2014 Fiscal Year Research-status Report
フランスの区分所有建物の荒廃から正常化へ向かう管理のあり方の研究
Project/Area Number |
25512001
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
寺尾 仁 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (70242386)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 区分所有 / マンション / 管理 / 空家 / ガバナンス / フランス |
Outline of Annual Research Achievements |
26年度は、25年度にフランスで行なった調査の結果を整理し、日本の区分所有関連法制の改正動向と比較検討した。前年度の調査から、フランスでは荒廃区分所有建物の正常化あるいは処分について、私法である区分所有法と公法である建設住居法典等が適用されていること、さらに2014年3月14日の「住宅へのアクセスと都市計画の改訂に関する法律」はこの双方の改正を含んでいることを明らかにしていた。 今年度の研究実績は次の3点である。 1)フランスでは、①区分所有建物の荒廃の認定にあたって管理組合の機能不全に重点を置いていること、②2014年の新法を分析すると、荒廃区分所有建物の正常化を区分所有法に定める手続きによって開始しても、荒廃が是正されずに区分所有権自体の制限や移動が必要になると、建設・住居法典等の公法が規定している手続きを用いることを明らかにした。 2)日本では、①建築基準法第9条に同法違反の建築物に対する措置が定めれられているが、構造計算偽装問題など稀にしか適用されていないこと、②平成7年の阪神淡路大震災直後に制定された被災区分所有建物再建特別措置法、平成14年のマンション建替え円滑化法、平成26年のマンション建替え円滑化法改正は、いずれも公法的規定も含むとは言え、区分所有者間の合意形成を前提としていることを明かにした。 3)以上から、荒廃区分所有建物の正常化・処分のガバナンスについて、フランス法の手続きは、管理組合の運営・財務の再建を図り、それが見込めない場合は公的に介入して問題を解消させる会社=公的介入モデル、日本法の手続きは、区分所有者同士が何らかの合意に到達することを期待しそれを促すコミュニティ・モデルを採っているとの仮説を打ち出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年4月に開催される2つの学会(アジア太平洋住宅政策研究ネットワーク2015 Asia-Pacific Network for Housing Research 2015と日本マンション学会第24回大会)で研究の途中結果を発表するにあたって、研究全体の取りまとめの方向について仮説を構築することができた。すなわち、荒廃区分所有建物の正常化・処分の比較検討を①区分所有管理法制、②区分所有建物の「荒廃」概念、③「荒廃」対策のための区分所有法改正、④区分所有管理のガバナンスという4段階で整理することにする。 ただし、学会報告の準備を優先させたために2度めのフランス現地調査の実施が遅れており、27年9月に実施する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
フランスで①「荒廃」しかかった状態から正常化した区分所有建物、②処分された区分所有建物の双方について現地調査を、正常化・処分手続きの過程、手続きを進めた原動力に焦点を当てながら調査し、そこで機能したガバナンス・モデルを抽出する。 さらに、25年度調査で収集した、2014年新法および市街地再開発型荒廃区分所有建物処分事業にかかる資料の紹介も急いで行なう予定である。 日本については、他の研究者や専門家の力を借りて、荒廃区分所有建物の処理事例の知見を増やす。 この両者を合わせて、荒廃区分所有建物の正常化あるいは処分のあり方について、フランスと日本を比較する。
|
Causes of Carryover |
交付申請書では26年度中に実施する予定だった第2回フランス現地調査を、27年4月の2件の学会報告の準備を優先させて実施を遅らせたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
26年度末の使用残額は、27年4月に韓国で開催される学会への参加関連費用および27年9月にフランスで実施する調査関連費用として使用する予定である。 27年度に請求している助成金は、27年4月に国内で開催される学会への参加を始めとして一連の作業を踏まえた3年間の研究成果の取りまとめに係る費用として使用する予定である。
|
Research Products
(3 results)