2013 Fiscal Year Research-status Report
肥満の食リズム異常に関わる摂食促進ホルモン・グレリンの役割
Project/Area Number |
25504019
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
御船 弘治 久留米大学, 医学部, 准教授 (70174117)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田尻 祐司 久留米大学, 医学部, 准教授 (80469361)
西 芳寛 久留米大学, 医学部, 講師 (20352122)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | グレリン / グレリン遺伝子欠損マウス / 高脂肪食 / 摂食リズム / 肥満制御 |
Research Abstract |
本研究は、摂食促進ホルモンのグレリンについて、高脂肪食により生じる食行動異常と肥満制御のメカニズムを明らかにすることを目的とし、平成25年度は「高脂肪食下のエネルギー代謝障害におけるグレリンの関与」について以下の研究を実施した。 ①脂肪食にて生じるグレリン動態の解析:1)経日的変動;野生型(WT)マウスを用い高脂肪食(60 kcal% fat)を4、8、12週間給餌後のグレリン動態は、高脂肪食の長期給餌に伴い低くなり、普通食給餌群と比べ有意に低値であった。2)日内変動;WTマウスの普通食給餌(CD)群と高脂肪食給餌(HFD)群(8週間給餌)の7時、13時、19時、25時におけるグレリン動態を比較検討した結果、CD群においては25時に有意に高くなり、7時に有意に低値となる日内リズムが存在し、一方、HFD群では13時に有意に高くなり25時に有意に低くなるCD群とは異なる日内リズムが存在し、高脂肪食給餌により摂食リズムに異常が生じることが示唆された。 ②高脂肪食による肥満・摂食・エネルギー代謝リズムの解析:WTおよびグレリンKOマウス(KOマウス)の高脂肪食を12週間給餌後の体重増加は、KOマウスの方が少ない傾向にあり、エネルギー代謝は逆に増加していた。また、KOマウスでは自発活動量や体内エネルギー代謝の日内リズムの恒常性に異常が認められた。 ③高脂肪食によるグレリン摂食・エネルギー代謝リズム調節の解析: 8週間高脂肪食給餌後のWTおよびKOマウスについて、迷走神経胃枝切除後のWTマウス,グレリンantagonist投与後のWTマウスでは体重増加が抑制され、一方、グレリンagonist投与後のKOマウスではWTマウスと同様の体重増加が認められた。 以上の結果より、高脂肪食にて生じる食リズムの異常に、グレリンが関与している可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度(初年度)予定していた野生型(WT)マウスおよびグレリンKOマウスを用いた「高脂肪食下のエネルギー代謝障害におけるグレリンの関与」については、①高脂肪食にて生じるグレリン動態の解析、②高脂肪食による肥満・摂食・エネルギー代謝リズムの解析、③高脂肪食によるグレリン摂食・エネルギー代謝リズム調節の解析などを実施し、おおむね当初の研究計画通りに進展している。さらに、当初の予定に入れていなかった視床下部を追加サンプリングし、摂食制御や時計遺伝子制御に関与するNesfatinの測定解析も進行中であり、今後は視床下部室傍核nesfatin-1/oxytocin→延髄の孤束核プロオピオメラノコルチン(POMC)ニューロンを介する摂食抑制機序も研究視野に入れて本研究を発展させる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究結果より、高脂肪食給餌により摂食リズムに異常をきたし、摂食促進ホルモン・グレリン動態が普通食給餌マウスに比べ日内リズムパターンにズレが生じていることが明らかとなり、日内リズムに関与する時計遺伝子の制御機構が破綻している可能性が示唆される。 本研究成果を踏まえ、今後はグレリンKOマウスにみられる日内リズムの消失が高脂肪食下のエネルギー代謝の低下や肥満形成に重要である事、グレリンの摂食リズム再現に伴いこれらエネルギー代謝が正常化する事、制限給餌や自発運動などの介入により同様にエネルギー代謝リズムが正常化する事などが確認できれば、肥満者にみられる “むちゃ食い”のメカニズムの一部にグレリンを含む摂食リズムの関与を証明する事が可能となる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に実施予定であった高脂肪食によるグレリン摂食・エネルギー代謝リズム調節の解析において、サーカディアンリズム(概日リズム)の分析を行い、その結果を基に長期恒常暗(21日間)でのグレリンKOマウスおよび野生型(WT)マウスのエネルギー代謝リズムと自由継続リズム(free-running rhythm)の相関を比較検討する予定であったが、サーカディアンリズムの分析の結果がKOマウスおよびWTマウス間に明確な差が認められなかったため、当初の研究計画を一部変更し視床下部の摂食抑制機序の解析を行うこととしたため未使用額が生じた。 平成26年度は、8週間高脂肪食給餌後のWTおよびKOマウスについて、①食餌制限によるグレリン動態:48時間絶食後(絶食)や24時間絶食+制限給餌(午後6時から1時間給餌;時限給餌)2週後のWTマウスの胃内、血漿グレリン動態を解析し、摂餌制限による肥満制御におけるグレリンの役割を明らかにする。②食餌制限による基礎代謝解析:絶食や24時間絶食+制限給餌2週後のWTおよびKOマウスの代謝パラメーター、エネルギー消費量を経日的に測定し、食餌制限後の基礎代謝の変動を明らかにする。③食餌制限+自発運動時のグレリン動態と基礎代謝:24時間絶食+時限給餌後,エネルギー代謝測定装置専用の回転かご付きチャンバーにて自発運動を促し②と同様の代謝パラメーターをWTおよびKOマウスにて測定し、併せて①と同様のグレリン動態をWTマウスのみ精査し、自発運動の増加が制限給餌後のグレリン動態へおよぼす影響を明らかにする。
|