2013 Fiscal Year Research-status Report
パーソナルゲノム時代におけるヒトゲノム研究と情報の利活用に関するELSIの研究
Project/Area Number |
25500005
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
栗田 奈津子 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任研究員(常勤) (00379570)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ヒトゲノム / パーソナルデータ / 二次利用 / ELSI / 倫理 / 個人情報保護法 / 環境整備 / データサイエンス |
Research Abstract |
ヒトゲノムデータの利用の実態を知るため、文献や学会等のイベントで幅広く情報収集を行った。その結果、もともと試料が提供された目的である医科学研究や診療での利用(「一次利用」)以外に、データの「二次利用」について国内外の期待が高まっていること、またその実際の利用形態が明らかになってきた。さらに、本来個人の診断等の目的ではなく、研究等が主目的で取得されたデータを試料提供者本人が利活用するといった、二次利用の一形態とも呼べるような「本人利用」も、広がりを見せていることが分かった。 これらの情報をもとに、データサイエンティスト、データセキュリティ研究者、個人情報等を専門とする法学者、医療関係者、企業関係者等ステークホルダーになりうる人々に声をかけ、1月にデータ利用に関する現状および将来像や課題について議論するグループを立ち上げた。各々が別の研究や活動を行う人々であるが、ゆるやかに連帯することによって視野を広げ、アイデアを創出できるような組織をめざす。3月までに4回の研究会を行うことができた。またゲノムデータELSIに関するイギリス等海外のグループとも遠隔会議やメールでの情報交換を開始した。 また、このようなデータ利活用の変化に対応する、日本における社会基盤(倫理、法など)の有無、海外の状況等について情報収集を開始した。特に法の分野は、最近、個人情報保護法改正やEU指令改正等、動きが大きいために着目し、動向を追っている。個人情報保護法については、大綱が出され次第、省庁ガイドライン等の既存の規制枠組みとの比較検討を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究グループの立ち上げは次年度の予定であったが、興味のある人が多く、予想より早く人数が集まったため今年度の立ち上げとなった。また、倫理や法的な環境整備についての調査も、マイナンバー(番号法)、個人情報保護法など情報法関連で大きな動きがあり、研究が進展した。 一方で、ヒトゲノムデータの完全匿名化や秘匿計算ついては、現在まだ開発中の部分が大きく、またガイドラインや法、研究者によっても、その定義や技術が異なっている状況であることが分かってきた。そこで、この項目については今年度だけでなく、次年度以降も継続して調査する方針にした。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に立ち上げた研究グループは、データの二次利用に主眼を置いて関係者を集めることができたため、一次利用における試料提供者・被験者や研究者といった直接的関係者を主な対象としていた従来のヒトゲノム倫理とは、異なった知見が得られてきた。ただし、データの二次利用をしようとしている側の人々が多く、影響が及ぼされる側の人・波及的効果の及ぶ人・受益者といった立場の人にはまだ声をかけることができていない。一見すると全く関係ない一般市民の中にも、医療や予防健康、経済産業といった分野を通して、影響を受けると予想される人が数としては非常に多くあるのではないかと考えられる。したがって、グループの活動の広報などを行い、今後はより広い活動にしていく予定である。 また、ゲノムデータ利用に関する最近の変化の傾向は、ゲノムだけでなく、それ以外のパーソナルデータを利用する科学、経済産業、政策等、さまざまな分野の変化と関連するものがみとめられ、その根元のひとつには、データサイエンスというこれまでと大きく異なる発想や方法論が存在すると考えられる。より広い文献調査やインタビュー調査などを行い、人々の認識や価値観がどのように変化しているかを明らかにし、リスクや不利益も想定した社会環境整備の方向性を提言できるよう研究を推進する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
年度末まで講演謝金分を残しておいたが、謝金が生じる講演がなかったため、次年度に使用することとした。 講演謝金として使用予定である。
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