2014 Fiscal Year Research-status Report
腫瘍随伴間脳視床下部障害に対する胚性幹細胞による再生治療の開発
Project/Area Number |
25505008
|
Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
長崎 弘 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (30420384)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
須賀 英隆 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (20569818)
小谷 侑 藤田保健衛生大学, 医学部, 助教 (60644622)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 再生医療 / マウスES細胞 / 視床下部 / NPY / MCH / POMC / vasopressin / oxytocin |
Outline of Annual Research Achievements |
間脳視床下部領域の脳腫瘍は、多様かつ重篤な視床下部機能障害をきたす。腫瘍は比較的小児期に好発し、視床下部性肥満,下垂体調節障害による低身長、睡眠障害、尿崩症などの症状を呈し、しばしば後遺症となるが、根治療法は存在せずQOLの低下を余儀なくされている。2008年、理化研笹井らによりマウスES細胞から視床下部細胞系への分化誘導法が開発された。このES由来視床下部細胞系(ES-hypo)にはバゾプレシン、オレキシン、αMSH、NPY等多様な視床下部ペプチド細胞が含まれている。本研究では視床下部領域破壊動物を疾患モデルとし、ES-hypoを移植して治療効果の確認を行うことにより、再生治療の技術基盤の確立を目指す。 H.25年度には硫化金グルコース腹腔内投与による視床下部破壊をおこない, 摂食量減少による体重減少をきたす、薬剤誘発性視床下部疾患モデル動物系を確立した。H.26年度は① 移植用細胞の改良と、② 移植法の開発を行った。①細胞系においても、マウスES細胞から視床下部細胞への分化率を高めるため、Rax遺伝子による視床下部前駆細胞のFACSソーティングによる純化、Akt阻害剤による分化効率改善など、多くの改良を加えた。とくにソーティングによりAVP細胞発現率が1%未満だったのが約10%になり、AVPの分泌能が飛躍的に向上した。また、この過程で、AVP以外の視床下部細胞の出現の検討を行い、オキシトシン、メラニン凝集ホルモン、オレキシン、CRH、ドーパミン、NPY、POMCを含む視床下部ペプチドニューロンがこの系で生成可能であり、視床下部疾患の再生治療に応用可能であることが示唆された。②移植条件の最適化作業を行ない、in vitroで30日程度分化誘導した後の細胞をラット視床下部室傍核領域に正所性に移植すると、ラット視床下部に高度にAVP細胞が移植後90日以上生存することを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね当初の研究計画通りに進展している。工程表で、平成25年度には視床下部障害モデル動物の作成を大きな目標とした。硫化金グルコース投与による視床下部破壊マウスを作成し、これが予想通り視床下部障害により摂食異常を呈する事を確認した。 平成26年度は細胞移植法の開発を掲げた。これは再生医療の素材としてのmESC由来視床下部細胞培養系の確立と、細胞移植の方法論を確立する事の2本の柱から成る。mESC培養法にソーティングによる純化、Shh添加による腹側視床下部細胞系への誘導が確実に行なわれる事を、NPY, POMC, などのペプチド発現により確認した。また、移植条件の最適化作業を行ない、in vitroで30日程度分化誘導した後の細胞をラット視床下部室傍核領域に正所性に移植すると、ラット視床下部に高度にAVP細胞が移植後90日以上生存することを確認した。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度であるH27 年度はこの再生治療法が実際に疾患モデル動物で治療効果を有するかを判定する。 摂食量、体温、尿量などの生理的指標、および末梢血中の各種下垂体ホルモン、血糖値、インスリン濃度をモニターし、治療効果を判定する。観察終了時には摘出脳の組織学的検討により総合的に治療効果を判定する。 以下に現在予測される主な問題点とその対応策を挙げる。 移植した細胞が生着しない→対応:移植時、コラーゲンやマトリゲル等の生体材料に細胞を懸濁する、血管新生のためマトリゲルにVGEFを加える。 細胞移植後の食欲増加が見られない→細胞の生着を確認した上で、移植する細胞数を増やす、皮下あるいは腎被膜下移植を検討する。
|
Causes of Carryover |
年度末に新たな研究用試薬(バゾプレシン抗体:納入価格;約7万円)を購入する予定で予算を残しておいたが、納期の都合で年度内に納品されないことが分かり、一部次年度に繰り越した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越した金額を使い、改めて同製品を発注する。
|
Research Products
(4 results)