケート調査し、同時に唾液採取により生化学的指標を測定する。加えて、対照群として、座位での健康講義実施前後での参加高齢者の唾液を採取し、座学との比較検討を行う。④音楽運動療法を実施する複数の施設の参加者に継続の理由およびQOL関連のアンケート調査を実施したところ、継続の理由に楽しさが挙げられ、その理由として、仲間、音楽、わかりやすさ、体の動かしやすさ、飽きない内容、癒し、などの回答が得られ、障害を持つ参加者から「毎回わくわくしながら参加できた」という回答も得られた。身体の障害の程度に限らず、参加者は一様に楽しさが運動へのモチベーションを高めることを感じており、音楽と共に運動することの重要性が確認されている。 各施設での参加者のQOLは概ね高水準にあった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に進展している。 (理由) 研究計画書に基づいて、当初の予定事項を実施しており、おおむね順調に進んでいるが、以下の点においてはまだ十分ではないと思われる。 ①現場スタッフアンケートは、昨年度において現場のニーズを一部把握できたが、今年度は施設数を増やした調査は実施しておらず、次年度に、作成したDVDを元に高齢者施設での活用状況に関するアンケート調査を実施する必要がある。②高齢や何らかの心身上の理由で体を動かしにくい人達が楽しみながら無理なく実施できるよう工夫した音楽運動療法プログラム内容および教材作成の構築は昨年度完了した。実施上の注意事項等を盛り込んだ視聴覚教材としてのDVDは現在編集中で、今年度中盤までには完成する予定である。③昨年度、本音楽運動療法プログラム参加者にプログラム単回実施前後での気分変化、唾液量、ストレスホルモンを測定した結果、参加者はリラックスしながら運動していることが明らかになった。今年度は座学プログラムを比較対照として、気分変化、唾液量、ストレスホルモン、鉄の還元能、抗酸化能を測定したところ、音楽運動慮法プログラムでは、唾液のpHが有意に上昇し、ストレスホルモンは有意に減少したが、座学プログラムではそのような変化はみられなかった。音楽運動療法プログラム実施前中後での心拍数と揺らぎを測定し、音楽に合わせてリラックスしながら運動していることについての自律神経機能評価を加える必要がある。音楽運動療法プログラム実施後の参加者の気分変化には活性度、安定度、快適性に増加がみられた。音楽運動療法プログラム継続参加者のQOLをSF-36で評価したところ、参加者の全体的健康感、活気が有意に増加していることが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者が開発した音楽運動療法プログラムは、運動を号令で行うのではなく、音楽のリズムを起用して体を動かしやすくさせる、音楽のメロディーにより運動内容を覚えやすくさせ、心地よさを誘導しかつ飽きさせない、音楽のテンポや強弱は脳を活性化させるなどの効果があることが今回の研究から明らかになりつつある。加えて、プログラム開始時の香りの効果で運動への緊張感がほぐれ、椅子に座ったままリラックスして心地よく運動が進められるなどの長所があり、かつ仲間や音楽と共に運動を行うことが楽しいという気持ちが運動へのモチベーションを高め、日常でも体を動かす機会が増えていることが、参加者へのアンケート調査や客観的な指標である生化学的な測定結果から把握できている。本音楽運動療法プログラムは、介護予防体操とし活用されているだけでなく、心身障害者施設でのリハビリ体操としても、また、成人自閉症スペクトラム患者(ASD)のデイケアプログラムとしても活用され、QOLの改善や身体的な健康感の増加など一定の効果を得ている。 このような本音楽運動療法プログラムは、各楽曲使用による各運動の展開方法、その進め方ならびに実施上の注意点などを盛り込む視聴覚教材としてのDVDを作成し、その方法が広く活用されることは、超高齢化社会において必要性が非常に高いと思われる。 DVD作成後は、高齢や虚弱や何らかの理由により体を動かしにくい人達に対して、その視聴覚教材をいかに活用し、いかに対象者の心身の健康づくりに貢献できるかを探ることは重要である。教材導入後の各施設の介護スタッフの学習意欲や学習効果を探り、活用現場では、どのようなスタッフにより、どのような対象者に、いつ、どの程度の頻度で実施し、どのような効果を得ているかを調査し、より効果的なDVD教材の活用方法や、音楽運動療法を起用した健康運動指導者の育成方法などを開発していきたいと考える。
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Causes of Carryover |
今年度は音楽運動療法プログラム構築後の視聴覚教材DVDの作成のための予算を計上したが、現在は収録が終了して編集段階であり、DVDの作成費用は見積り書が発行されたのみで実際の作成費用は発生しなかった。従ってその費用約150万円を次年度予算に組み込むこととなった。 音楽運動療法プログラム実施前後での参加者への生化学的な指標の測定に必要なキットの購入と測定、心電図解析は、昨年度予算と今年度予算でおおむね測定を終了しており、次年度は確認のための測定を行う程度である。今年度は音楽運動療法プログラム構築のための基礎的研究として、プログラムの中で使用する音楽の脳血流および気分や嗜好への影響についての研究結果を、国際音楽療法学会で発表した。また音楽運動療法プログラムの開始時に使用するアロマオイルの脳血流および気分や嗜好への影響についての研究結果を第17回アロマセラピー学会で発表した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、見積もり書に基づき、音楽運動療法プログラムの視聴覚教材作成費用150万円を予算として計上する。また研究の最終年度に当たり、報告書の作成のためのデータ入力のアルバイト謝金が40万円程度かかるものと思われる。さらにこれまでの研究成果を学会で演題発表するための費用として約10万円を見込んでいる。加えて各施設に配布するためのDVD教材のコピー作成費用として約20万円が必要であると思われる。 研究計画は予定通りおおむね順調に進んでおり、次年度はさらにそれを円滑に進めていきたいと考える。
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