2013 Fiscal Year Research-status Report
食品由来硫化水素ドナー化合物を用いたアルツハイマー病予防法開発に関する研究
Project/Area Number |
25504015
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
細野 崇 日本大学, 生物資源科学部, 助教 (80445741)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 硫化水素 / グルタチオン / ガーリック / SH基 |
Research Abstract |
硫化水素は有毒ガスとして知られる一方、生体内で一酸化窒素や一酸化炭素に次ぐ第3のガス性シグナル伝達物質として注目されている。硫化水素の作用には神経細胞保護作用、平滑筋弛緩作用、抗炎症作用などが報告されている。ガーリック由来の香気成分diallyl trisulfide (DATS)がタンパク質やペプチドのSH基と反応する際に副産物として硫化水素を生じること、すなわち硫化水素ドナーとなると考えられている。高齢化社会の到来に伴いアルツハイマー病の患者数の増加は深刻な社会問題である。本研究は、食品成分由来硫化水素ドナーを用いたアルツハイマー病予防法の確立を最終目標としている。本年度はDATS投与により脳内で硫化水素の生成が見られるかを中心に検討した。 いくつかの濃度でDATSを経口投与、あるいは静脈投与したマウス脳内の硫化水素についてメチレンブルー吸光光度法を用いて測定した。しかしながら、生成された硫化水素の濃度が低く、メチレンブルー吸光光度法では検出できなかった。そこで、DATSと生体内SH基のモデルとしてグルタチオンを様々なpH条件で反応させ、実際に硫化水素の生成を確認した。その結果、中性領域において硫化水素の生成を確認することができた。また、細胞や脳のlysateとDATSを混合し、硫化水素の生成をメチレンブルー吸光光度法で分析したところ、硫化水素の生成が確認された。 以上の結果から、DATS投与マウスの脳内で直接的に硫化水素を検出できなかったが、in vitroではDATSはSH基を持つグルタチオンやタンパク質のSH基と反応し、硫化水素が生成されることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、DATS投与動物の硫化水素の定量について実験を行い、各種条件でDATS投与後の硫化水素を定量した。しかし、生体内での硫化水素の検出は困難であったため、in vitroモデル系での硫化水素の生成、定量実験に切り替えた。DATSとグルタチオンとの反応の結果、硫化水素の生成を確認できた。その後、神経細胞モデルの実験に着手し、DATSによる細胞保護作用について検討を行っている。また、動物モデルの実験の準備を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はアミロイドβの神経培養細胞への毒性をDATSが低減できるかを検討を進める。まず、アミロイドβの毒性の定量的な評価方法の確立を行い、その後、DATSによる毒性低減の有無について検証する。その際、株化細胞を用いて実験を行う予定だが、再現性良くアミロイドβの毒性が評価できない場合は、初代培養神経細胞を用いた検討も行う。また、DATSによる神経細胞保護作用の作用点として、薬物代謝酵素の誘導についてもin vivo, in vitroで解析を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
細胞培養の実験開始時期が遅れたことにより、消耗品の支出が少なかった。 次年度の研究費は神経細胞培養のための試薬の購入や神経細胞に障害を与えるAβの購入費用として、物品費合計100万円を計上している。また、学会発表における旅費として20万円、論文投稿用時の経費(英文校閲経費、論文掲載料など)として合計15万円を計上している。
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Research Products
(4 results)