2014 Fiscal Year Research-status Report
障害児をケアする家族におけるワーク・ロスの問題:その生起メカニズムと支援策を探る
Project/Area Number |
25510007
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Research Institution | Ibaraki Christian University |
Principal Investigator |
江尻 桂子 茨城キリスト教大学, 文学部, 教授 (80320620)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松澤 明美 茨城キリスト教大学, 看護学部, 准教授 (20382822)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 障害児 / 母親 / 家族支援 / 就労 / ワーク・ロス / ケア / 経済状況 / 就労困難 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.本研究は、障害児の家族支援へのアプローチとして、障害児を育てる母親の就労の問題を取り上げるものである。具体的には、障害児の保護者を対象とした質問紙調査を実施し、その分析から、母親の就労状況や経済状況について把握し、これにどのような要因が関わっているのか、また、就労状況は家族の生活や健康、育児ストレス等にどう影響しているのかを明らかにするものである。そして最終的には、今後のより有益な障害児家族支援に向けた基礎的資料を得ることを目的としている。 2.平成26年度は、平成25年に引き続き、研究1-1(質問紙調査:障害児の家族を対象としたデータ)の分析と成果発表を行った。また、研究1-2(一般児童世帯を対象としたデータ)として政府統計データおよび近隣市町村のデータ(2013年度全国一斉調査)を利用する形で、我々が調査で得たデータとの比較を行った。 3.分析の結果、第一に、障害児の母親は、一般的な有配偶者女性に比べて、就労が制限されており、家庭はより厳しい経済環境におかれている(低所得者の割合が高い)ことを見出した。第二に、健康関連QOL(身体的・精神的にどの程度、健康であるか)の比較分析結果からは、障害児の母親において一般データに比べてQOLが低いことが明らかとなった。第三に、障害児の母親の就労を予測する要因(プラスの影響を及ぼす要因)としては、母親の学歴の高さや、健康であること(治療中の病気がないこと)、有償サービスの利用などが見いだされた。第四に、母親の今後の就労ニーズや、就労を希望する(希望しない)理由についても明らかにした。 以上の研究成果に関して、日本心理学会(2014年9月)・日本公衆衛生学会(2014年11月)・日本発達心理学会(2015年3月)において成果報告(ポスター発表)を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.平成26年度の研究実施計画としては、研究1-1(質問紙調査)の分析と成果発表であり、特別支援学校に通う児童生徒の保護者を対象とした質問紙調査の分析をもとに、障害児家族における就労の現状を把握すること、またどのような条件が就労の促進につながるのかを解明することを目的としていた。以下では、特に評価すべき点と、反省すべき点との二つに分けて、進捗状況に関して自己点検を行う。 2.【評価すべき点】調査の分析結果をもとに、障害児の母親の就労および経済状況、健康関連QOLの実態について明らかにするとともに、就労に関連する要因、今後の就労へのニーズとその理由について明らかにすることができた。そして、これらの研究成果に関して、日本心理学会(2014年9月)・日本公衆衛生学会(2014年11月)・日本発達心理学会(2015年3月)において成果報告(ポスター発表)を行うことができた。 3.【反省点】質問紙調査のデータ分析に関しては、現在まだ分析途中であり、今後もさらなる分析が必要である。これについては、27年度も時間をかけて行っていきたい。研究成果発表に関しては、国内学会ではすでにポスター発表や論文発表という形で、報告している。しかし海外学術雑誌への英語論文投稿に関しては、予想以上に準備に時間がかかっており、これについては27年度より一層の時間をかけて行っていく。
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Strategy for Future Research Activity |
1.質問紙調査(研究1-1)の分析を継続して行っていく。 2.質問紙調査の結果をもとに海外学術雑誌への英語論文の投稿を行う。 3.質問紙調査の結果をもとに、国内学会(2015年度特殊教育学会・仙台・東北大学)にて成果発表を行う。その際、話題提供者3名(本研究代表者と分担者を含む)、指定討論者1名によるシンポジウムを予定している。 4.研究1-2(通常小学校児童生徒の保護者を対象とした調査=いわゆる標準データの取得)については、2013年度全国市町村調査(子ども・子育て新制度に向けての保護者の就労・保育ニーズ調査)から、本研究で必要な標準データ(就労状況・就労困難の実態)が得られたため、これらを使用しながら、研究1-1のデータと比較検討していく。
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Causes of Carryover |
平成26年度の当初の使用計画としては海外における国際学会での成果発表のための渡航費・参加費を予定していたが、日程などの関係で国内の学会での成果発表へと変更した。そのため当初予定していた予算より少ない額での成果発表となった。 また、研究1-2の内容(通常小学校の定型発達児対象の調査の実施)を変更し政府統計データおよび市町村の発表する標準データを、比較対象として利用することとしたため、データ入力や分析のための費用に関して、より少ない額の使用となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度の使用計画としては、国内で開催される国際学会において成果発表の予定であり、そのための旅費や参加費・発表費の使用を予定している。また、国内学会(特殊教育学会)においてシンポジウムを開催する予定であり、これについても企画費、参加費、旅費の支出を予定している。さらに、引き続き、調査データの分析および論文執筆に取り組むため、データ入力作業や資料収集および英文校閲のための予算使用を予定している。
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