2014 Fiscal Year Research-status Report
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25501021
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
西村 正雄 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (30298103)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | リビングへリテージ / 遺産 / ラオス / フィリピン / チャンパサック / セブ / 文化人類学 / 国際研究者交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、第1年目で立てた研究案の検証にむけて、本格的なフィールド調査を行った。総体的に研究調査は予定通り進み、成功したといえる。 ラオスにおいて、2回のフィールド調査を行った。情報文化観光省、およびラオス文化研究所と密接な連絡を取りつつ、南部のチャンパサック県チャンパサック郡においてフィールド調査を行った。調査の目的はラオスにおける無形遺産の保存状況と確認と、もしそれが進んでいる場合、政府としての法的措置、政策について調査することであった。またチャンパサックにおける調査は村落での調査をを通して村の人々の遺産に対する考え方の詳細な情報を収集することであった。この結果、次の点2が明らかになった:1)ラオス政府として無形遺産の認識はあるが、有形遺産に比して、無形遺産の保全についてはまだ概念が良く把握されていない感がある。しかし、政府機関の一つ、ラオス文化研究所では無形遺産の保全のための対策が必要と考えている。少数民族の無形遺産保全に偏っている印象を受けた;2)チャンパサック村落における調査では、住民(農民たち)は遺産について自らの考えを持ち、自分たちの家に伝わるものについて遺産の概念を持っていた。同時に村や地域で共有する遺産の概念も持っている様子であった。 フィリピンでの調査も2回実施した。マニラの国立博物館、セブ市のサンカルロス大学、カサゴドロ博物館スタッフの協力を得て調査を行った。フィールド調査はセブ市のダウンタウン地区で行った。次の点が明らかになった。1)家族遺産についてかなり意識的に保存している;2)家族内の遺産に比して、家族外の遺産については関心は薄い;3)遺産をめぐって、家族間の競争意識が見られる。ここでは、公共の遺産よりも家族の遺産により強い関心があるように思われる。こうした点から、住民の遺産の考え方に明らかに地域的特性があることがはっきりしてきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度に研究計画の遅れが生じたため、当初一年ごとにラオス、フィリピンと分けて研究調査する予定を変更して、2か所のフィールド調査を同時に進行させた。またフィールドワークに関して、研究協力者の協力をあおぎ、役割分担を明確にして調査を進めた。この結果、ラオスにおけるフィールド調査、フィリピンにおけるフィールド調査とも前年度の遅れを取り戻すと同時に、平成26年度分の調査項目をほぼ達成し、調査は成功した。資料の分析部分に若干前年度の部分を残しているが、平成27年度は資料分析が主になることもあり、これは十分に補える範囲にある。 今年度の大きな成果は、ラオス、フィリピンと2つの異なった地域:宗教的な相違や、価値観の相違が大きな地域において、人びとの持つ遺産の概念を数量的にもまた質的にも比較を行うに足る十分な情報を得ることができた点である。平成26年度の調査から得た情報の最初の分析によって、住民の遺産に対する考え方と、実際の関わり方において、地域的多様性が明確になってきている。今後結果を詳細に分析することで、これらの多様性を明確にし、またその原因を詳しく分析することで、遺産の保全に対するより正確な対応、また政策立案に役立つ情報を提供できるようになるものと期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は研究調査開始3年目で、最終年度にあたるため、平成26年度で獲得した資料の分析を主にする。これに加えて、収集資料を補うため、ラオス、フィリピンでの追加のフィールド調査を行う。ラオスにおいては、9月、フィリピンにおいては10月のフィールド調査を予定している。またこの間、6月、7月、8月と昨年度分の資料の解析を進め、第一次の中間調査報告書としてまとめて、発表する予定である。 さらに検証の目的で歴史的資料を補足するため、ラオスに関してはフランスおよびタイにおいて学術情報の収集を行う。フィリピンにおいては、補足資料を収集するため平成26年度と同様の調査をセブ市で行う。さら加えてマニラの国立博物館とアテネオドゥマニラ大学において文献資料の収集を行う。最後に、研究の取りまとめを行うため、平成28年度3月にフィリピンとラオスから研究者を招き、学内外の研究者を含めてリビングヘリテージに関するシンポジウムを早稲田大学で開催する予定している。その発表内容をまとめて調査報告書として刊行する予定にしている。
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Causes of Carryover |
海外調査等で、外国通貨単位を使用しているため、為替変動分による若干のプラスマイナスが生じる。今回の差額は、平成26年度に行ったラオス、フィリピンにおける調査の際の為替変動分の差額から生じたものである。未使用分は生じたが、すべて予定していた研究調査の計画は遂行している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は3年目であり、補足の調査をラオスとフィリピンで引き続き行う。また歴史的資料を補足するため、フランスにおける調査を予定している。最後にラオスとフィリピンからの研究者を招聘して、シンポジウムを開催し、その結果を公表する予定である。このため前年度より支出増が予想され、平成26年度差額分を平成27年度の予算に組み込んですべて消化する予定である。
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Research Products
(4 results)