2013 Fiscal Year Research-status Report
看護基礎教育における疫学の教育目標の具体化と教育方法の改善・開発に関する研究
Project/Area Number |
25463638
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
猫田 泰敏 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 教授 (30180699)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
篁 宗一 聖隷クリストファー大学, 看護学部, 准教授 (60362878)
村田 加奈子 昭和大学, 保健医療学部, 講師 (70381465)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 疫学 / 看護基礎教育 / 教育目標 / アクティブ・ラーニング / クリッカー / 学習困難 |
Research Abstract |
疫学の教育目標の大きな枠組みとして看護過程をおき、「保健師に求められる実践能力と卒業時の到達目標と到達度」の卒業時の到達目標から疫学と関連が深い小項目を抽出し、既に作成した「疫学のミニマム・エッセンシャルズ」との対応を整理した。特に、応用領域の設定では、公衆衛生看護に限定せず、量的研究の対象である臨床看護も視野に入れた整理を行った。 また、アクティブ・ラーニングの内外の資料の広範な収集、関係学会への参加、主要な研究者への訪問等を通じて、わが国での取り上げの経緯や中央教育審議会等による定義、学習法としての特性等についてまとめた。この過程で、従来の教育実践で活用されてきた工夫(文殊カード、大福帳等)、イメージマップ等による学生の理解の可視化等とともに、新しい動向としてルーブリック(rubric)の活用、インストラクショナルデザインの応用等に関する知見を収集した。また、学生に十分な学修時間を確保させる上で、4年間を通じた大学・学部・学科における有機的なカリキュラム構成を再検討することの重要性を認識した。 一方、形成的評価として、クリッカーを用いて得られた学生の理解度を踏まえて授業の進行を調整したことに対する学生の反応を探り、文献等で報告されているクリッカーの使用方法の情報を収集整理し、事前的・形成的・総括的評価における活用のあり方を考察した。 さらに、疫学学習の困難性をもたらす要因の抽出のための研究では、研究代表者が行った疫学授業において、毎回の授業終了時にミニッツペーパーの提出を求め、寄せられた授業に対する意見(肯定的、否定的)や内容の不明点をまとめ、質問等への回答を含む「看護疫学ニュース」を作成して次回の授業の頭で配布し、授業の補完に活用した。これを通じて、学生が習得困難を感じる学習内容を全ての授業範囲にわたり把握でき、困難性をもたらす要因について分析した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(1)疫学の教育目標の設定のための基礎的検討においては、公衆衛生看護の専門基礎としての位置づけだけでなく、大きな枠組みとして看護過程を置き、広く看護における量的研究の観点から整理を行った。 (2)アクティブ・ラーニングについて、当初の研究計画に加え、従来の教育実践で活用されてきた工夫(文殊カード、大福帳等)、イメージマップ・マインドマップ等による学生の理解の可視化等が有効なツールとなりうること、ルーブリック(rubric)の活用、インストラクショナルデザインの応用の実用的な意義等に関する知見が得られた。また、学生に十分な学修時間を確保させる上で、4年間を通じた大学・学部・学科における有機的なカリキュラム構成を再検討することが重要であるとの知見が得られた。 (3)疫学学習に困難をもたらす要因抽出のため、少数人数の学生に対する実験的授業の実施を通じた分析を行う予定であったが、幅広い学習内容の一部しか取り上げられないこと、学生の一部の意見・感想に限定されるという限界があった。しかし、研究代表者の疫学授業の実践を通じて、全学習内容にわたり、80人規模の学生から意見・感想を収集できたことは、授業改善へ結びつけるための工夫・改善点を検討する上でより有効・妥当な方法であった。
|
Strategy for Future Research Activity |
教育目標の具体化に合わせて、教育内容の精選を加え、看護師がその改善に取り組む健康現象は従来の疫学が対象としてきた感染症、生活習慣病等、生物学的なメカニズムに主要な基礎を置く現象とは異なる側面が多いことを念頭に置き、それまでに学生が身につけている見方や考え方を確認することの重要性を踏まえ、看護実践との関連でイメージしやすく、学生が関心を寄せやすい事例(わが国のJapan Nurses’ Health Study等)を使用することは重要な意義を持つこと、実際の論文を教材として利用することの利点を反映させる。 また、アクティブ・ラーニングに関する検討では、クリッカーの組織的な活用に加え、行う疫学授業に事前学習を導入し、授業は協同学習の要素を取り入れ、その評価を行う。さらに、OPPA(一枚ポートフォリオ評価)、ICTおよびユビキタス環境の最大限の活用(教育内容のデジタル化)も視野に含め、WEB上において無料で参加可能な大規模講義でありわが国でも開始予定のMOOCsの今後へ注目する。 疫学学習の困難性を踏まえた実験的授業の実施と評価については、研究代表者が新たに授業を担当する学生集団を加え、実際の授業改善の中での実施と評価による実践的な計画とする。
|