2016 Fiscal Year Annual Research Report
Formulating and evaluating a hermeneutical approach in clinical ethics education
Project/Area Number |
25500001
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
服部 健司 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (90312884)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 臨床倫理学 / 解釈学 / 教育 / 方法論 / ケーススタディ |
Outline of Annual Research Achievements |
本邦で刊行されている医療倫理学・看護倫理学・生命倫理学の教科書の2/3は、臨床現場で遭遇する個別具体的な倫理問題をいかに同定・分析・解消するかを問う臨床倫理学やその方法論についてまったく頁を割いていない。頁を割く成書の2/3は米国流の四分割表を紹介しており、その他の方法、とりわけ解釈学的アプローチを紹介するものは例外的である。解釈学的アプローチがかくも普及していない理由はその手法が融通無碍で、簡便な図式チャートの体をなしていないからである。本研究の課題は教育機関でも医療機関でも採用しやすくなるように解釈学的アプローチを、その特質を損ねることなく、定式化することであった。そのためのヒントを、オランダを中心としてヨーロッパ北西部で普及しているMCD(Moral Case Deliberation)に求めた。MCDは直接治療にあたる多職種チーム間での方法的な対話を通してケースの理解を深めることで、専門家に依存せずに問題解決の方途を探る諸流派の総称である。本研究の最初の三年間には、MCDにおける対話の意義を単なる情報共有や脱密室化、合意形成にではなく、発見的な問い合いによる各自の解釈の相対化として見定めた。また解釈学的アプローチは臨床ケースそのものの物語性の理解を基本にするため、ままナラティヴ・エシックスと混同されることから、両者の相違を明確にした。すなわち、ナラティヴ・エシックスは発話者の言葉や語りに過剰な意味をみてとるが、解釈学的アプローチは語る行為はもとより理解するという営みの可能性を焦点化し、言葉以外のいわばドラマ的要素にも着目する。最終年度には、解釈学的アプローチを定式化し、オランダの自由大学とナイメーヘン大学を訪問して、それぞれの方法の長所短所について意見交換を行った。
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