2013 Fiscal Year Research-status Report
RNA 分子を介したポリコーム複合体作用機構の解明
Project/Area Number |
25503004
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
増井 修 独立行政法人理化学研究所, 統合生命医科学研究センター, 研究員 (30579305)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ポリコーム複合体 / RNA |
Research Abstract |
ポリコーム複合体(PRC1/2)はヒストン修飾を介して標的遺伝子の転写を抑制するエピジェネティックな転写制御装置である。この機能に RNA 分子が重要な役割を果たしていることが、我々のこれまでの研究成果などから強く示唆されている。本研究課題ではこれらの機能性 RNA 分子を同定するために PRC1 の構成因子である Ring1B に対する抗体を用いた RNA 免疫沈降(RIP)を行い、さらにはそれらの RNA 分子群の機能解析を行うことを目標とする。条件検討の簡便さから、RIP は架橋形成を含まない native RIP の方法で行い、材料にはマウス胚性幹細胞を用い、マウス正常 IgG を使った RIP を行って比較対照とした。昨年度(平成24年度)から今年度(平成25年度)にかけて、次世代シークエンサーを用いて(RIP-seq)、PRC1 (Ring1B) と共に沈降してくるRNA分子群を同定した。その結果、Mga、Tet2、Pcgf1、Pcgf2、Pcgf6、Phc1、Rnf2 (Ring1B) などの mRNA が、Ring1B結合 RNA 分画に濃縮されていることが明らかとなった。興味深いことに、上記のうち後ろから5つのタンパク質はいずれもポリコーム複合体の構成因子である。このことは、PRC1 がこれらのポリコーム複合体構成因子の mRNA に結合して、それらの転写や翻訳のステップを調節し、その結果としてポリコーム複合体タンパク質の量を一定に保っているような可能性が考えられる。今後はこの仮説を検証するための実験を行う予定である。Native RIP では抗 Ring1B 抗体によって PRC1 のタンパク質複合体全体が沈降することから、他の PRC1 構成タンパク質を介したような間接的結合 RNA を沈降している可能性が排除できない。より直接的な結合を検出できる CLIP 法を用いた実験を行って、上記の結果を検証することを検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は RIP-seq を行い、それにより得られたデータの解析を行った。その結果、PRC1(Ring1B) に結合する RNA 分子の候補をいくつか同定した。公開されているヒストン修飾の ChIp-seq データベースとの比較から、これらの結合 RNA のゲノム上の遺伝子部位にH2AK119ub1 が蓄積している物を複数見いだした。現在までのところ、ほぼ当初の計画どおりに研究は進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
CLIP 法は、紫外線を照射することにより核酸-タンパク質間に架橋を形成させる方法である。さらに 4-thiouridine などの核酸アナログを RNA に予め取り込ませておくことにより、効率良く架橋を形成させることが可能となる。紫外線による架橋は、直接に結合しているような近距離に存在する分子間でのみ形成されることから、この方法を用いることで Ring1B に直接結合している RNA 分子を単離同定できる。今後は CLIP と次世代シークエンサーを組み合わせた CLIP-seq を行い、Ring1B に直接結合する RNA 分子を同定した後に、RNA 側と Ring1B 側のそれぞれの結合部位を解析し、これらの Ring1B―タンパク質の結合様式を明らかにすることを目指す。
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