2013 Fiscal Year Research-status Report
臨床倫理学教育における解釈学的アプローチ法の構築と評価
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25500001
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
服部 健司 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90312884)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 臨床倫理学 / 解釈学 / 教育 / 方法論 / ケーススタディ |
Research Abstract |
目前の個別のケースに向き合うことを使命とする医療は、実証的な自然科学の一分野とみなされる医学に還元されえない。臨床現場で生じる具体的な倫理問題を個々のケースの具体的文脈に即して扱う臨床倫理学は、医学のではなく医療の暫定的かつ蓋然的な方法論と親和性が高く、アリストテレスはそれを実践知、賢慮と名付けたが、今日ではcase deliberation (以下、CD)と呼ばれている。しかしCDは標準化された確固とした方法論ではない。大きく括れば、臨床プラグマティズム、ナイメヘン方式、解釈学的方法、ソクラテス流対話法に四別でき、これらは使い分けられるべきだという見方もある。本研究で焦点化している解釈学的方法の特性も容易に絞り込むことが難しい。ケースを多角的に読み込む作業を徹底することにその本義を見出し、もっと他様なケース理解が可能であり、解釈の変更修正は必然的ですらあるという自覚のもとで、一義的な解決案の策定へ急ぐことを戒めるオランダで優勢な立場がある一方で、リール大学方式では解釈と規範倫理学とが編み合わされている。 ケース像の理解そのものがその後の deliberation の流れを大きく変えてしまうことを考えれば、解釈学的方法の立場が読みの多様性と重要性とを強調することは首肯できる。しかしこの立場を、妄信的な仕方で原則を祭り上げる立場に対する単なる異議申し立てとしての役割を担わせるだけに終わらせずに、実践的に意味のあるものに仕立てていくためには、ケースを豊かに読むとはどう読んでいくことを意味するのかについて、安易な図式化を避けながら、しかし具体的に明らかにしていく必要がある。この点を棚上げしてしまっていては、臨床倫理学教育は形骸化してしまう。徴候知(ゲンズブルグ)や、文学教育における読者論ないしは読書行為論の検討、認知言語学の援用が視界を切り開いてくれるものと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
臨床倫理学の方法論ならびに文学教育方法論に関する文献研究はおおむね順調に進んでいる。本研究ではそれに加えて、アムステルダム自由大学ならびにリール・カトリック大学医療倫理センターを訪問し、解釈学的方法によるCDの実際を可能なかぎり数多く観察し、世界的拠点の研究教育者たちとの討議を通して、研究代表者がこれまで行ってきた方法との異同を探り、各方法の特性、成立要件、問題点を明らかにする予定であった。授業などの校務から解放される平成26年3月に渡航する計画を進めていたところ、学務上の(重要かつ例外的偶発的な)事由から本務校を離れることができなくなったため、やむなく海外視察とそれに基づく研究については次年度に先送りすることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、臨床倫理学の方法論ならびに文学教育方法論に関する文献研究を継続発展させるとともに、上半期内に世界的拠点におけるCDの実践の実際を視察調査し、下半期には国内外の研究協力者と討議を行いながら、臨床倫理学の解釈学的アプローチのモデル講習を構築し、来年度の本調査に向けてのパイロット調査を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本務校における学務上の必要から、初年度内にアムステルダム自由大学ならびにリール・カトリック大学医療倫理センターを訪問することができなくなったため、25年度未使用額(26年度への繰越額)が生じた。 25年度未使用額(26年度への繰越額)は、26年度上半期内にアムステルダム自由大学ならびにリール・カトリック大学医療倫理センター視察調査渡航費用として使用する予定である。 また26年度交付額については、国内外の関連学会への参加、国内外の研究協力者との研究打ち合わせ、パイロット調査実施に使用する。
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