2013 Fiscal Year Research-status Report
在日朝鮮人ハンセン病回復者の記憶と展示表象に関する基礎的研究
| Project/Area Number |
25511003
|
|---|
| Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
| Research Institution | Tokyo Gakugei University |
|---|
Principal Investigator |
君塚 仁彦 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (00242230)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
| Keywords | ハンセン病 / 博物館 / 在日朝鮮人 / 記憶 / 展示表現 / 表象文化 / 植民地 |
|---|
| Research Abstract |
近年、日本国内ではハンセン病回復者の記憶を記録し、国立療養所内に設置された博物館において展示公開する状況の展開がみられる。本研究では2013年度に緊急性の観点から国内の各国立療養所（8園）と民間療養施設（2か所）を調査先として選定し、各施設におけるハンセン病関係資料および資料館等の展示施設の実地調査を行い、同時に、在日朝鮮人ハンセン病回復者に関するインタビュー関連文献・「もの」資料・歴史的建造物・遺跡・遺構に関する実地調査等をを行った。第１次調査として実施したのは、国内では以下の通りである。①【国立療養所】東北新生園「しんせい資料館」、②【国立療養所】栗生楽泉園「社会交流会館」資料展示室、重監房遺跡、③【国立療養所】邑久光明園「資料展示室」および園内遺構・遺跡、④【国立療養所】長島愛生園「長島愛生園歴史館」および園内遺構・遺跡、⑤【国立】駿河療養所「ハンセン病資料室（ふれあいセンター）」および園内遺構・遺跡、⑥【民間】神山復生病院「復生記念館」および病院敷地内遺構・遺物、⑦【国立療養所】菊池恵楓園「菊池恵楓園歴史資料館（社会交流会館）」および園内遺構・遺跡、⑧【民間】社会福祉法人リデル・ライトホーム「リデル・ライト両女子記念館」、⑨国立療養所星塚敬愛園内遺構・遺跡、⑩【国立療養所】沖縄愛楽園「社会交流会館」（開設準備中）および園内遺構・遺跡。このうち、②③④においては各療養所の入所者自治体や互助会などの組織を通し丁寧に確認を得ながら、在日朝鮮人ハンセン病回復者（3名）からのインタビュー調査を実施することができた。海外調査については、韓国・小鹿島病院および附属の「ハンセン病博物館」を対象に資料・展示調査を実施した。旧植民地である小鹿島内における遺物や遺構、保存建築物等の調査を実施し、同時に博物館担当の職員、入所者自治会関係者にインタビュー調査を実施しデータを得ることができた。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近年、日本国内では、ハンセン病回復者の記憶を記録し、国立療養所内に設置された博物館において展示公開する状況の展開がみられる。しかし、回復者の実態は重層性、多重性を帯びているにもかかわらず、日本国内に生きる在日朝鮮人ハンセン病元患者・回復者の記憶については、その記録化や展示表象に向けての十分な調査・研究が行なわれてこなかった経緯がある。本研究では、国内の療養所に生活する回復者の多様な実態に着目し、彼ら、彼女らの記憶をどのように記録し、展示表象への回路が創りだそうとするのか、国内をメインに記憶が交差する韓国を含めて調査を進め、重層性を帯びたその実態を解明することに目的がある。それに照らしてみれば、研究計画初年度にあたる本年度の研究実績は、遺物・遺構についての調査は進展が見られたが、ヒアリング調査に関しては高齢化の問題もあり、やや課題を残した。しかし総合的に見れば、在日朝鮮人関係の資料の確認を念頭においた韓国調査も含め順調に調査件数を蓄積しており、おおむね当初の研究計画通りに進んでいると評価できる。
|
| Strategy for Future Research Activity |
研究2年次にあたる2014（平成26）年度は、引き続き国内各地の実地調査を進めるととも、当事者からのインタビュー調査を継続して行う。各療養所（７園）とハンセン病博物館（1館）における在日朝鮮人ハンセン病回復者に関する記録および「もの」資料の収集保管状況と展示表象に関する調査を実施する。また今年度は、海外調査として旧植民地である韓国麗水市に所在する「愛養園」を対象とする。同園内に所在する歴史的遺物や遺構、展示が全面的にリニューアルされた付属「ハンセン病資料館」における展示表象について、在日朝鮮人関係の資料の有無を含めて実地調査を進める予定である。
|
| Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度に予定していた国立療養所大島青松園の実地調査が、日程の調整ができす延期されたこと、および韓国調査において収集した韓国語文献資料の翻訳完成が都合により遅れたことが主な理由である。
国立療養所大島青松園の実地調査を含めた国内調査を実施することで、今年度に繰り越された予算を使用する予定である。また、韓国調査において収集した韓国語文献資料の翻訳を完成させることで、適切な予算執行を行う計画である。
|
Research Products
(1 results)
